表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/121

第五十九話 月とすっぽん

「助けに来たって……やっぱ本当に帰ったんですね、朝霧悠。」

「あの方はそういう人だ。」


 V-ENOMはそう話しながらも、森に触れそうになっているマグマを蹴り飛ばしていった。そう、これこそがV-ENOMの魔法、『原子破壊』である。

 『原子破壊』は、“右足”で触れた物全てを原子レベルに分解し、その機能を失わせる能力。簡単に言えば、触れたものを破壊する能力だ。『硬度』『熱』などを無視することができる。


「それにしても酷い有様だなー。慎一呼ぶか?」

「いや、あの人に任せると、街と森の方を吹き飛ばしますよ。」

「確かに。」


 慎一は常識人ではあるが、効率のために多少頭のネジが外れているところがある。

 とはいえ、助っ人を呼ばないとマグマをせき止めることは出来ない。V-ENOM1人では限界がある。


 瞬間だった。何が起こったのか。“夜になった”。


「っえ……?なんでいきなり……」

「圭太!!違う!!夜じゃない!!」


 V-ENOMは異変を察知して、圭太にそう叫んだ。深夜のように真っ暗。だが、遠くの火山のマグマの明かりは見えない。


 その時だった。まるで脳内に直接響くように、笛の音が聞こえてきた。そして、次には太鼓の音……どんどん囃子の音が響いてきた。


「山本五郎左衛門は悠様が討伐したはず……なのにこれは妖怪が現れた時の報告と一緒じゃねぇか……!!」


 瞬間、目の前に現れたのは巨大な「何か」だった。全身からぶわぁっと冷や汗が吹き出てくる。魔力と妖力が混ざりあった、異常な雰囲気。何かが起こっている。


〖おはよう。〗


 一言。「何か」は言葉を発した。瞬間に、全身の器官が圧迫されるような感覚に陥った。一瞬V-ENOMの脳裏に悍ましい考えが浮かんだ。


 『十星暗殺』を悠が発見したのは、仕組まれた出来事だったのではないか、そっちに目がいっている間に十星は何かを行っていたのではないか。

 それが、()()だったのではないか。そう、十星は“黒魔術で死んだ十星を生き返らせたのでは?”


〖我が名は土星(サタン)(あや)しき怪物。〗


 そう言って見えた姿は、文字通り怪物であった。巨大な頭に、そこから生えている首の骨、そして連なる背骨。骨が剥き出しになり気味が悪いという言葉では済まされない程だった。

 あまりの悍ましさに、V-ENOMは瞬発的にサタンに攻撃してしまった。だが、その攻撃がサタンに当たることはなかった。


「っな……」

〖V-ENOM、我はただ挨拶に来ただけだが。〗


 ただ、一瞬、油断した訳ではない。隙を見せてしまった。その瞬間、圭太は十星によって腕を喰われた。


「っああぁあっ!!!」

〖妹とお揃いだなぁ、菊池圭太。〗


 そう言うと、サタンは巨大な手で圭太の腹を掴み、攫ってしまおうとした。V-ENOMは見逃さず、その腕を『原子破壊』で蹴り飛ばした。


「当たった……!!」

「ぅっ……すみません、ENOMさん。」


 圭太は食いちぎられた右腕を『再生の焔』で治癒した。ここまで重症となると、圭太の魔法で再生しきるのは不可能だが、ある程度痛みを薄らげることは出来る。


〖邪魔者どもめ。〗


 そう言うと、サタンは巨大な手のひらを圭太とV-ENOMに向けた。


〖『土星(ソイル)』〗


 瞬間、圭太達が立っている地面はボコボコっと何ヶ所も盛り上がり、一つ一つから何かの“手”が現れた。


〖蘇れ、亡者よ。〗


 盛り上がった地面を突き破って出てきたのは、数十もの死体であった。ゾンビのように徘徊をする亡者達は、圭太達に向かって歩み寄ってきた。


「さっき喰人症の奴ら倒したばっかだぞ!」


 ゾンビはもう飽き飽きとでも言いたいのか、圭太は『破壊の焔』を振りかざすと、亡者を蹴散らした。


 その時、圭太はサタンに二本の指で頭を掴まれた。背筋が凍るような感覚が全身に走った。そういえば、先程からやけに冷える。足元を見れば、マグマも冷えて固まっていた。

 そのまま圭太は足から凍りついていくような恐怖に包まれた。瞬間、サタンは圭太を連れ去って、上空に飛び上がっていった。


「待ちやがれ!!」


 V-ENOMはそう叫んで、『原子破壊』でサタンを蹴り飛ばそうとした。先程分かった。

 サタンが何かを触れている間は、確かにそこに『質量』がある。


 ただし、悠の報告では妖怪は『魂に触れている』ので、こちら側が魂に触れない限り、触れることは不可能との事だった。だが、サタンは十星と妖怪の間にいる存在。サタンが何かに触れている間、そこには確実に質量があるのだ。


 V-ENOMの右足が加速する。サタンに触れるまで数ミリ。だが、サタンは軽く避けて、そのままフワフワ浮かんで行った。当然である。誰もサタンが避けないなど言っていない。


「っ……ふざけんなぁっ!!!」


 サタンはV-ENOMを無視して上空に浮かび上がると、口を開いて詠唱を始めた。


〖開ケ拾ノ扉。〗


 唱え終わった瞬間、鋼鉄で出来た扉が空中に生まれた。サタンは手でドアノブに触れると、扉は自動的にゆっくりと開いた。扉の先に居たのは、“倫理を捨てたバケモノ”であった。

 九個の影は虚空の中で輝いていた。


「V-ENOM、何年ぶりだ。」


 一段と光を放つ1人の男は、一歩前に出てきた。よく知るその男は『(ムーン)』ことゴドラであった。


「ゴドラ……!!」

「悪いが、証拠は消させてもらう。」


 そう言うと、ゴドラは手のひらをV-ENOMに向けた。瞬間、手のひらからは膨大なエネルギーの魔力が集中した。


「『天が開け、神の霊が鳩のように降って来るのを見た。』」


 その言葉はどこからか聞こえてきて、気がついた時にはゴドラは胸ぐらを掴まれて、吹き飛ばされていた。

 V-ENOMは何が起こっているのか、目を必死に動かすので限界だった。だが、その男の姿を確実に捉えた。


「マタイによる福音書3章16節よりだ。ゴドラァッ!!」


 そう言うと男はゴドラに向かって大量の魔法を放ち続けた。


「悠……!!死刑が早まるのがそんなに嬉しいか!!」

「やってみよ、何が起こるのか楽しみだなァ!!」


 そう、最悪の2人がぶつかってしまったのだ。


第五十九話 終

この作品が面白いと思ったら是非★やブックマーク、コメントなどお願いします。

また、他の連載作品などもお願いします。

作品の質向上の為にもアドバイスなども下さったら有難いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