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『人類を裏切った少年、魔族の総帥に拾われる』 ~国を毒殺して処刑されるはずが、深淵の力で魔界の英雄(?)に成り上がるようです~  作者: M—mao
グランディ帝国編

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第26話 四年の覚悟

エドが審判台(しんぱんだい)へ連れてこられた。


足を止め、広場を見渡す。

群衆の顔。連邦軍の兵士たち。

一人一人、確かめるように。


(……いない、か)

(やっぱり、幻覚(げんかく)だったんだ)


小さく息を吐き、台の中央へ歩いた。

セリーヌが待っていた。

怒りを押し殺した目で、見下ろしている。


エドは怯まなかった。

その視線を、真正面から受け止める。

そして。

静かに、彼女の顔を見つめた。


墨のような黒髪。星空のような瞳。彫刻のような輪郭(りんかく)


(綺麗だな......)


視線が、目元から頬へ。頬から顎へ。

ゆっくりと。


セリーヌのこめかみが跳ねた。

この目が、妙に苛立つ。


「いつまで突っ立っている」


声が低く震えた。

エドは薄く笑い、彼女の横を通り過ぎた。

処刑台の縁に立ち、民衆を見下ろす。


困惑した視線が集まる。

なぜ子供が、あそこに。


「エド・ウォーカー」


セリーヌの声が響いた。


「王都ルカドナの水源(すいげん)に毒を投じ、全城に被害を与えた」

「さらに、複数の貴族とその従者、兵士を殺害した」

「この罪状(ざいじょう)を認めるか」


「認める」


エドの声は平坦だった。


「全部、俺がやった」


広場が爆発した。


「毒を撒いたのはお前か!」

「母さんが死んだのは……お前のせいか!」

「人間の皮を被った悪魔だ!」


怒号が渦巻く。


静粛(せいしゅく)に」


セリーヌが声を張った。


「エド・ウォーカー。全城を巻き込むような手段を取った動機は何だ」


空っぽだった目に、光が戻った。

憎悪の光。


「復讐だ」

「俺の家族を殺し、故郷を焼いた奴らを、皆殺しにするためだ」


「お前の憎しみは理解できる。だが、手段は認められない」


セリーヌが一歩、前に出た。


「守備兵だけを狙えば、入城は可能だった。仇には法の裁きを与えることもできた」

「なぜ、無関係の民衆を巻き込んだ」


民衆の怒りに、火がついた。


「貴族だけ狙えばよかっただろう!」

「最初から俺たちも殺す気だったんだろ!」

「人間の裏切り者め!」


エドは、その罵声を見下ろした。

冷たい笑みが浮かぶ。


「うるさいな……」


広場が静まった。


「文句があるなら、上がってこい」

「俺を殺してみろ」


「おい、小僧——」


セリーヌが制止しようとした瞬間。


「なめるなよ、ガキが!」


男たちが台に駆け上がろうとする。

女たちが火球を放つ。


「魔導団、秩序を維持しろ!」


結界が展開され、攻撃を弾いた。

その光景を見て。


エドが笑い出した。


「ははは」

「あはははは」


誰もが、困惑した。

エドは民衆を指さした。


「見たか、総帥殿。これがあんたの守りたい民だ」

「お前らの庇護(ひご)があるから、やっと背筋を伸ばせる連中だ」

「もしお前らがベレーラみたいに残虐(ざんぎゃく)だったら、こいつらは跪いて命乞いをしてる」


セリーヌの唇が、無言で動いた。


(黙れ……)


エドは民衆を睨みつけた。


「聞け、お前ら」

「俺はお前らとは違う」

「四年だ。四年、この日のために生きてきた」

「家族を殺した奴らを、一人残らず殺すために」

「俺は自分の信念を貫き、この手を血で染め、今ここに立っている」


声が震え始めた。


「お前らは——何をした!」


叫びが、広場に響いた。


「あいつらに踏みにじられながら、犬みたいに這いつくばってただけだろう!」

「どんな残虐なことをされても、当たり前だと思ってた!」

「お前らがこんなに大勢いるのに——一人でも立ち上がっていれば——」


貧相な身なりの若者が、悔しげに唇を噛み、俯く。

否定できなかったからだ。


「今日ここに立ってるのは、魔族じゃなくて、お前ら自身だったはずだ!」

「これはお前らの国だろう! お前らが本当に抵抗していれば——」

「俺が——一人で——全部背負う必要なんて——」


声が途切れた。

エドの膝が崩れ、台に倒れ込んだ。


嗚咽(おえつ)が漏れる。


民衆は黙っていた。

拳を握りしめ、目を赤くして。

誰も、言い返せなかった。


広場に、静寂が落ちた。

泣き声だけが、響いていた。


セリーヌは動けなかった。

いつも飄々としていた少年。

こんなにも、脆かったのか。


エドが涙を拭い、立ち上がった。

振り返り、セリーヌを見る。


「総帥殿」

「俺は故意に毒を撒き、復讐のために多くの人間を殺した」

「俺の罪は、どう裁かれる」


セリーヌは黙っていた。

答えは分かっている。

だが、その二文字が、舌の上で固まって動かない。


(なぜ……言えない……)


グランディの執法官(しっぽうかん)が立ち上がった。


「被告人エド・ウォーカーに対し——」

「グランディ帝国法により——死刑を宣告する」


死刑。

その言葉が響いた。

だが、民衆は歓声を上げなかった。

拍手もなかった。


「そうか」


エドは頷いた。

処刑台へ、歩き出す。


「待て!!」


セリーヌの声が、彼を止めた。

エドが振り返る。


セリーヌの顔には、見たことのない表情が浮かんでいた。

焦り。

迷い。

そして——決意。

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