6話
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おぉ~すごい。ノートパソコンに大きなモニター両脇についてて3面モニターだ。
やっぱり一軒家なのでウチより裕福なのだろう。
そしてやっぱりと言うか、なんというか……
部屋を見た限りは女の子っぽくない! 男の子の部屋なんだ!
「あぁ。ココだけは楓蓮専用っていうか、そんなスペースっす」
部屋の奥の一角にあるドレッサーだけ異様に可愛い。
そこだけ何か女の子って感じなのだよ。
めちゃくちゃ仲がいいよなこの姉妹。じゃなくて兄弟?
「ねぇねぇ。どこからお話する? 僕が説明しようか?」
華凛ちゃんは良く笑ってくれるようになった。元が可愛いいからその破壊力は抜群だ。
むっちゃ可愛いなこの子。でも「僕」っ子だからなぁ……
「三輪さんは今までで、何か疑問とかありますか?」
「そうですねぇ……男から女に変わるのは理解しました。あ、そういえば零斗パパが言ってたサイクルって何ですか?」
すると白峰姉妹は同じ向きに頭を倒して斜めにする。
「そうっすね。サイクルっていうのは、俺達入れ替わり体質の、入れ替わる予定時刻のことですね」
楓蓮さんはそこまで言うと、華凛ちゃんがウチの手を握ってくる。
【サイクルっていうのはね、例えば朝になったら男に変わって、学校に行って。学校から帰ってきたら女の子になって。寝るまで女の子で、朝になったら学校に行かなくちゃいけないから男になるとか、そんな予定表みたいな感じで……】
待って待って! ごめん華凛ちゃん。全然わかんないよ!
「俺達、入れ替わり体質には明確なデメリットがあるんです。まずソレを説明しますね」
デメリットっすか? とても重要な部分だ。
「例えば、今から俺が蓮に入れ替わるとします」
うんうん。
「蓮に入れ替わりました~。するとそこから楓蓮に入れ替わろうとしても出来ません。再度入れ替わりをするには約4時間のクールタイムが必要なんです」
「入れ替わったあと、すぐに戻れない。4時間開けないとダメってことですね」
なるほど。これは結構な縛りがあるんだな。
「例えば蓮の状態で、朝に楓蓮に入れ替わってしまうと……俺は学校に行けなくなるワケですね。クールタイムがあるので4時間は楓蓮で過ごさなきゃいけないので」
あ~そういうことか! 理解した。
入れ替わると、再度入れ替わるのに4時間開ける必要があるというわけですね。
コロコロ性別を変えられないワケだ。
「次は……俺達はずっと男と女に入れ替わらなくてはいけないということっす」
ふむふむ。
「ずっと片方の性別で過ごすことが出来ません。定期的に女に入れ替わって、再び男に入れ替わる。このアクションをずっと24時間、365日繰り返しています」
「そう聞くと、しんどそうな話ですね」
ウチはそう返すと、
【うんうんうん! しんどいの! 休めないの! ずっと入れ替わらないと、頭が痛くなって動けなくなるからすっごいいやなの!】
ウチは華凛ちゃんをおんぶした。めっちゃ可愛いなこの子。
「で、男でいられる時間と女でいられる時間は個人差がありますが、制限時間があるんです」
【僕は男が7時間。女の子だと9時間だよ。お姉ちゃんは逆で男が9時間。女の子は7時間なんだ。これが基本時間で……】
「華凛! お前まさか、三輪さんに心の中で喋ってるのか?」
「うん! 僕も説明してるよ」
「待てよ! お姉ちゃん困ってるだろ? 順番が大事なんだ。混乱するようなことは言うなよ。普通に口に出して言えばいいだろ?」
ごもっとも。だけど華凛ちゃんはきっと、
【心の中で喋りたいんだよね】
【うんうん! そうなの!】
ほら、そうだと思った。
「大丈夫ですよ楓蓮さん。ウチの能力の一つに聖徳太子スキルっていうのがありまして、二人の話を聞きながら別々に返すことが出来るんで平気です」
「マジですか? す、すごいですね」
楓蓮さんが驚く。と同時にウチへの返答が少しづつ男っぽくなっていくのが妙に嬉しい。
ウチは華凛ちゃんから聞いた制限時間の話をすると、こういうことらしい。
楓蓮さんは7時間。蓮くんは9時間。
華凛ちゃんは9時間。凛くんは7時間。これが基本時間だ。
ちなみに寝ている時間。つまり意識の無い時間はこのタイマーはストップする。
「この時間を過ぎると、俺達の脳に痛みを感じるようになります。これを俺達はリミットが来たって言ってます。つまり早く入れ替われって事ですね。基本はリミットが来る前に入れ替わりを行うのがセオリーですね」
【だから、僕たちが快適に過ごせるように計画するよ。朝は男じゃないと学校に行けないから、男で過ごして、学校に行って、帰ってきたら女の子になって過ごすの。これがサイクルっていうんだよ】
「なるほど。だから零斗さんはサイクルを狂わせないように、楓蓮さんと華凛ちゃんの入れ替わりを見せなかったんだね?」
華凛ちゃんはギュっと抱きしめてくれると、「正解」と元気よく言ってくれる。
今は夜。だから女である必要があるんだ。
明日も学校だから、朝に男になれるように調整しているわけか。
「加奈子お姉ちゃんってすごい! すぐにわかっちゃうんだね! 天才だよ!」
「いやいや、勉強はマジでできないから、華凛ちゃんが教えてね」
※
「で、さっき言ったリミットの件なんですけど、これが一番大事でして」
おんぶする華凛ちゃんがウチの身体から降りると、楓蓮さんの横に座った。
ちょっと真剣な話なのかもしれない。
「制限時間を超えると頭が痛くなると説明しましたが、リミットを超えてすぐに頭痛に悩まされるわけではなくて、時間経過と共に酷くなっていきます」
ふむふむ。
「リミットから1時間くらいは風邪でも引いたくらいの感覚です。この状態ではまだ普通に活動できます」
「ですが1時間を超えて1時間半ほどになると、かなりキツイです。わりとフラフラで制御できなくなっていきます」
「1時間半を超えて2時間経過すると、歩行が困難になります。かなり危険な状態です」
「そして2時間を超えると、平常心が保てなくなり、意識が朦朧としてきます。俺がリミット超過に耐えれたのは2時間半が限界でしたね。あとはもう……意識のないまま、3時間くらい経過すると自動的に入れ替わってしまいます」
この説明はやたらと具体的だった。
そして今までの雰囲気とは少し違う感じがした。
「ではなぜ、入れ替わりをせずにこのリミット超過をしなければならないのか。についてなのですが」
「入れ替われない。理由がある。ワケですよね?」
「ですです」
「うん。そうだよ」
ちょっと待ってね。考えてみる。
入れ替われない理由……いあ、普通に入れ替わればいいんじゃね?
