新生4兄妹、誕生!
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本っっっ当―――に、ありがとうございます!!!
そうこうしているうちに、神殿参道を下り切ると、人の声が一気に増え、アゴラ北側エリアの門が見えた。
門を行き交う人々。
楽器を抱えた芸人らしき一団や書物を抱えた学生達もいた。
荷車を引く馬。
露店から漂う肉や焼き菓子の香り。
神殿から見下ろした時よりも、街はずっと大きく見えた。
「ここから北アゴラだよ~」
ミュロが前方を指差す。
神官長が、神殿関係者の通行証を作ってくれていたので、テスピアの街にはいつでも出入りできるらしい。こういうところは仕事が早くて尊敬できる。
しかし、他の街に出入りするには、俺が神官長の紹介状を持って行って、その街の神殿に通行証を作ってもらうか、冒険者ギルドで身分証を作ってもらうしかないようだ。戸籍が無いからな。
冒険者ギルドなら、一回作ってしまえば、作った街関係なく、どの街でも出入りできるようなので、作っといた方が良いだろう。……余計なランクとか肩書とか付けられそうな勢いだが、神官長の手紙の内容も含めて上手く交渉してみよう。
他の街に行かなくて済むならそれに越したことは無いが……なにせ何時バイオハザードが起きるか分からないからな……。地理や世界情勢の把握や、隠れ家・潜伏先の目星、街や民性などの情報は、多く集めておくに限る。
しかし、その度に目立っては元も子も無いので、行動にも気をつけないとな。
「御子様!!」
目の前がレオで塞がる。……レオの行動も気を付けさせないとな。
「近い近い。……なんだ」
頭を押し退けながら問うてみる。
「はい、『御子様』呼びだと、すぐ身バレしてしまいますので、なにか呼び方を考えておいた方が良いかと思いまして……」
「ああ、そうだな」
こういう、しっかりしたところは信頼・安心できるんだがな……、
「ご主人様と、マスターと、主城と、ダーリンと、ハニーと、蜜主様と――」
……変態が上回ってしまうのが残念だな。
「バカですかこの犬畜生は!この駄犬――」
「メス豚聖女様は『名無し』で十分―――」
わーわー
……この二人のやり取りも気を付けさせないとな……。
「二人とも、目立つから。言い合いと言う名のコミュニケーションは控えてくれ」
「逆逆w コミュニケーションという名の言い合いだからw」
「……哲学か……」
「ぶはっw !!……痛タタタタ…」
「……申し訳ございません、御子様」
レオが、ミュロの頭をグリグリしながら謝罪をする。
「……申し訳ございません、御子様」
グリグリされたミュロの頭を、ナデナデしながら謝罪するリリー。
「……夫婦とその子供みたいだな」
フッと笑いそうになってしまい、寸前で堪える。
「御子様ーーー!!なんて事を……!!」
「ぶはっ!!凄い顔~~~!!!ww」
「なっ!そんな顔しなくても……本当になんて失礼な犬畜生!!!そもそも私のセリフです!!!」
わーわー
……ああ、結局こうなるんだな……(遠い目)。……もう、目立つ&身バレする未来しか見えない……(死んだ魚の目)。……そして、本当に進まないな。
「そもそも―――」
「だいたい―――」
わーわー
……聳え立つ城壁は立派だな~……(現実逃避)。
……マッピング完了したら、どうにかソロ活動できるようにしよう。そう決意した時、ミュロが、
「実は僕も、街に行くことになった時から、ずっと提案しようと思っていたんだけどね、僕たち全員家族、4兄妹にしちゃえばいいよ~!親が居ないから兄妹だけで冒険者になって稼いでるとか、よくある話だから、僕たちの設定もそうしよう~!」
と、提案してきた。よくある話なのが悲しくもあるな……。
「御子様は長男だから全員『お兄ちゃん』呼びになるから身バレのリスク減るとして、問題はレオニダス様と聖女様だね~。なんて呼ぼうか?僕は『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』だからいいけど」
「御子様!私に名前を――」
「黙りなさい!犬畜生はレオニダスを文字抜けさせて『ス』だけで十分です!」
わーわー
