2話
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さて、やる気のない担任の先生の話は必要ない。
ここからはみんなの自己紹介が始まるのだが、順番に説明させてもらうと、こんな感じである。
「南中からきた、東 昭仁です。よろしくお願いします」
メガネだな。小学生からずっと同じだなコイツも。
幼馴染なのに、やたらウチを怖がってるんだが、身に覚えはない。
「南中からっす。梶谷信也っす。バスケ部に入りまっす! よろしくっす!」
梶谷はまゆちんの旦那候補筆頭である。
なんで西部達とつるんでるのか、いまだかつて理解できないほどの常識人。
ウチにも優しいので、まぁまぁいい奴認定している。
「南中からきました。井上まゆこ。です。バスケ部に入部希望です! よろしくっ!」
さらっと梶谷と同じような挨拶だが、本人も全く意識してないと予想。
あ。付き合ってるわけじゃないぞ。あくまで友達とか知り合いとか腐れ縁とか、まゆちんは言っているが、誰がどう見てもお似合いのカッポーだ。
さぁ、次はチンパンジーの紹介だな。
「南中からきましたぁ! 西部浩一っす! めっちゃ彼女募集してますっ! 俺と一緒に高校生活を歩んでくれる女の子! よろしくっ!」
こいつってさ、いつも思うんだけど、マジなんだよ。何もかもが。
マジで思い込んでるんだよ。『こう言えば、女の子に好意をもたれる』って。本気でそう思ってる。
信じられないだろ? でもマジなんだよ。
マジでそう思ってるからこそ、こんな変態キャラでも幸せそうなんだ。
そう考えると、中々の大物である。というか……
本当のことを言うと、人間じゃなくてチンパンジーなんだけどさ、人間じゃないから。
さて、次からが問題である。まずは金髪さんから。
「うっす! 〇〇県からきました。染谷 龍一っす。よろしく。」
今、うっすって言った? それが気になって名前が一瞬入ってこなかった。
その挨拶は、西部に絡んでた時よりもずっと礼儀正しい感じだ。とりあえず友好的にしないと色々と怖そうな人だと思った。
さてお待ちかね。黒髪の正統派くんの自己紹介だ。
「〇〇から来ました。黒澤 蓮です。よろしくお願いしますっ!」
おおっ……華やかな笑顔つきの100点満点の自己紹介だった。
でも、どことなしか初々しいといった印象も受ける。それがまたイイんだよ。
うむ。いいぞ。黒澤くん? 君はかなりイイぞ! イイもの持ってるよ!
というわけで、次は窓際の一番後ろから。
ん? あれ? 次はピンクちゃんじゃね?
ウチが振り向くと、「え? 私?」と言わんばかりな顔を見せてきたので、うんうん頷いた。
すると、勢いよく立ち上がったピンクちゃんは、ガチガチに固まっていた。
みんなの視線を集める中、そのピンクちゃんの顔は……いろんな意味でヤバかった。
緊張してるのは分かる。わかるんだけど……
美人でも、そんな不細工な顔をできるんだと……この時初めて知ったような気がする。
「お~い。白竹? 挨拶しなさい」
やる気のない担任にも催促されるが、ガチガチに固まってしまったピンクちゃんもとい、白竹さんは口をプルプルさせて、とても平常心とは言えなかった。
極度に上がってしまうタイプなのか、次第にざわつくクラスの雰囲気。さらに追い詰められているのが手に取るように分かったのだ。
白竹さんは下を向いてしまう。
だが、両手は拳を作ってて、震えていた。
こりゃダメだ。見ているこっちが滅入ってくる。
ほら、泣きそうになってるじゃないか。
見ていられない。そう思った私は、
「ちょっと失礼」
彼女の左手首を持った。そして……念じる。
【大丈夫。大丈夫だから! 落ち着け。落ち着け】
白竹さんはウチが握っている手に視線を固定させると、
【何も恥ずかしくない。名前を言うだけでいい。あとはよろしくって言えばいいだけ。それで自己紹介は終わる。それだけ言えばいい】
心の中で念じると、この叫びはきっと白竹さんに届いている。
その時、こんな声が白竹さんの後ろから聞こえてきた。
「がんばって。大丈夫」
これは……黒澤くんの声か?
