第14話 腹八分目って実際どのぐらいなんだろうな?
「う、ううううう……」
「あ、ホントにビーフシチューだ。うわ、美味いなこれ」
「ぬううううう……何故だ……何故こんなに苦しい……」
お腹を抱えて苦しげに声を漏らすソフィ。
……まぁ、いくら美味いとはいえさすがに四杯目は余計だったよなぁ。
結局食べ切れず、俺が残りを片付けている。
「食べ過ぎだよ。二杯目のおかわりでやめとけばよかったのに」
「うううう〜〜……しかしだな……うぷ」
「おお……おいたわしやソフィ様。しかしながらこれも経験ですぞ」
「やかましい……うう……」
美味い美味いと言いながらも、三杯目の時には既にちょっと苦しそうだったからな……俺もしっかり止めてやるべきだったんだろうな。
でも、ホント嬉しそうに食べるから止めづらかったんだよなぁ……。
「くそぅ……何故もっと食べられる体じゃないんだ……おのれ神め……!」
「ついさっきまでの感謝はどうした……」
「無論忘れてはおらん。だが……それはそれ!これはこれ!」
……ま、なんだかんだで元気そうだし、しばらくそっとしておくか。シチュー美味え。
「ん〜♪今日のワインはなかなかイイねぇ。デザートのプティングも、甘さ控えめで美味い!」
「ギギギギ……」
ツバキさんはツバキさんで、ワインのボトル一本を一人で空けてしまっていた。
肴にプリンを食べているのを、満腹でダウン中のソフィが射殺すような視線で睨みつけている。
「ケンジ……」
「ダメだよ。それに、苦しいのに無理矢理食べても、美味しさ半減だぞ?」
「そ、そうなのか?いや、しかし……むぅ……」
目の前で美味そうにされたら、うらやましくなるのはわかるけどな。
「くっくっく……彼氏君なんて言ったけど、今のやり取りはお父さんと娘だね」
「いや、こんなおっきな娘がいる歳じゃねぇっすよ!」
「誰が娘だ!……うぷっ」
「こんなのがソフィ様の父などと──悪い冗談ですぞ!!」
「あっはっはっは!ごめんごめん」
……そろそろ、店を出た方が良いかもしれないな。
しかし、奢ってもらう側が『お会計で』とは言いづらい……。
ヴェロリックのおっさんに期待するしかない。
頼む、もう出ようって言ってくれ──。
俺はおっさんに目で訴えかけた。
「ツバキ殿、そろそろ……」
「ん?あ、そろそろ出る?じゃ、ちゃちゃっと食べちゃうからちょっとだけ待ってね~」
「あ、あ、あ~~……」
ツバキさんの口の中へ消えていくプティングを、ソフィが未練がましく凝視して情けない声をあげていた。
みっともないからやめなさいね?
「~~~~次!次は絶対アレを食べるぞ!」
「そうだな。次の機会の楽しみにしような」
その次がいつになるかは、この際置いておこう。
……支払いの時の金額次第だからね……。
そう思っていると、おっさんが小声で話しかけてきた。
「この店はかなりの高級店だ……あまり安請け合いするんじゃない」
「え?そうなのか?」
「普段からこんな店に通っていたら、私でも破産するぞ……」
マジか……。
……ま、まぁ次がいつなのかは明言してないし…いつか、その内ってことでね……。
ツバキさんが支払ってくれる際にチラッと見た銀貨の枚数と、金貨二枚の存在に思わず息をのんでしまった。
奢ってもらう額が大きすぎて、ソフィとは違う意味で俺の胃がキュッとなる。
……いや、重いって!!




