第百四話 火星
ほんの少し今回の話短いです
十星の初期メンバーは十人であるが、初代のまま変わっていないのは、たったの四人。
『月』『火星』『木星』『地球』。他のメンバーは全てが二代目以降だ。
『月』ことゴドラのみがその中で突出した武力を誇った。が、力のあるものが長となれば、他のメンバーは従うしかない。なので、ゴドラは自主的に火星を長に推薦した。だからこそ、ゴドラは今でも火星の命令だけは確実に聞く。
『火星』。本名は『鈴木 拓』。怠惰で斜に構えた性格。だが、正義は確かにあった。
だが、一度だけ。そう、一度だけだった。黒魔術。死者蘇生を私的利用してしまった。亡くなった想い人への執着心。同情からか、十星は誰一人その件を咎めようとしなかった。
それが不和の種だった。正義感は歪み、次第に『代償のない死者蘇生を可能にするため』という口実で、火星は死者蘇生を許可した。代償のいらない死者蘇生など、不可能な事が分かっても、十星の武力行使のために許可してしまった。
堕落した星は夜を照らさず。
十星が初めて死者蘇生を行った時に朝霧悠が放った言葉。学校の教科書にもチラッと紹介されている。
だが、何を言われようとも火星は、想い人との愛を永遠と思い疑わなかった。二人の愛は同等のものと思い疑わなかった。
火星は歪んだ正義と同じ、歪んだ愛を持っていた。十星の死者蘇生は止まることを知らず、火星は何度も想い人を生き返らせた。
両手両足を使っても数えられないほどの数になった時、想い人は遂に限界を迎えた。
一つ忠告しておくが、死者蘇生における“限界”とは、その肉体、精神が異常をきたすことである。
火星は気がついていた。その女性の肉体が崩れていたことに。両足の機能は衰弱し、車椅子での生活を強いられていた。続ければ完全に体は動かなくなる。
体が衰弱したにも関わらず、女性は火星にビンタして、姿を消してしまった。数日後、異世界警察の建物から飛び降りた女性の姿が発見されることとなった。
もうその女性のために死者蘇生を行うのは辞めた。が、火星の心は病んでしまった。
数日後、悠によって、十星の半数が暗殺される。十星で二番目の力を誇る火星。自身の死くらい回避できたはず。だが、亡くなった。
十星の長、火星……否、鈴木拓は生を望まなかった。
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《嗚呼。》
蒼に巻き付かれた火星は、もはや為す術なかった。的確に筋肉が抑えられ、体は微動だにしなかった。
蒼は手を振りあげると、心臓部に向かって振り下ろそうとした。
ようやく。十星に死者蘇生をされ、地獄に帰ってきてしまった。ようやく想い人の元へ帰れる。火星は笑顔を浮かべた。
〖今行く。〗
が、蒼の体はピタッと止まった。笑顔を見せた火星を見て、蒼は何かを思い出したのか。
一瞬だった。ほんの一瞬、攻撃が止まっただけだ。だが、火星はこの世に未練が湧いてしまった。月は大丈夫だろうか。それに木星や水星達も。
潔く死ぬことすら許さない。蒼はそんな男だった。
蒼は手を振りかぶると、顔面に一撃、そして、脳天に指を突っ込んだ。
頭蓋骨がバキバキと音を鳴らし、蒼は満足そうな笑みを浮かべた。何か柔らかいものに触れる感覚がすると、蒼は一気に手を突っ込んで、それをグチャっと潰した。
柔らかいものを潰すのは、楽しい。本能的快楽に溺れた蒼は口を開いて、大きな高笑いをした。
当たりは炎に巻かれている。気づかない間に蒼は煙を吸いすぎていたらしい。その場に倒れて、蒼の意識は遠のいていった。
〖屋外の戦い 火星vs蒼(狂心症)〗
勝者 蒼
第百四話 終
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