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第13話 未知との遭遇 ~ビーフシチュー~

 ケンジとヴェロリックの喧嘩も終わり、私達は街へと向かう事に。

 仕留めた熊はどうしようかという問題は、ヴェロリックが神から貰ったストレージとかいう魔法で運んでくれる事になった。

 前世の私の持ち物を持って来る為に神からの特典でおすすめされたんだそうだ。

 なんと、前世の私の本体も持ってきているという。

 せっかくなので出してもらったが、割られて完全に力を失い、今やただの石塊。おずおずと触れてはみたが、特に何も起こりはしなかった。

 私がここに前世の力を持って存在するのだから、当然か。

 ま、そんな事よりもだ。私のふかふか寝床もしっかり持ってきているというのが、ヴェロリックの一番の手柄だ!

 ただ問題は、それを置く為の巣を確保しなければならない事。

 闇の神に会う旅が終わるまでは、使うのは難しそうだ……残念。


 それはともかく、無事に街へ到着した。

 私達が中に入るには、税というものを門番に払わないといけないらしい。

 ヴェロリックは、私の分は払うが、ケンジの分までは無いと言う。

 ケンジも『おっさんの世話にはならない』と、小袋から金貨を取り出して──ヴェロリックが慌ててケンジの首根っこを捕まえて、門から離れて、また何か言い合いをしていた。

 アイツら、実は仲が良いのか?

 少ししてから二人は戻ってきて、ケンジは門番に銀貨を渡していた。

 入るのに手間取った私達を置いて、ツバキは先に門を通っていた。


「なにかあったの?」

「この粗忽者が、金貨しか持っておらんかったのですよ」

「仕方ないだろ!てか、先に確認しとけよ!」

「それはそうだが、お互い様であろうが!」

「はいはい…いいから行くよ」

 ようやく私達は街へと入った。


 それから、少し歩いたあたりでツバキが、


「ちょっと早いけど、ご飯にしようか。ヴェロリック、美味しい店知ってる?」


 などと言い出した。

 食事か……。

 必要な事なのはわかるが、私は食事が苦手だ。

 パンも肉も、どちらも硬くて不味くて……いや、あの熊の血よりはマシではあるが……。


「ソフィ様に相応しい店となると……」

「あ、もういいよ。私のおすすめの店にしよう。ちょーっと値は張るけど、アタシとヴェロリックで奢ってあげるから」

「待て、ツバキ殿。なぜ私が──」

「ソフィちゃんに出させる気?」

「そんな訳なかろう!」

「じゃ、決まりね」


 「こっちこっち」と言いながら先を歩くツバキについて行き、少し大きめの白い建物に入った。


 ……なにやら、良い匂いがするぞ。


 ゴクリッと、唾液を飲み込んだ。


 店の者に案内され、テーブルへ。

 ツバキが慣れた様子で、「本日のおすすめで。それと水をお願い」などと言っていた。


「さて、落ち着いたところで、改めて名乗らせてもらうよ。

 アタシはツバキ。鬼の血族で、冒険者をやってる。それと、義母さんの小間使い的なのも、たまに」

「俺は壬生 健仁です」

「エルムソフィラだ」

「ヴェロリックでございます」


 いや、ヴェロリックは皆知っているだろ……。


「ちなみに私もこの街で冒険者をやっておりますぞ。この前三等級に昇進致しました!」

「そうか」

「…………はい」


 …?なんだ?


「ヴェロリック…二人は冒険者について何も知らないんだから、そんなの分かんないって……」

「それもそうですな……いや、先程久々にソフィ様からお褒め頂いて、少し欲張ってしまいました」

「おっさん、そんなにソフィに褒めてもらいたいのか?」

「当然であろうが!」

「ヴェロリック、うるさい」

「……はい」


 この少し様子がおかしくなる癖が無ければ、もっと褒めるぐらい構わないのだがなぁ……。

 いつもは頼れる奴だけに、惜しい。


「お待たせいたしました〜♪」


 そんな事をしている間に食べ物と水が運ばれて来た。

 肉の匂いと……なんだろう。初めて嗅ぐ匂いだ。

 店の者が慣れた手つきで並べていく。む?私の前に置かれた物だけ皆と違うぞ。


「肉の赤ワイン煮込みと白パンになります。お嬢様には肉の甘煮込みをお持ちしました」

「ありがとね~」


 ツバキはそう言って店の者に銀貨を渡す。

 それを受け取り『ごゆっくりどうぞ~♪』と、上機嫌で店の者は去っていった。


「それじゃ食べよう。遠慮はいらないからね」

「ありがたく頂きます。……ソフィのは、ビーフシチューみたいだな」

「びーふしちゅー?」


 この茶色い汁に肉が入っているのは、びーふしちゅーというのか。

 肉の他にも色々入っているみたいだが……とりあえずは肉からだな!

 

「……まぁ、かなり頑張って再現されてるよ」

「え?ちょ、え?ツバキさんて、もしかして転生者…?」

「そ。ま、完全じゃないから、あっちの記憶がほんのすこ~し残ってる程度だけどね」

「そうだったんですか……。もしかして他にも──」

「あ!ソフィ様ダメですぞ!直接肉を掴んではいけません!!」

「ダメなのか?」


 肉を掴もうとしたらヴェロリックに止められてしまった。


「こちらをお使いください。持ち方はこのようにですな……」

「こうか?」

「おお!その通り!さすがはソフィ様!!」

「そういうのはいい。この窪んでいる先っぽを使うのだな……汁も一緒に口に入れて良いのか?」

「はい。熱くなっておりますのでこう、フーとしてからがよろしいですぞ」

「なるほど。ふー……」


 恐る恐る、掬った肉と汁を口へ運び──私は、未知の感覚に遭遇した──。


「……先に食べよっか」

「そうですね……」

「ソフィ様、大丈夫ですか?固まってしまわれましたが……」


 肉が─ホロホロとやわらかい!そしてこの汁、肉と他にも何か色々な味が混ざりあって、とても濃厚で……これが、ケンジの言っていた"美味い物"か!!

 これは……こんな……!!

 …………神よ。私は今、貴様に心から感謝しているぞ──!


「ソフィ?いきなりどうした?」

「ソフィ様、食事中に立ち上がって両手を上げるのは行儀が悪いですぞ」

「……いやなに、このびーふしちゅーとの出会いを神に感謝していたのだ」

「そんなに美味いのか!?」


 ゆっくりと座り直し、そしてゆっくりと頷く。


「ケンジの言っていた、美味いというのは……こんなに素晴らしかったのだな」

「いや、まぁ……よろこんでいるみたいでなにより……」


 美味い……うーまーいーぞーーー!!!

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