Act 5-2:幽霊船
奥へ進む。
やがてたどりついた、ホールのような広い空間。
そこに広がっていた光景に、俺たちは息を呑む。
無数の、人のからだが、折り重なるようにして倒れていた。
いや、これは――。
「人じゃない……iNOIDだ」
「え? これ全部?」
俺のつぶやきに、ミイが反応する。
「ああ……まちがいない」
こんなに大量生産されていたのか。
俺は近づき、一体一体を調べてみる。
劣化はしているが、腐ってはいない。
ほんものの人体ではないわけだし、当然といえば当然だ。
それに、この連中は、俺の肉体ほど、正確に人間を模してはいない。
量産型、あるいは目的的に作られている。
「う……」
ミイが立ち止まる。
人間の死体ではないとはいえ、見ていて愉快なものではないはずだ。
「死んでるの?」
「ちょっとちがうな。中身がない」
「中身?」
「ナノマシンが入ってない」
――動物の死がいみたいに冷たい。
俺は目を背け、からっぽの器から手を放した。
「カチュ!」
ふりかえると、クゥが、さけんで部屋のひとつへと走りこむところだった。
「待て、クゥ!」
あわてて追いかけ、部屋のなかをのぞく。
――そこに、カチュターシャはいた。
簡素なベッドと、テーブルと、棚がある。
個室のようだ。
ベッドに横たわったエルフの少女は、目を閉じ、眠っているように見えた。
死んでいる、ではなく、眠っているみたいだと感じたのには、理由がある。
「肌の色が……」
青白くなく、ほんのり赤みが差している。
血が、全身にみなぎっているかのように。
「……生きてる!」
カチュターシャの腕に触れたクゥがふりかえり、涙ぐんでさけんだ。
「生きてる!」
俺はミイの横を抜け、部屋のなかに駆けこむ。
クゥとおなじように、カチュターシャの腕に触れてみる。
たしかな、鼓動を感じる。
俺のうなずきを見て、安堵のあまりだろう、クゥがその場にくずれ落ちた。
カチュターシャの容体は安定しているようだった。
俺も胸をなで下ろす。
それでは、クゥの読みは正しかったのだ。
ネクサは、気を失ったカチュターシャを連れて行っただけだったのか。
だが、生かしておく理由がわからない。
クゥが肩をふるわせている。
すこしのあいだ、そっとしておいてやるべきかもしれない。
「ミイ、ついててあげてくれ。もうすこし、あのiNOIDたちを調べたい」
ミイが、わかったとうなずく。
俺は部屋を出て、手近な一体の近くにかがみこんだ。
それから、顔をのぞきこもうとしたところで、動きを止めた。
俺たちがこの空間にやってきたのとは反対側の通路から、なにかが聞こえてきた。
まただ。
キ・キ・キ、という、奇妙で不快な音。
俺は立ち上がり、ミイたちがいる部屋を気にしながら、奥へと進んだ。
ホールを出て、音がするほうへと進む。
あまりミイたちから離れすぎないよう、意識する。
曲がり角にある部屋の前に立つ。
このなかからだ。
意を決し、暗い室内に足を踏み入れる。