「大丈夫っす。名前だけ言えば終わるっす」
次は金髪さんが白竹さんを励ましていた。
【そうだよ。誰も笑ったりしない。そんなヤツがいたらウチがぶっ飛ばすから】
すると……白竹さんが急に前を向いたと思ったら、
「〇〇県からきますたぁ! きますたぁ! 白竹ぇ。白竹ぇ。白いと書いて竹の竹ですぅ! 白竹。美優でしゅぅ! でしゅぅ! ですぅうう! あ、あ、ああっ、よろしゅく! よろしゅう! よろしゅくぅおねがぁいしますぅうう!」
白竹’(しらたけ)さんの自己紹介にクラス全員が固まる。
はぁはぁと白竹さんの息遣いだけが聞こえる状況の中、ウチは白竹さんのブサイクな顔を見ながら、
「大儀であった。あとは任せよ」
とボソっとつぶやくと、次の瞬間に「拍手っ!」と叫んでいた。
するとクラスのみんなが一斉に拍手を送るのであった。
「おkです! 白竹さん!」
黒澤くんが言うと、
「完璧っす!」
と、金髪さんも笑顔を見せてくるのであった。
「あへ。あへへへっ……」
満更でもない顔の白竹さんを見届けてから、ウチは立ち上がった。
「えっと~南中からきた、三輪、加奈子です。とりあえず、白竹さんに悪いオスが付かないようにボディガードしますんで、よろしくっ!」
「はぁ~? 何言ってんだお前は!」
早速、隣のチンパンジーからクレームを受ける。
「お前みたいなヤツから守るって言ってんだよ!」
キレ顔をお見舞いした瞬間――予期せぬ方角から援軍が現れた。
西部の座ってる椅子に蹴りを入れてる染谷くん。
これにはウチも何て言ったらいいか分からず、引きつり笑いで凌いでいると、これ以上ないタイミングでさおりんが立ち上がった
「南中からきましたぁ坂田沙織ですっ。南中からの人も、お初の方も~よろよろ~よろしくねっ! あと~白竹ちゃんに手を出そうとするイケナイ男子は、狂犬かなっぺの餌食になっちゃうぞ? それでも白竹ちゃんにお話ししたい人はウチらにお話を通してからにしましょうね」
ふははっ。さおりんも分かってるねぇ。
白竹ちゃんをウチらのグループに引き入れようとする気満々だ。
こんなに『守ってほしい』オーラが出てる子を、守ってあげなければ、誰が守るんだって話だよ。
というわけで、このクラスの自己紹介が終わる。
他にもいっぱいいるが、主要のキャラの自己紹介はこんなところか。
※
「ねぇ。黒澤くん! 〇〇って遠くから来たんだね」
「うんうん! 染谷くんも結構遠いところだよね?」
金髪な染谷くんと、黒澤くんが喋ってる。
「そうなんだよ。というわけで知り合い全然居ないからさ、友人になってほしいと思ってるんだけど」
「もちろん! 俺だって一緒だよ。よろしくね! 染谷くん!」
こ、コミュ力が高そうな二人だったが、自己紹介を終えて5分くらいで友達成立した。
自分にはない能力を見せつけられると、素直にすげぇと思ってしまう。
「ねぇ。白竹さんも〇〇って遠い場所だよね? だから俺や黒澤くんと仲良くしない? 遠い場所からやってきたという繋がりでさ」
早速と言っちゃなんだが、まさかの金髪な染谷くんがレッドゾーンへ侵入しました。
だが……これはセーフだ。
3人とも、遠方からこの高校に来たわけで、知り合いがいないのなら、まずは転校してきた者同士で仲良くなるというのは理に適っている。
「三輪さん? いいっすか? 白竹さんに友達申請っす!」
まさか! ウチが金髪さんに頭を下げられただと?
「はいぃい! 全然OKですぅ!」
こう言うしかねぇだろ! それに……なんていうか……
金髪さんからはオス特有の『下心』が全然見えないんだよ。
これは中々レアな現象だぞ。
心を読むことができるウチには目を見ただけで、ある程度の思考を読み取ることができるが……
この男。その下心が見えない。というか、極端に見えないといったほうが正しいのかもしれない。
「俺も申請したいですっ! よろしくお願いします」
く、黒澤くんまで? そんな挙手しないでくださいっ!
「いえいえ。全然いいっすからっ! あの、さっきのは、このチンパンジー……じゃなくて西部に言っただけの、勢いで言っただけで……仕切るつもりなんてないっす……」
ウチがしどろもどろに答えてると、その言い訳をぶった切ってくれたのは、
「よろしゅく! よろすぃく? よろしくですぅうう! ともだい? ともだち。いません! 友達はゼロですぅ。なので友達にぃなりたいです!」
あああっ! もうっ!
白竹ちゃんが喋ってるだけでこっちが心配になってしまう!
でも何だろう……何かおかしい 。
染谷くんにも言えることだが、黒澤くんまで……『男性特有の下心』が見えない。
ウチの千里眼でも読めない。というか黒澤くんは更に見えない。というか1%も下心が混じってない瞳。純粋な笑顔なのだ。
そんで白竹ちゃんはというと……
がっつりメスの顔をちらつかせていた。
うむ。微笑ましい限りである。
こうして、遠方からやってきた、黒澤くん。染谷くん。白竹さんの3人は仲良く初日で友達になりましたとさ。
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