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第十話


「これは何だ」

 絵麻の帰宅をずっと待ち構えていたのだろう、玄関を開けた途端、廊下のすぐ脇のリビングから出てきた、血走った双眼を悍ましくぎらつかせた父の片手には、最後に登校した日に体育倉庫の奥に隠した、学校指定のリュックサックがあった。

「このクソ忙しい年末の大事な会議中に、俺の携帯に連絡があった。もう一か月半、学校に行ってないんだってな?」

「……」

「大掃除したらこれが体育館の倉庫から出て来たって、担任の女がべそかいて電話してきやがったんだよ、鬱陶しい。……このクソガキが。出来が悪いだけじゃなく、仕事の邪魔までしやがって」

 どしゃ、という音を立て、廊下にリュックサックが放り出される。

「お前、何考えてんだ。バカならバカなりに、出席日数くらい真面目に稼いどけば、そこらの底辺私立に入れてやることくらいは出来たろうによ」

「……」

「おまけに外泊して帰って来やがって。スマホの電源も切りっぱなしで……道理で居場所がわかんねえわけだ。お前を入れる高校と塾決めてきた、こっちの計画、狂わせやがって……親の言うこともろくに聞けねえようなガキが、いっちょ前に遊んでんじゃねえよ」

 酩酊しているのかと疑いたくなるような暴言の数々に、思わず怯みそうになったが、絵麻はいよいよ、

「『親の言うこと』?……へえ、帰って来て一番に言うことがそれ? 子供の心配もしない人間の、何が『親』なの? ふざけないでよ。あたしが何をしようと、あたしの人生なんだから、あたしの自由でしょ。……あたし、自分の行く高校、もう自分で決めてあるから。そっちの見栄で勝手なことばっか言って、マウント取んじゃないよ」

 そう反旗を翻し、肩掛けバッグのストラップをぐっと握って、負けじと睨み返した。


「ああ?……んだとてめえ、養われてる分際で、何様のつもりだ」

 まるで任侠映画の鉄砲玉のような訊き返し方をされたが、絵麻も自分のことを【極道の妻たち】の岩下志麻だと思い込みながら、それを受けて立つ。

「あたしは、通信制高校に行く。あんたたちの世話になんかならないで、バイトして生活しながら勉強する。そこに行って、やりたいことがある。……あんたの言うことなんか、絶対聞かない。これまで素直に従っても、何もいいことなんてなかったからね」

 一年半前に耳を塞いでいた両手を、硬く拳にして握りしめながら、絵麻はスニーカーの脚を踏ん張って、父に向かい、腹の底から怒りをぶちまけた。

「……受験で友達がみんないなくなった。読みたい本も読めなかった。私立じゃみんなに『落ちこぼれ』ってバカにされて、転校したらしたで、根も葉もない変な噂たてられて、学年中から遠巻きにされて、キッショいおっさん教師に目ぇ付けられて、毎日付きまとわれた……! 何が『親』よ!! あたしが苦しんでても、全部見ないふりしてたくせに!!!」

 絵麻は大きく深呼吸すると、そこから先はあらん限りの力を込めて、父に口を挟ませる隙も与えず、一気に畳みかける。

「あんた、自分の娘が、学校で何されたか知らないでしょ? キモすぎて吐くかと思ったよ。あたしのこと、下の名前で馴れ馴れしく呼んできて、毎日スカートの丈がどうとか、タイの結び方が変だとかって、痴漢みたいにお尻や胸触ろうとしてきてさ。授業中も、そいつがじっと横に立って、生ぐっさい息が頭にかかるし、黒板の前からもニヤニヤ笑いながらこっち見てくるし、全然勉強に集中できなかった。それでそのうち、『おさげは引っ張りたくなるね』なんて言って、あたしの髪、いきなり引っ張ったんだよ。……何であたしが、急に髪切ったかも知らなかったでしょ? ねえ?……そうだよね、あんたは、自分の子供にも奥さんにも無関心で、一か月半も学校に行ってなかったの、今まで気が付かなかったような、間抜けで馬鹿な人間なんだもんね。それもそうか。親らしいことなんて何ひとつしなかったうえに、『失敗作』で『お金と時間の無駄』で『社会に出ても使い物にならない』なんて台詞、あんたは自分の娘に言えちゃう、最低野郎なんだから!」


