2.いい感じの男
2.いい感じの男
結婚式の日取りも決まって、心にも余裕ができた。あとは相手を探すだけ。身近なところでは同じ会社の男性社員。さすがに、年齢的に釣り合いそうないい男はみんな所帯を持っている。若い社員なら居るには居るのだけれど、どうにも頼りなさそうなヤツばかりだ。
結婚が決まって典子はめっきり付き合いが悪くなった。他に相手も居ないので一人で居酒屋に入った。もはや、やけ酒の域に達しつつある。冷えた冷酒を手酌で猪口に注ぐ。それをグイっと空けると少し落ち着いた。
「翔子さん、相席よろしいですか?」
顔なじみの若いイケメン店員の祐二くんが声をかけて来た。辺りを見渡すと店内はほとんど満席だった。祐二くんが案内してきたのはいい感じの男じゃないか!見たところ、30代前半か。指輪は?してない!祐二、でかした!
「どうぞ」
「すみません。それじゃあ、お邪魔します。日本酒がお好きなんですね」
いい感じの男に声を掛けられた。一瞬、焦った。
「え、ええ」
「常連さんなんですね」
「えっ?どうしてですか?」
「さっき、お店の方がお名前を呼んでいらしたから」
「ああ、そっか。ええ、まあ、確かにそうかも」
「それじゃあ、このお店に来れば翔子さんに会える確率は高いですね…」
うわあ!翔子さんって、いきなり名前で呼ばれた。なんか、恥ずかしい。そんな私の気持ちを察したのか、いい感じの男は改めて自己紹介をしてくれた。
「あ、すみません。いきなり翔子さんだなんて呼んでしまって。僕、吉田と言います…」
そんなこといいの。どんどん呼んで。
その後も吉田さんとは意気投合して盛り上がった。もしかすると、もしかするかも!
楽しい時間はあっという間に過ぎ去って、そろそろ終電が気になる時間になって来た。
「あの…。私、そろそろ…」
「あ!そうですね。僕もそろそろ帰らないと。おかみさんがうるさいんで」
な、なに!女房がおるんかい!
「そ、そうですよね…」
「もし、よろしければメアドなど交換してもらえませんか?」
おい、おい!所帯持ちが何を言う。私は所帯持ちになんか用はないんじゃ。
「いえ、初対面ですし、また機会があれば、その時に」
「そうですよね」
そう言うと、私はとっとと勘定を済ませて店を出た。祐二くん、ごめん。もうここには来られないわ。




