第百十八話 裏切り者
神の化身として生を受けた者が居た。
〖目を覚ませ、No.63。〗
目覚めの悪い朝だった。生まれ落ちて初めて見る世界なのに、今まで生きてきたかのような気分だった。
赤子と同じ立場のはずなのに、言葉も話せて、なんなら成人男性を超越するような身体能力がある気がした。
「ここは……」
〖貴様は私の化身だ。名前はNo.63。太陽が失態を犯した。代わりに貴様が現実世界に降りて、太陽を復活させろ。〗
大人と同等のレベルの頭脳をNo.63は持ち合わせていた。しかし、流石に理解できなかった。
だが、話しているうちにNo.63は理解できた。
自分という存在は、神の化身として生まれてきたものだと。
太陽という神が、失態を犯し、自身の保有する世界すら守れず、殺された。だから、尻拭いとして、No.63には太陽を復活させるという使命が課せられた。
〖強欲故に失態を犯した太陽の尻など拭う価値もないが、やつが殺されたままでは私たちのメンツが持たん。貴様の使命は、やつを甦らせることだ。良いな。〗
半ば強制的な使命であった。
地球はまず仲間を増やした。力を与えることは出来る。
神の力を与え、そして組織を作った。その名こそが十星。神の力を得た、十人の怪物であった。
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「どういうことだよ……!?」
〖何、私が神の化身だというだけだ。〗
V-ENOMは信じられなかった。
目の前にいる生き物が神であるという事が信じられなかった。
今までの相手のように、人間であればV-ENOMは諦める必要もなかったかもしれない。しかし、もはや勝つことは不可能であった。
「最後に……1つ聞かせろ……」
〖?〗
「通信で圭太が言ってたんだ。十星の中に裏切り者がいるってな……!!つまり……てめぇがENDの手先ってことか!!」
太陽を蘇らせようとするため、ENDと地球が手を組んだ。辻褄が合ってしまった。
V-ENOMは最後の質問としてそれを聞いた……しかし、地球の返答は想定外のものだった。
〖違うぞ?〗
どういうことか、一瞬理解できなかった。V-ENOMの中では、裏切り者が地球だと確信してしまっていた。それを否定されて、V-ENOMの思考は完全に停止した。
〖私は神に命じられた使命モ既に放棄シている。太陽を甦らせるのモ、モはや私の目的の外だ。〗
地球はそう言うと、顎を押さえ、地面を向いて少し考えた。熟考する様子に、V-ENOMは緊張すると共に、もう一度疑問を抱いた。
ならば裏切り者は誰なのだ。地球でない。であれば、その十星は死んでいる可能性だってある。この戦争中に誰が死んでいてももう理解の範疇の外だ。それに、十星は世代交代も多い。既に変わっていて、裏切り者の情報が古い可能性もある。
地球は顔を上げて、しかめた顔でV-ENOMを見ると、ため息をついて〖超新星解放〗を解除した。
「もう君と戦ってる場合じゃなさそうだ。十星の命はもう短い。裏切り者を僕が殺す必要がある。」
そう言うと、V-ENOMに対して地球は指をさした。
「着いてくるんだ。十星の裏切り者を炙り出す。この戦争はまだ嵐を起こす気だ。事件の歯車も……渦もとっくに回っている。」
何かに気がついてしまったのか、焦って地球はそう言った。V-ENOMは嫌な予感がしていたが、地球に着いて行った。
戦闘に夢中で周りの様子など全く見えていなかった。いつの間にか基地は崩壊していて、辺りは火の海になっていた。歩いていると、圭太と蒼皇に出会った。地球を見て2人は警戒していたが、事情を説明すると、落ち着いたようだ。
「地球、戦場でまだ戦ってる十星は何人だ。」
「天王星と冥王星だ。しかしどちらも……」
地球は途中で口を噤んだ。何やらまずい状況になっているようだ。
そのまま四人はシガール・オウマ、天王星の元へと向かった。その判断が吉と出るか凶と出るか、神のみぞ知る……いや、その答えは神すら知りえなかった。
第百十八話 終
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