2話
※
別にウチは友達作りに興味がないけど、黒澤くんが推してるので、それなら協力しましょう。
という訳で、陰ながら黒澤くんが有利な立ち位置を構築するのが大事だ。
まぁでも染谷くんと毎回休憩時間に出かけてるので今日のところは見守っておくだけで良さそうだ。
3時間目の休憩時間は白竹ちゃんが席を立つ。
すると阿吽の呼吸でチンパンジーも立ち上がったので、同じく立ち上がった。
「変なマネすんなよ。エテ公が!」
「まぉまあ三輪。そんな警戒しなくてもいいだろ。アホな事をしでかしたら俺らも動くからさ」
常識人の梶谷に言われると、あまり強く言えねぇ。
しょうがないのでヤツの顔を立ててやる。
それに、ウチも白竹さんについていけば良いだけだ。
「ねぇ何処行くの? ちょっと俺とこれからの高校生活を語り合わない?」
何言ってんだこいつは。
すると「はふはふ」言いながら愛想笑いでゆっくりと教室から出た白竹ちゃんは、そのまま隣のクラスを覗き込んでいた。
「魔樹! まき! まーき!」
白竹ちゃんが手を振ってる。誰だろう。
連呼する白竹ちゃんに、ようやく反応したのは
あぁあれは入学式に後ろ姿だけ見かけた銀髪のイケメンだな。おおーショタっぽい可愛い系だ。
教室から出てくるイケメンは、やたら女子に注目されながら、白竹ちゃんの前まで来た。
「あれ? もしかして白竹さんの知り合い?」
チンパンジーが聞いてくれる。お前、ナイスな質問だ。ちょっとは役に立ってくれるぜ。
着いて来たウチとさおりん。そしてまゆちん。急にイケメンと対峙して、驚き戸惑っている
「まーき!」
「なに? 何の用?」
「特に何もありませぬ」
え? 白竹ちゃん? 何もないの?
頭の後ろをポリポリ掻くイケメン。白竹ちゃんに無表情を見せてから、くるっと180度回転して教室に戻ろうとしたが、
「待って。魔樹。こっちのクラスで仲良くしてもらいましゅた。こっちが三輪さん。こっちが坂田さん。こちらが井上さんですぅ。こっちの男の人は、にしゅべくんですぅ」
おっと! 紹介してくれるのは嬉しいけど、チンパンジーは相手しなくてもいいっすよ。
すると魔樹と言われたイケメンさんは急に愛想良くなって、
「そうなんだ。どうか美優と仲良くしてあげてください」
イケメンプラス微笑は中々犯罪だと思う。
「こ、こちらこそ! よろしくお願いしますぅ」
いち早く返事したのはまゆちんだ。おいおい、一撃で舞い上がってるぞ。
「よろしくねー。そして白竹ちゃんに質問っさ。この男の子は、白竹ちゃんの何なのかい?」
「えっと、似てないですけどお、双子の弟という存在なのでし」
「え? そうなのか? てっきり彼氏かと思っちまったぜ。そうかそうか、それなら俺が白竹ちゃんを正々堂々と交際しても問題ないよな?」
長ったらしいセリフは誰の頭にも入らなかったようだ
「うはっ 美男美女の双子さんなり!」
だな。さおりんと同意見だ。ちょっとコレは普通に恵まれた容姿過ぎんだろ。
「魔樹とも、仲良くしてくれると、とても嬉しいですぅ。遠くから来たから友達居ないから、だから」
白竹ちゃんが必死に魔樹くんの間に立って、ウチらに紹介しているのだ。これはウチらの方が役得過ぎるだろう。
「美優はちょっと人見知りなだけで、付き合いにくいかもしれないけど、よろしくね」
白竹ちゃんが人見知りなのは十分分かってる。こんなイケメンにお願いされたら、断る理由は無いだろ。
「は、はぁい。白竹ちゃんとは仲良くさせてもらいますぅ
」
あぁ、まゆちんがちょっとクラッシュした顔になってるだと?
