6.大いなる勘違い
6.大いなる勘違い
祐二くんって、もしかして私に気があるのかしら…。まさかね。彼にしてみれば私なんかきっとオバサンだもの。
「ねえ、祐二くんって、そんな風にお客さんの好みを覚えているの?」
「まさか!翔子さんだけですよ」
マジか!こりゃあ、ひょっとするとひょっとするかも。
「そうなの?どうして?」
「いや、そう言われるとなんでか分からないですけど…」
おい、おい!そりゃあ、私に惚れているんじゃないのか?まあ、口には出さなかったけれど、脈ありと見た。この際、年下なんて関係ないわ。そう!愛があれば歳の差なんて関係ないわ。
「じゃあ…」
「はい!揚げ出し豆腐ですね」
「そう!祐二くんすごい!」
ちょっと飲み過ぎたかしら。帰りの電車の中で妙に浮かれた気分になっていた。向かいの席でスーツ姿の男二人組が大きな声ではしゃいでいる。明らかに酔っ払いだ。周りの人たちは嫌な顔をしているけれど、私は全く気にならなかった。楽しいことがあったのなら、どうぞはしゃいでくださいな。
さて、今日も愛しの祐二くんに会いに行こう。そう思うと仕事もなんだか楽しく思えてきた。あっという間に終業のチャイムが鳴った。
「野本君、悪いんだけど、この資料、今日中に整理して置いてくれないか。明日、朝一の会議で必要なんだ」
「え~っ」
思わず声をあげてしまったのだけれど、上司は資料を置くと、人の迷惑など意に介さないという様にとっとと帰って行った。はやる気持ちを抑えてせっせと残業に精を出した。
午後8時。ようやく残業が終わり、一目散にいつもの居酒屋に向かった。店に入ると、カウンター席に着く…。あれっ?祐二くん、居ないなあ…。
「マスター、祐二くんは?」
「ああ、あいつ、今日は休みだよ。何でも子どもの誕生日なんだとさ」
こ、子ども?誰の?そんなの聞いてないよ~。指輪だってしていなかったのに!
帰りの電車は最悪だった。大きな声で騒いでいる学生たちに思わず声を荒げた。
「うるせーぞ!ばあろー…」
そして私は意識を失った。