 一瞬、何が起こったか、絵麻の脳は理解を拒んだ。

 ただ、暴風のような何かが自分の頬に派手な音と痛覚を伴って張り付き、身体が吹き飛んだ感覚があった後、カバンごと廊下に転がされ、頭蓋骨と脳をどこかにぶつけた衝撃に声を上げる間もなく、間髪入れず、ごり、と自分の頭が何かに強く圧され、耳が固いものとの間に挟まれて――

「黙れ!! 触られたから何だ、そんなのお前が色気づいてるからだろう!! 頭に栄養行かないバカが、乳とケツばっかでかくなりやがって!! ガキの癖に自意識過剰でセクハラだなんだ騒ぐんじゃねえ!! だから女は使えねえんだよ!!! 俺はお前みたいな能無しの女じゃなくって、俺と同じ男が欲しかったのに、何でお前みたいな出来損ないなんかが生まれてきた!!!」


 頭を父に足蹴にされ、踏みつけられているということに絵麻が気付いたとき、痛さよりも怒りよりも、この男は自分の虚勢と欲望のためなら、たとえ血を分けた相手でも平気で貶め、傷付けることを厭わない――そして、まぎれもなく、この男が自分の『父親』なのだというショックで、その目は見開かれ、そこから先の罵詈雑言を聞くことと記憶することを、彼女の意識は一切拒否した。

 それと同時に、喬がくれた『お守り』――あの金属の塊のことが頭をよぎり、

(……喬くん、……助けて……)

 絵麻は自分が父に殺されてしまう前に、せめて警察でも来てくれないかと願いながら、コートのポケットの中に必死で手を突っ込み、その『お守り』に指先を触れた。


 ふっ、と脳の底から、何かが立ち上ってくるような感覚がする。

 それは暗く、どろりとした、しかし滾るような熱を持った、重く苦しく危険なマグマのような肌触りを持って、絵麻の心と身体の中に混じり合い、底知れぬ安心感をもたらす。

 あまりの出来事に空虚になってしまいそうだった現実と事実のすべての隙間を満たして、確かにそれは絵麻の中で間違いなく、喬の姿を取った。


 操られるように、がし、と両手が足首を掴み、思い切りひねると、父はいともあっけなくバランスを崩して、背中を壁に打ち付けながら倒れ、その痛さに顔を歪めて喚き散らす。

 何も出来ず、ただ二人のやり取りが始まったころから廊下に出てきていた、石像のように表情を変えずにいた母は、頭を壁に強打し、その上で踏まれた娘に駆け寄り、ひざまずいて抱きしめ、ついに夫に対して「なんてことをするの」と噛みついた。

 しかし、そのすべてがどうでもよくなるほどの情報が――喬が、これまでじっと黙って、隠して、そうして秘かに強く願っていたことが、絵麻の中に雪崩れ込んでくる。


 これまで合わなかったいくつもの出来事のつじつまが合い、彼が何者なのかを理解できずとも、その感覚を当たり前のものとして受け入れた絵麻は、

(喬くん、あなたがくれたのは、……これは、『お守り』なんかじゃなかったんだ……)

