第六十四話 太陽
〖大口を叩くなよ……!!朝霧悠ゥ!!〗
ウラヌスは内臓を貫かれたというのに、全く怖気付かず、悠を蹴り飛ばそうとした。悠は一、二歩軽く後ろに下がると、叢雲に付着した血を払った。
〖異世界警察はただENDやビーストを殺しとけばいいんだよ!!正義のヒーローぶってイキがっとけばいいんだよ!!〗
「何も分かっていないようだな、ウラヌス。」
悠はいつの間にか仝々とV-ENOMを回収していて、治癒をしていた。
「人の想いというのは君には背負えない。」
ウラヌスを嘲るように敢えて悠は「貴様」ではなく「君」と言って挑発した。ウラヌスは見下された事に相当激昂したのか、悠ではなく仝々の身体を攫った。
〖動くなよ!!こいつがどうなっても知らないぞ!!〗
「目覚めが悪りい。」
仝々はいつの間に目を覚ましたのか、ウラヌスに抱えられた姿勢のまま、足を上げて顎を蹴りあげると、短刀を取り出して首元を掻っ切った……が、それでも尚ウラヌスの生命力が薄れることはなかった。
〖MBUめ……大人しく監獄に捕まっておけば済んだものを!!〗
「無限牢獄に捕えなかったのがミスだったんじゃねぇのか?」
そう、十星はMBU隊長に因縁を付けて、監獄に捕らえたが、無限牢獄にはより重要人物を入れるべきだと考え、警備の浅い場所にしてしまったのだ。そのせいで簡単に脱走してしまった。結果ENDを捕らえたので、どちらが良かったかは不明だが。
「仝々、此奴、心臓を貫いても、首を切っても死なない。恐らく核がどこかにあるのだろう。」
〖さぁ、どうかな。〗
そう言うと、ウラヌスはヴァーギンに乗って、その巨体ごとふわりと宙に浮かんだ。
「仝々、可能性の話だが。」
「?」
そう言うと、悠は仝々にボソッと耳打ちした。
「ホントですか……!?それ。」
「あくまで根拠ある可能性だ。確定事項ではない。」
「とはいえ、説得力はありますね。」
聞こえてきたのは女性の声であった。仝々と悠は背後を振り返ると、V-ENOMが意識を取り戻して仁王立ちしていた。
「やりましょう。」
大した会話もせずに、直ぐに作戦実行へと移ると、悠はヴァーギンに向かって突撃していった。
〖ほんっと、ユー、捻りがないね。〗
だが、その全てをウラヌスは読んでいたのか、ヴァーギンに〖やれ〗と一言いうと、ヴァーギンの口から放たれたレーザーによって悠達は吹き飛ばされた。
〖どうせ、僕の核がヴァーギンとでも思ったんでしょ?正解。でも工夫が足りてない。対策するに決まってるでしょ。〗
ウラヌスはそう言うと、倒れた悠の元に近づいて、手をかざした。
〖最後くらい、アイの本当の技でトドメを刺してあげよう。〗
瞬間、大気中の魔力は暴れ出すように狂いだし、雲は空を暗く包んだ。
〖『天王星』。〗
瞬間、真っ黒い雲からは一筋の光が現れ、轟音と共に大地と天を繋いだ。
〖ようやく終わりだ。まったく、手間がかかる。〗
ヴァーギンのレーザーが直撃し、雷に打たれたのだ。生きているはずがない。ウラヌスは歩いて去っていった。
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⟬起きろ、悠。⟭
誰かの呼び起こす声。悠にとってそれはとても聞き馴染みのあるものだった。
だが、それが誰なのか思い出せない。気がつけば悠は刀の柄の部分に座っていて、近くには叢雲こと元ダイヤも居た。
「おい、ここは……」
【俺がYに〆桜を教えた場所だ。】
あのころの悠、つまりYは恐らく海王星によって叢雲がスペードだと言う記憶を沈められていたのだ。
「今の声……どこかで聞いたことが……」
【まさか……ネプチューンの能力か?いつの間に。】
以前、慎一の記憶が無くなった話を聞いた時、悠も記憶を取り戻しそうな兆候があった。つまり、“何かの記憶を失っている”。その時、遠くの霧の中に一つの人影が現れた。
この場所では会おうとして走ったとしても、会うことができない。悠も叢雲も知っていたのでジッとそこで待っていた。
⟬叢雲、悠、久しぶりだな。⟭
「悪いがネプチューンの能力で記憶が無い、貴様は誰だ。」
【クモ?その呼び方……】
思い出せそうだったが、やはり無理だった。その男について、先程から一つ気になっていることがあった。
奇妙な事に先程からその“魔力を感じない”。悠ですら感じられない程の強さなのだろうか。
【お前、本当に生きてんのか?】
叢雲は悠の気持ちを代弁するかのようにそう言った。そう、もしかすれば「誰か」は既に亡くなっているのではないか。悠も叢雲も感じ取れない魔力など有り得ない。
だが、そんな事を考えている時に、突然悠はある事を思い出してしまった。
「ウラヌスに追い詰められていたはずだ。逆転する方法を考えなければ。」
⟬心配ない。⟭
そう言うと、「誰か」の人影は霧の中で一歩だけ近づいてきた。
すると、霧の中から手を差し伸べてきた。
⟬ここに魔力をありったけ注ぎ込め。なんつーか、魔法を出す感覚だ。⟭
正直得体の知れない雰囲気があったが、この空間で死ぬことなんてありえないと思い、悠は魔力を可能なだけ全て注ぎ込んだ。
その全てを吸い込んだ「誰か」は、先程出していた左手をしまうと、もう片方の右手を差し出した。
⟬手を置け。⟭
悠は少し不安だったが、言われるがままに手を置いた。その刹那、体に稲妻が走ったかのように、力が湧いてきた。
⟬危険な術、諸刃の刃だ。この術を完全に習得してしまえば、悠、お前は二度とあの「大量の魔法」を使用できなくなる。それを犠牲に化け物じみた魔力操作と一つの魔法を手に入れられる。それでも……⟭
「恐怖は捨てた。」
悠は話を遮ってハッキリとそう言い切った。「誰か」は霧の中で少し驚いた表情をしていたが、笑みを浮かべると、差し伸べた手を戻した。すると、口を開いて重々しく言った。
⟬降りよ、太陽の神⟭
瞬間、悠の肉体はフワリと浮かんで、全身は爆発するような痛みに襲われた。あくまで、脳が痛みを感じているだけであって、怪我をしている訳ではない。だが、悠であっても耐え難い程の苦痛であった。
⟬お別れの時間が来たみたいだ。⟭
「っ……待て!!貴様は誰だ!!」
痛みからなのか、「お別れの時間」が近づいたからなのか、段々ぼやけて行く視界と共に、霧も晴れてきた。
そんな中、悠は確実に見た。その男の顔を。
「ライア……ビーク……」
第六十四話 終
第五話の一番初めに名前だけ出たライア・ビークがまさかの登場