「……逆に呼びづらくないか?」
「レオンとリリスとかは、ありきたりなんだけどね」
「メス豚聖女様は、リリスを略して『ス』で決まりですね」
「なんで偽名をわざわざ略す必要があるんですか!バカですか!」
わーわー
「じゃあ、レオンとリリスでいいんじゃないか?あ、これは名づけになるのか?」
「一時的な呼び名であって、一生使う(与える)名ではないから、大丈夫だよ~。宣誓の誓いとかしないし」
「……宣誓の誓い。レオが近しいこと言ってたな。俺の足にマーキング済みらしい」
「やばっww じゃあ、レオンとリリスにしよう。これなら皆で決めた呼び名になるし」
ようやく呼び名が決まり、通行証を用意する。当然、呼び名を変えたところで、有名人であろう、レオとリリーは通行証で身バレするわけだが、俺はというと……。
「神官見習い:メラニース。……実在するのか?」
「……神官長の遠縁ですね。パラトアイの街に住んでいる一般人なので、神殿とは関係ありませんが、一時的にウチの『神殿の手伝い・見習い』という体で通行証を作ったのでしょう」
「裏工作すごっw」
「なので、このテスピアの街を出入りするだけなら大丈夫です」
なるほど。
「じゃあ、メラニース兄さん……は長いから、ラニス(愛称)兄さんに、レオン兄さん、リリスお姉ちゃん、早く門を潜ろう!」
ほんと、いい加減、街に入ろう。
―――門を潜るにあたり、通行証を見せる。
レオとリリーの通行証を見た門番は一瞬ギョッとした顔をし、啓礼しそうになったり、声を上げそうになるが、レオの威圧とリリーの『しーっ』というジェスチャーで即時にお忍びだと理解する。そして、ミュロを見て、『ああ、付き添いなのかな』とぼんやり思ったのだろう態度になる。が、
フードを目いっぱい深くかぶってる俺を訝し気な表情で見始める。が、
レオの威圧でそれどころではなくなる門番。その隙に通り過ぎ、直後に、
ミュロとリリーで笑顔の『お疲れ様です』のバイバイジェスチャーで癒され、有耶無耶になる。ナイスコンビプレー!!!
こうして無事、街に入ることが出来た。
門を潜り、目の前に広がっていたのは、神殿に似た雰囲気の広場だった。
その周りには、一軒家くらいの石造りの建物が並んでいる。
「ここは、アゴラ(市場)の北側エリアにある、神殿関係者用転移広場。この近くには、神殿勤めしている人達の家族とか、神殿内にある神官用居住部屋じゃなくて実家や自分の借宿から通いたいという人達が住んでるんだよ」
「あの、神殿の門にあった転移陣のようなものは、ここに繋がっているのか」
「はい、此処と、先ほどの門の前です。神殿関係者の通行証を持っている物だけが、この広場に転移できます」
「なるほど」
神殿関係者用転移広場にある石畳の道の先にはさらに広い広場があり、その周囲を白い石造りの建物が囲んでいる。
軒先には本・紙・絵具・筆・見慣れない道具など、いろいろな物が並んでいた。
「本屋か」
「うん、そう!北アゴラは、そういうお店が多いんだよ~!」
なるほど。
芸術。
文化。
教育。
此処に来る途中で説明してくれた通り、並ぶ店や神殿から見えた施設群は伊達ではなかったらしい。
俺は周囲を見回した。
道幅。
建物の配置。
人の流れ。
路地の位置。
視線だけで情報を拾っていく。
完成度が高い脳内マッピングを完成させるため、出来るだけ多く、正確な情報を集めていく。非常時に備えるためでもある。
そして何より―――
知らない街を知るのは単純に面白い。
大通りを歩き、並ぶ店を見渡していると、見たことあるような女性がこちらをガン見していた。
………………。
正確には俺、ではなく、俺達四人全員、を見ている。
いちを、俺だけでなく、レオとリリーも軽く変装はしているのだが……。
「あれ……?……似てる……?」
女性が首を傾げる。
「う~ん?…………」
どうやら、4人のうちの誰か、どこかで見覚えがあるらしい。
「…………」
厄介なことになる前にさっさと進もうと、歩みを早めるが、
「ああ~~~!!」
女性は何かを思い出し、納得したように声をあげた。
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