 全く思い通りにならなくなった手で、ポケットの中のものを取り出し、父の目に触れさせた。


「……お前さ、そうやって、自分に都合悪いこと言われたら逆ギレするとこ、三十年前と、何にも変わってないのな。所詮クズは大人になってもクズ、か」

 豹変した口調と共に、手の中のものを見せながらこぼれる言葉は、絵麻のものではなかった。

「1996年の、大晦日のこと。……よーく覚えてるだろ、嫌になるほど」

 その日付――まだ、その頃には影も形もないはずの娘が発した言葉と、手の中でちらつかされた『お守り』に、父の顔はこわばり、眼球がぎょろぎょろと左右にぶれる。

「その日、……ここから四つ離れた駅の、風俗街にある映画館の、四本立て興行、いちばん最後……ポルノ映画の上映回で、何度も従業員から禁煙だと注意されていたのに、タバコを吸って、周りから客が逃げたのをいいことに、ずっとズボンのチャック開けて、ゴソゴソしてた男がいた。……後ろから三列目の、真ん中の席だったか。暗かったとはいえ、だいぶ堂々と粗相したみたいだね。家で禁止でもさせられてたのかな? 随分派手に、周りの座席と床、汚したんだって? ねえ?」

 娘が発したあられもない単語に、背中の母が今度は息を呑んで、二人を見比べる。

「上映が終わって、片付けに来た従業員……その映画館の館長の映写技師と、散々汚した床や座席のことで、男は口論になった。逃げ出そうとしたけど、映写室の窓から、その騒ぎを見てやってきた親類の男性と、受付を閉めて片付けに来た、館長の妻も加わって抗議されて、男はしぶしぶ、座席の掃除をさせられることになった」

 彼女のものではない記憶と情景が、目の前にありありと浮かび、そこから先に続く言葉を、わずかにためらわせたが、右手の中にある金属の塊――趣味の悪い装飾のついた、充填式のオイルライターが、それを許さなかった。

「……片づけた頃に様子を見に来る、と言って、従業員たちは持ち場に戻った。そうして、掃除用具を持って来ようとした館長の妻が、スクリーンの側の、掃除用具入れに向かった隙に、……男は腹いせに、使用済みのティッシュと座席のクッションに、充填用のオイルをかけてから、持っていたライターで火を点けて、そこから立ち去った」

 背中で「まさか」という声がし、母が身体から手を離して、父を凝視した気配がする。

 絵麻の手の中では、彼女の知らなかった動作をし、熱で歪んだオイルライターの蓋が、忌まわしく軋んだ音を立ててこじ開けられ、二度と閉まらなくなったその内側にある煤けたホイールが、まるで動かないことを確かめているように親指の先で弄ばれている。

「……そのライターが、これ。……見覚えが無いなんて言わせないよ。警察や消防も、証拠を見落とすことはあるんだって、笑っちゃった。……持ってるのが、怖くなったんだよね? このライターは、ロビーのベンチソファのクッションに開いた穴を、ガムテープで補修した隙間に隠されてたよ。だから、瓦礫にまぎれて見つからなかったってわけ。……これ、焼け跡の解体の時に、落ちてるのを隠してたんだ。お前の指紋は、中のパーツにべったりついてる」

 自分ではない――瞬きをしたときに浮かんだ顔と声――喬が喋っている言葉の内容に、絵麻は徐々に耐えられなくなっていく。

「客席の火の手に館長の妻が気が付いたときは、消火器なんかじゃどうにもできないほど、炎は広がって、何もかもが手遅れだった。映画館は、第二次世界大戦の空襲で焼け残って、二十年前に外観だけ手直しした古い建物で、座席はとても燃えやすかった。非常ベルもない。……火は、あっという間に、建物全体に回った。客席に戻って来た館長は、炎の向こうで『助けて』と叫ぶ妻のもとに向かって、……映写室では、館長の息子が、明日一番のフィルムの試写で、徹夜作業をするため残っていて、映写窓から客席で炎に巻かれた両親を見て、助けに行くためにそこを飛び出した。二階の事務所では、その妻が売り上げを計算して、親類の男性はひと仕事終えて、ビールを呷っていた。……三階の住居では……息子夫婦の、高校生だった子供が、映画のコンテを描きながら、そろそろ銭湯に行こうか、なんて思ってたところだった。……あの家の、誰も、誰一人として、まさか、自分たちが今日死ぬだなんて、微塵も考えてなかった……!」


