第百十七話 神様
「神だと?そんなの私しかいない。」
V-ENOMは悠の回答に半分呆れていた。ただ、少し気になって質問してみたのだ。「悠様は、神様がいると思いますか?」と。
「お前の言う神とは、神話的、オカルト的なものだろう?十星に力を貸してる“奴ら”のことではないだろう。」
V-ENOMが頷くと、悠は「ならばいないな」と一蹴した。
「そもそも“奴ら”は別世界に住む違う生物でしかない。死んだ時、そこに送られる場合があり、力を得られる可能性があるというだけ。それが神秘的だから『神』と名付けられただけであって、それ以上のことは信じていても無駄だ。」
「じゃあ、“奴ら”が神じゃないにしても、なんで神がいないって論になるんですか?」
「道徳心に反した行為をした人間を裁いたりするのが神なのだろう。馬鹿馬鹿しい。『人に優しくするのが正しい』『人を殺してはいけない』、そんなもの人類が文明を発達させる為の都合の良い価値観だろう。それを神が押し付けてくるなど有り得ない。」
V-ENOMは少し納得してしまった。考えてみれば、神という存在自体、人間に都合が良すぎる気もしてきた。
「それに、神がいるのだとすれば……」
悠は何か睨むように、上を見つめた。しかし、その眼は天井ではなく、空のその上を見ているようだった。
「それは孤独だろうな。」
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「お前……何者だ……!?」
何度か攻撃が命中して、地球に効いていた様子はあった。だが、どれだけ攻撃しても簡単に再生して、その度魔力が倍増していく。
底なしの力。まるで、貯水タンクと繋がっている水道のように、蛇口を捻る度、止まることなく魔力が流れてくる。
〖私が何者か?貴様には到底考えモ出来ないような存在だ!!〗
瞬間、地球の右腕は、肥大化して、大木のように変貌した。その巨大な腕で、力を込めて地球は拳を振り下ろした。
V-ENOMは攻撃を諦めて、回避に徹していた。どれだけ攻撃しても効果がないなら、工夫が必要だ。だが、いくら考えても何も思いつかなかった……いや、一つしか思いつかなかった。
「その強さの先に何があるんだよ。」
〖なんだと?〗
王道かつ、選択肢が無くなった際の効果的な手段。基礎、『説得』である。戦闘で勝てないのなら、口論で勝てばいい。
〖私は大地の守護者だ!!驕り高ぶる人類を抹殺してこそ、大地への加護!!〗
「だったら私と戦ってる暇なんてないんじゃねぇの?私に構ってる必要なんてあんのかよ……?」
一言一言に注意して、地球を説得しようとした。が、その言葉を言った瞬間、地球は不敵な笑みをして、笑い始めた。
〖それが傲慢だと言っているのだ、人間。貴様の頭脳があれば私を言いくるめられると思ったか?言っておくが説得は不可能だ。もう手遅れ。〗
V-ENOMは舌打ちした。バレていた。
だが、諦めるにはまだ早い。もう少し悪あがきする価値はある。
「説得どうこう以前に、明確な目的もないんだろ。大地を守るだなんて、それこそ傲慢だ。守ってくれだなんて大地が言ったのか!?」
〖大地の心を踏ミにじるのか!!〗
「心は人間が作ったものだろ。」
図星を突かれたのか、地球は激怒して、辺り一帯を破壊するように攻撃した。しまった、いつもの癖で、説得ではなく挑発してしまった。
急いで元に戻そうと、V-ENOMはもう一度口を開いた。
「そんなんはどうでもいいんだけどさぁっ!!」
地球は訝しむように眉間に皺を寄せた。
「お前さっきからなんで攻撃効かねぇんだよ!!うざってぇんだよ!!」
何か話題を出さないと、隙を見せた瞬間に殺される。そう思ったとしても、これは無いだろう。V-ENOMは言い終わった後に気がついてしまった。
だが、地球は、悪戯が成功した子供……というよりは、狡猾な獣のような笑みを浮かべて言った。
〖私の力がソんなに不思議か。〗
「あぁ。仕掛けは気になる。」
それは偽りのない言葉であった。だからこそ、地球は一種の好奇心にも近い感情で言ってみたくなったのかもしれない。
〖私の正体は、十星ではない。生マれた元より、私は『地球』だったのだ。〗
V-ENOMは理解が出来ずに、顔をしかめた。何を言っているのだ。
〖モっと分かりやスく言ってやろう。私は『神の化身』なのだ。底なシの魔力モ、神と直接会話が出来るのも、私が自立シた化身だからだ。〗
男の名は地球であった。それ以上でも、それ以下でもなかった。
男は神であった。それ以上でも、それ以下でもなかった。
第百十七話 終