「よろよろ、白竹ちゃんも、魔樹くんだっけ? こっちのクラスはウチら任せてね」
言いたいことを代弁してくれる友達に感謝だ。それにしても、さおりんまでテンパってるのは中々レアだぞ。イケメン恐るべし。
では、ウチはどうなのかというと
基本、こう言う場面では、ウチは無口なんだ。今でもさおりんの後ろに隠れてて、顔だけ出してコクコクと頷くだけだ。
ウチのウイークポイントは、知り合いには態度が大きいのに、初見や男前ではあらかさまに喋れなくなる内弁慶的なキャラなのだ。
黒澤くんに対しても挙動不審なので、分かってくれているとは思うが、コレが普段のウチのデフォルトなのだ
「三輪さんっ! あにょ、魔樹! 後ろにいる彼女が自己紹介の時に助けてもらったのでし」
うおっ! まさかの白竹ちゃんに名出して紹介されただと?
「昨日、美優を助けてもらったんですね。ありがとうございます
ちょっと! これは恥ずかし過ぎる!
「ねぇねぇ。白竹さんは俺に任せてくれ。友達も多いし、色々繋がってるからさ、弟さんも心配しなくていいぜ」
「あーごめんね。 西部ぇ、ちょっと来いよ」
梶谷に連れて行かれるチンパンジー。動物園に帰る時間だな。
その一部始終をみんなで見ていたら、チャイムが鳴る。挨拶を済ませたウチらも教室に戻ろうとすると、一瞬だけ魔樹くんの表情が目に入ってくる。
んー。まぁイケメンにありがちな無表情。まるでウチにそっくりな目の色でウケる。
ウチらには愛想は良かったが、あんまり興味が無さそうな感じではある。
※
「え? 白竹さんに双子の弟さんがいるの?」
次の休憩には染谷くんや黒澤くんにも知れ渡る。ウチと白竹ちゃんが話してるのを聞いてて、染谷くんが会話に入ってきた感じだ。
やっぱタイミングが絶妙だな。染谷くん!
「そうなんですね。白竹さんの弟なら、俺も繋がりたいですね」
打って出る黒澤くん。やっぱこの人も上手いと思う。白竹ちゃんの弟なのだから、友達はいないし、男であるのだから、何も違和感も感じない。
「はひ、はひ、是非ともよろしくお願いしますぅ」
白竹ちゃんも大喜び。そんで黒澤くんも内心喜んでるに違いない!
「白竹ちゃんのボディガードの報酬が大きすぎるござる」
と、さおりん。マジでそれである。
あぁ、白竹ちゃんの前の席にしてくれた神に感謝。
「あにぉ。 三輪しゃん。魔樹には気を使わなくて良きです。魔樹はちょっとおバカな所もあるますが、基本、私と同じくらいバカなので、お気楽にいくと嬉しいです」
私と同じくらいバカ?
何かウチの方がもの凄く心配されてるよね?
いや、いい。いいんだ。
ウチだって基本は、人見知りの喋れないヤツなので、白竹ちゃんもウチの姿を見て気がついて、そう言ってくれたのだろう。
※
と言うわけで放課後。
「じゃあ私、バスケ部見に行くね」
まゆちんや梶谷、その他諸々のヤツらはここから部活を見て回るのだろう。帰宅部である人間はそのまま下校するのだが、
教室の外の廊下で待っているのは魔樹くんだった。
「まーき! 帰るよ! 大丈夫?」
白竹ちゃん? 弟にダイビングで飛びついた!