 そこで、絵麻の口から出てきた話は途切れ、記憶に蓋がされる。

 見下ろせば、自分の中から出てきた喬の言葉に、焦点の合わない目で、何か恐ろしいものに裁かれる、力のない生き物のように怯えた男がいた。

 そこに、操り人形の足取りで、絵麻が一歩近づくと、父はヒステリックな叫び声を一度上げ、壊れた玩具のように震えだす。

「このまま一生、逃げ切れると思った?……悪いことは出来ないね、正月からお前のせいで散々なニュースになっただろうし、ご近所さんは、今でもまだあの日のことを覚えてる人は多いよ。……『大晦日、戦前から続いた名画座焼失、焼け跡から一家六人の焼死体』……はは、『焼死体』? 笑わせんな。じいちゃんもばあちゃんも親父もお袋も、従兄の兄ちゃんも、みーんな生きたまま焼かれて、『熱い、苦しい、助けて』って叫びながら、誰が誰だかわからなくなるまで燃えて、骨まで炭になっちゃったんだから」

喋りながら血の気が引いていく絵麻の声音をまとった喬の怒りは、凄まじい怨念と執念をもって、低く廊下に響き続ける。

「……ねえ、あんたさ、何回か現場に戻って来てたよね? 一度なんてさ、夜明け前に来て、立ち入り禁止の柵乗り越えて、うちの敷地の隅から隅まで、これ、探し回ってたよね。……ははは、見つかるわけないじゃん、バーカ。俺が誰にも見えないように、ずーっと隠してたんだから。ねえ、どうだった? 怖かったよねえ?……あの現場の中に、先に誰かが入って、これを見つけて拾ったかも、なんて思うとさ……三十年間、ぜんぜん、生きた心地しなかったでしょ?」


 今、自分がどんな顔をしているのかはわからないが、父の顔からは徐々に正気が失われ、口の端には泡が溜まり、声にならない声が喉奥から漏れ始める。

 それを、ままならない動きで見据える眼球越しに、まるでスクリーンの中の一場面のような心持ちになり、【悪い奴ほどよく眠る】で、三船敏郎が西村晃を追い詰めるシーンを、意識の片隅で思い出しながら、絵麻は喬の言葉を喋り続けた。


「このライター、カスタマイズ品だよね? 俺と同じクラスのヤンキーが、似たようなの持ち歩いて、バイト代でオーダーした一点物だ、って自慢してタバコ吸ってたからさ、よく覚えてんの。やっぱりそう?……そのリアクションからして、そうなんだね?」

 嬲り殺すような声色で、『娘ではない何か』に追い詰められていく父は、次第に目の焦点が合わなくなっていく。

「今さら警察持ってっても、時効になってるんだろうから、これをどうこうしようとは思わないよ。でも、……本当は、周りの人間『みんな』が、あんたのやったことに気づいてて、知ってるけど、見て見ぬふりしてるだけなんじゃないかな? ねえ?」

 その一言で、今しがた絵麻を殴りつけ、足蹴にしたとは思えないほど、目の前の男は怯え、身を縮めて耳を塞ぐ。

 が、絵麻の手はすさまじい力でそれを掴んで引き剥がし、その見苦しいさまをあざ笑うように、先の言葉を獲物の喉笛に喰らいつく獣の如き勢いで、男に向かって捲し立てた。

「お前、あの日、親かなんかの身分証使って、糖尿で目ぇ悪くなったばあちゃん騙して、サラリーマンのフリしてピンク映画観に来た高校生だよな? コートの下、この辺で一番頭のいい私立高校のブレザーだったって、じいちゃんが言ってたよ。入ってきた客の特徴、覚えるのが得意だったからね。ほかに客がいなかったわけじゃないし、お前、相当目立ってたと思うよ? ガキの癖にいきがってタバコ吸って、母さんと従兄の兄ちゃんに何度も注意されて、周りのおっさんたちも迷惑がってたみたいだしなあ。……映写室の窓から、父さんが見てたってよ。お前のみっともない姿。たぶん、どっかですれ違った時にお前のツラ見たら、『あ、こいつ、あの時の高校生だ』って、あの日のこと、すぐに思い出す人、いっぱいいるんじゃないかな?」


