3.焦りの秋
3.焦りの秋
秋になった。典子の結婚式。新郎の友人に目ぼしい男が居るかもしれない。
そう言えば、初めて見た。新郎を。
「期待できないかも…」
そう!新郎、つまり、典子の結婚相手はどう見ても50は過ぎている。案の定、友人たちもそれなりの年齢で、左手の薬指には指を引きちぎらんばかりにめり込んだ指輪がはまっている。この部類の男なら既婚・未婚、関係なくNGだ。それにしても、典子のヤツ、早まったな!
訳のわからない優越感に浸って結婚式場を後にした帰り。だんだん冷静になってきた。冷静になればなるほど、優越感は焦りに変わった。この歳になると、あんな男にしか相手にしてもらえないのか…。
長年の習性とは恐ろしい。こんなときでも足は自然にいつもお居酒屋へ。
「まっ、いっか。今日は日曜日だし」
そう、日曜日なら吉田も居る訳がない。一時はいい感じの男と期待に胸を膨らませたのだけれど。今となってはあの時のワクワク感を返してほしい。今日はカウンターでひっそり飲もう。
席について冷酒と揚げだし豆腐を注文する。すると、聞き覚えのある声が私の名を呼ぶ。
「翔子さん、奇遇ですね。今日は日曜日なのに」
吉田だ。二度目だと言うのになんだか馴れ馴れしいぞ。許可もしてないのに、いつの間にかグラスを片手に私の隣に移動してきた。
「デートの帰りですか?」
「どうしてですか?」
「素敵なお洋服を着ていらっしゃるから」
「親友の結婚式ですよ。デートだったら、帰りに一人でこんなところに来るわけないじゃないですか」
「こんなところで悪かったですね」
イケメン店員の祐二くんが注文した品を運んできた。
「じゃあ、僕はこれで」
わざわざ人の隣にまで来た割には、急に吉田が席を立った。
「奥さんが待っているんですものね」
「ええ、まあ…」
そう言って、ぺこりと頭を下げると、気まずそうに吉田は帰って行った。
「翔子さん、なんか勘違いしてません?あの人独身ですよ。それにあの日以来、毎日来ているんですよ。翔子さんに一目惚れしたみたいですよ」
「えっ?」