だが、素早く回避した魔樹くんは、前のめりで倒れそうになる彼女を背中から引っ張って、無事コケずに済んだ。
何か今、すっごいシーンを見たような気がする。
「あっ、もしかして白竹さんの弟さん? 俺、黒澤って言います。よろしくね」
先制攻撃の黒澤くん。
「ども! 隣の席の染谷っす。黒澤くんと同じく遠方から来たんで、白竹さんと仲良くやらせてもらってます」
次に染谷くん。無難で自然、完璧な立ち回りだ。これで黒澤くんも魔樹くんと繋がりが出来た。そう思っていたが、
その魔樹くんなのだが、あらかさまに嫌そうな、そして無表情で……
「待って、まーき。魔樹! おともだち! 紹介、紹介させ、あふっーー!」
こともあろうか、白竹ちゃんの身体を持ち上げる。
持ち上げたのは良いのだが、
何かすごい持ち上げ方と、その持ち方が独特過ぎた。
あの、魔樹くん? 米俵持つように姉を抱えると、一目散に走り出すのであった。
「また明日ですぅ。ばばい!」
その様子はみんなの前でライブ中継され、唖然としている。今のは一体何だったんだ? みんながみんな顔を見合わせている。
「弟さん。何か変わった感じだね」
と、染谷くん。黒澤くんも苦笑い。
その場にいたさおりんもウチを見ながら、
「個性的な運び方だったよね。米俵みたいだったでござる」
「ですよね? 俺も思いました」
と、黒澤くんが同調すると、染谷くんは
「ナチュラルに無視されたのに、不思議と笑えるんだけど」
確かに。白竹ちゃんが全てをかっさらって行った感じだった
「白竹ちゃん。運ばれ慣れてる感じだった」
ウチがボソっと呟くと、
「だはっ! だよね。あんな運ばれかた、されてみたい!」
と,さおりんが言うと、ようやくウチらも動き出した。
※
先に黒澤くんと染谷くんが並んで帰ってる。その後ろ10メートルくらい開けてウチとさおりんが下校している。
「ねぇねぇかなっぺ。第一次イケメン総選挙は誰に入れるかい? 金髪さんと黒髪くんだけだと思ったけど、まさかの白竹ちゃんの弟名乗りあげたね? さぁかなっぺの意見は如何に?
うーむ。投票して願いが叶うならやる意味はあるとは思うんだが、ウチみたいなヤツがらどれほど推しても、相手にされるわけない。なのでどーでもいい。
「かなっぺったら、そんな悲観的なのは聞いてるだけで辛くななってくるでござる。誰がよろしいのか、適当に第一印象をいえばそれでハッピーで候」
じゃあさおりんは? 誰が良き?
「今のところは、ぶっちぎりで黒澤くんだぬ」
一瞬思考が止まるが、すぐに再起動する。
珍しく決断早いな。と、ウチがいうと、
「かなりタイプというか、理想に近いというか、実はかなり気になってるっさ」
思考が再び止まってしまう。ここまで言い切るさおりんなんて初めてかもしれない。
まぁまあ、第一印象だからな。これから変わるかもしれないし、そりゃー黒澤くんはモテるだろうと思っていたので、さおりんに好印象を持たれるのは自然の成り行きだと思った
「なんかさ、偶然なのか分かんないけどさ、目が合うと、ニコって笑ってくれるんだよね? 気のせいかなって思ってるんだけど、それが何回か続くと、意識してしまうよね? アレはちょとダメだと思うんだよ。勘違いしてしまうからね。私だけかな? とかあらぬ妄想が止まらなくなるワケだよ」
むちゃくちゃ楽しそうに語るさおりん。
う~む。コレばかりは何も言えぬ。
だって黒澤くんは、ウチにもそんな顔をするからだ。
そして恐らく……本人はそういうつもりで、そんな顔をしている訳ではなく、ただの笑顔なのだよ。
それを知るのは彼の内面を知るウチだけだろう。
普通の女子なら間違いなく勘違いしてしまうぞ。
※
家に帰ると、自分の部屋に入ったタイミングでLINEが着弾。もちろん黒澤くんである。
《親父に言われたんですけど、今日の晩御飯は三輪さんと一緒に食いに行ってこいと言われたのですが、後で外食しませんか? 華凛と3人で駅の方行きましょ》
いつの間にそんな事になってるの?
一応、オカンに連絡すると、オカン達はオカン達でヨロシク飯を食うという、新婚っぷりを見せつけてくれる。
ん? でも待てよ?
確か、今の時間というのは、夕方なので……
《もしかして、楓蓮さんでご飯ですよね!》
《そうです! もう入れ替わってますよ》
おぉーーそれなら俄然楽勝っす! 全然気にしなくていいヤツだ!
《基本は学校のある平日は蓮です。そうなると楓蓮がどうしても夕方から夜になっちゃいます。もちろんサイクルをずらして逆にする事も出来ますけどね》
楓蓮さんと華凛と3人でお食事会は嬉しすぎる。
でもなぁ、出掛けるのなら、やっぱジャージはマズいのだろうか? 親しき仲にも礼儀ありというが……
《ジャージでいいですか?》
《もちろんです! 楽な格好でいいですし、気を使わなくていいですよ》
こういう所、ほんと助かるんです。
というわけで、白峰姉妹と夜のお食事タイム勃発である。行ってきまーす!