いやいや、そうじゃなくて……
入れ替われない。理由といえば……
「例えば蓮で学校に行きました。だけど14時の時点で蓮の基本時間である9時間が経過してしまい、リミットが来てしまいました。学校は16時まであります。どうしますか?」
あっ……そういうことか!
「そっか! 学校じゃ楓蓮さんに入れ替われない! 2時間のリミット超過をするか、ヘタすると早退するしかない……」
「そうっす! 入れ替われない理由。それは人前で入れ替わってしまう事です。これだけは絶対に阻止しなければなりません」
「この入れ替わり体質を外部に漏らさない為に、安全な場所で入れ替わる必要がある。という事ですね」
なんてこった。
この入れ替わり体質って……縛りがかなりキツいぞ!
「……三輪さん。マジですごいですね。こんな簡単に俺達のことを理解してくれるなんて……正直ここまでスムーズにいくとは思いませんでした」
「ねぇ加奈子お姉ちゃん。ここまで聞いて僕たちの入れ替わり体質。うらやましい?」
これは返答に悩んだ。
「もちろん羨ましい部分も多いけど、中々しんどいっぽいと思った」
「そうなんだ……僕はこの身体はイヤなんだ……」
だよね? 質問する前から「イヤだ」ってオーラが出てたもんね。
入れ替わり体質とは男と女になれるメリットも多大だと思うが、それに伴うデメリットも多い。そう感じた。
※
楓蓮さんと華凛ちゃんの話が終わると一旦リビングに戻ってきた。華凛ちゃんはそのまま3階へ上がっていく。もうオネムの時間らしい。
時刻を見ると22時。
「加奈子どうする? 帰る? 私は泊まろうと思うんだけど」
と、オカン。
ああそうか。零斗さんとヨロシクってヤツか。
どうするか。とりあえずは家に帰らないと学校もあるし、家でゆっくりと話の整理もしたい所だ。
「帰る。明日も学校だし」
すると楓蓮さんが「送ります」と名乗り出てくれる。
「いえいえ、ここから15分くらいですし……」
「いえいえ、ダメです。夜道は俺が護衛しますんで」
「いえいえ、楓蓮さんも今、女の子じゃないっすか」
「いえいえ、俺の心は男なんで、身体は関係ありませんからね」
そう言われても……楓蓮さんは行く気満々っぽい。
「加奈子ちゃん。気にしないで使ってやってね。使われると喜ぶタイプだから」
零斗さんも遠慮なく言うようになってきた。だけど楓蓮さんはうんうんと頷いてらっしゃる。
「物理には強く育てて来たから、多人数相手でも楽勝で勝てます。大事な女の子を守れるように仕込んでますんで。素直に守られてやってね」
その言い方! っていうかうんうん頷いてばっかりの楓蓮さんだった。
「あっ! そうだ! ちょとだけ帰るの、待ってもらえます?」
「はい。ど、どうしたんですか?」
「どうせなら……蓮になってきます!」
その返答にウチが固まったのを見ていなかったのか、楓蓮さんはすごい速さで2階へ上っていく。
え?
蓮くんになってくる? 男になっちゃう系?
まって。まって! まってぇ! 楓蓮さぁん~~~~!
急に……急に蓮くんと変わってくるとか、何かの冗談だと言ってください!
ごめん! 絶対無理なヤツがきた!
今までずっと楓蓮さんだったから、こんな気楽に喋れただけで、男になっちゃえば喋れる気がしないからぁ。
絶対ダメだ。絶対無理だってば!
「お待たせしました! 家までお送りします! 男だったら夜道でもいいですよね?」
ごめん。
コレはちょっと……無理っす。黒澤くん……
突然、楓蓮さんが黒澤くんに変わるとか。頭では分かっていても、色々と処理が追い付かないっす。
「え? どうしたんですか? 三輪さん? え? えぇっ?」
後は家に帰るだけなのに、最後の最後で……試練が待っていた。