(やめて、喬くん、もう嫌だ……!)

 思い通りにならない口が滔々と語り続ける、あまりにも無情で下卑た言葉の羅列に、心が跡形もなく張り裂けて消えてしまいそうになり、絵麻は見えない腕を引いて、怒り狂う喬を止めた。

 その声に応えてくれたのか、喬の気配は絵麻の意識の中に寄り添い、謝り、慰めるように温かく光った後、彼女の心の奥から引きずり出した泥濘を、とどめに投げつけた。


「俺たちを殺しておいて、平然と生きてきたお前の子育てなんて、失敗で万々歳だ。お前みたいな人間のクズの人生が、上手くいってたまるか。自分の娘を殴って、足で踏みつけにして、馬鹿だの不出来だの言えるような奴の人生が、思い通りになるわけがねえんだよ。子どもは親の人形でもおもちゃでも、見栄張るための道具でもない。子育てが失敗したんじゃない、お前の人生が失敗してんだよ。……そもそも、『子育て』なんて偉そうなこと言えるほど、父親らしく向き合って、この子に関わってきたか?……そんなわけないよな。そうだろう?」


 最後の問いかけは、父ではなく自分に向けられたものだ、と思った瞬間、絵麻の中から喬の姿は、透明になって消えた。


 世界の焦点が、ひゅっ、と合い、絵麻は自我を取り戻す。

 リビングの窓から背中越しに、朝八時過ぎの日差しが、レースのカーテンを透かして、冬の彩りで廊下のフローリングと白い壁を照らし、ぼんやりと三人の人間を、暗くその上に描き出す。

 目の前にあるその影の形が、まぎれもなく自分自身のものだということを確認してから、絵麻はあたりを見渡す。

 外から、呑気な鳩の鳴き声が聞こえ、遠くからは救急車のサイレンがかすかに届く。

 踏まれた頭と、ぶたれて腫れた頬の痛さを堪え、切れた口の中の血の味に、彼女は顔をしかめた。


 無言のまま、ゆっくりと目を遣った足元には、ひた隠しにしてきた大罪と恥とを、娘の形をした訳も分からない相手に洗いざらい暴かれ、虚ろに澱んだ眼を忙しなく動かしながら、「どうして」「誰からばれた」「誰が見てたんだ」とだけ繰り返す、みすぼらしい男が転がり落ちている。

 後ろでは、このことを知らなかったのだろう母が、何を言っているのかもわからないほど混乱した日本語で、くずおれて嗚咽を上げている。

 その間で言葉もなく佇む絵麻は、いつもなら透き通って輝くはずの冬の朝が、これほど不快で吐き気を催すものになるとも思わず、もはや自分が何をすればいいのかさえ分からないまま、自分の口から出てきた言葉の数々――喬が語って聞かせた、知らない方が幸せでいられたかもしれない事実に、茫然としていた。


 それでもやっと、自分の思う通りに身体と心が動かせるようになった絵麻は、床に転がった肩掛けカバンを拾い上げ、ポケットにライターを入れると、後退るように二人から遠ざかる。

 そうして、履いたままだったスニーカーの足を玄関タイルに乗せ、口の中の血液混じりの唾液を、ごくり、と飲み込んでから、

「……人殺し!!!」

 父親目掛けて、喉も千切れんばかりに叫び、玄関を飛び出した。


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