(平民)シンデレラタイム
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本っっっ当―――に、ありがとうございます!!!
「御子様!こちらです!」
街に行くことが決まり、ひと段落したと思いきや、二人のお茶入れ騒動が始まり、その場を上手く丸めると、今度はレオが満面の笑みで、一式の平民服を抱えて持って来た。
「……これか」
神官長からも、街へ出るなら目立たない格好の方が良いと言われていた。
問題は……
「御子様なら何を着てもお似合いですが、こちらは私が熟考に熟考を重ねて選び抜いた逸品です!」
「……逆に不安になるな」
「大丈夫です!」
……何故だか全然大丈夫だと思えない。が、
一応、服を広げる。
「……」
「……」
「……」
リリーが黙った。
ミュロが口元を緩め、目を逸らした。
「レオ」
「はい!」
「何故、平民服なのに金糸が入っている」
「御子様用だからです!」
平民服とは。
「お気に召さなかったら、こちらをどうぞ!むしろ、こちらが本命で、こちらを着てくれた方が喜びます!私が」
「レオニダス様がw(お前かよw)」
……一応、……服を……広げてみた。
「……」
リリーが固まった。
「……」
ミュロが口元を抑えて笑いを堪えた。
――広げた服は、生地が薄っすら透けていた。
「……リリー、スカーフとかの再利用生地にどうだ?」
「要りません」
「メス豚聖女様には勿体ない代物です!こちらの生地は――」
「私だって犬畜生の変態趣味の代物など――」
わーわー
「誰にも必要とされない代物ww」
それな。
「……コホン、仕方ありません。私が選びます」
―――リリー、参戦!!
「じゃあ、お願いす――」
「メス豚聖女様は黙っていてください!」
「あなたこそ黙っていてください!平民服の知識もセンスも皆無な犬畜生は――」
「失礼な!平民服くらい、分かりますが、平民以下のメス豚聖女様とは違うので、そういう意味での知識は確かに皆無かもしれま―――」
「平民以下は犬畜生の方で―――」
わーわー
……進まない。
「……進まないねw じゃあ、間を取って僕が――」
―――ミュロ、参戦
「子豚は引っ込んでなさい!」
「ミュロ、大丈夫です!私が御子様に似合う服を選びますので!」
「即決拒否w」
―――成らず。
「御子様!これなどどうでしょ―――」
「いいえ!こちらの方が―――」
わーわー
……進まない。(2回目)
「誰に頼んでも進まないなら、自分で適当に選んで着るか……」
目についたものを適当に選んでいく。
その場で着替えても良いんだが、レディ……と変態が居るので、着替えスペースで着替え……ていると、
「御子様!着つけお手伝いしましょうか!?ボタンや留め具など――」
「御黙りなさい!平民服にそんな装飾無いの分かってるでしょう犬畜生!」
「帯止めや帯縛りなど―――」
「男性服にそんなの無いの分かっているでしょう!大人しくしていなさい犬畜生!」
「(常に傍に)居たさ(が必死過ぎ)にワラウww」
……とっとと着替えて出よ―――
「御子様着替え終わりましたか!?」
パーテーションのような仕切りから出た瞬間、視界がレオで埋め尽くされた。『待ってました!!』と言わんばかりの至近距離だ。
「近い近い」
レオの頭を押し返す。押し返されても相変わらずレオは嬉しそうだ。
「着替えたが、変か?」
「…………」
「?」
レオが珍しく押し黙っている。
「…………」
「レオ? ……どうした?」
……まさか、そんなに変だったか?
「御子様」
「なんだ」
「大変です」
「何がだ」
「平民服ですら御子様の尊さが隠せません!!」
「…そうか(スルー)」
……そういえば、そもそもマント羽織るなら、何だって良かったな。
透ける衣装以外は。
「これでいいだろう」
マントを羽織る。
「うーん……」
今度はミュロが唸り出した。
「……ミュロ、どうした?」
「一般人に見えない」
「何故だ」
「オーラ」
「………」
今度は俺がうーん…と唸ってしまう。さすがに街中(人込み)で気配消せるような隠密スキルとか持ってないしな。というか、俺のオーラはどんな感じなんだ?自分じゃ分からないからな。
「……はあ~……」
今度はリリーがため息をついた。
「……リリー?……どうした?」
「……御子様は何を着ても様になってしまいますね(褒め)」
「……どう言う意味でだ?」
「勿論!御子様は―――」
「御子様が抑えている所やモノから滲み出ている(オーラも美貌も)ナニもかもが―――」
「口も頭も慎みなさい犬畜生!」
「淫乱メス豚聖女様こそ存在自体を慎んで―――」
わーわー
……進まない。(3回目)
「ミュロ、案内頼む。いい加減出よう」
「そうだねww このままじゃ夜になっちゃいそうだもんね!……あ、御子様」
ミュロがチラッとわーわーしている二人の方を見て、悪戯を思いついた子供みたいな顔で煽り文句を言い放つ。
「不安なら迷子にならないように、ずっと手を繋いでいてあげるw」
案の条、わーわーが即中断され、凄い勢いでこちらを見て、凄い勢いでこちらに向かってくるレオと、その後に続くリリー。
「この子豚がっ!!!私が繋―――」
「繋がん」
「御子様~~~!!相変わらずの――」
「いい加減に―――」
「ハイハイ、行きますよ~、御子様が待ちくたびれてま~す」
バスガイドさんみたいなジェスチャーをしながら、もう片方の手で、ぐいぐいと俺の手を引いてリードするミュロ。最高か。こういうところは流石だな。
こうして、やっと自室から出られた。……そう、まだ自室だったのだ!!やっっっと、自室から出られた……。長かった……。
泉から神殿に行く時も、迷宮から脱出する時も、席順も部屋割りも、今回の着替えも……とにかく……何もかもが長い!!とにかく長い!!!本当に長かった……。
―――神官住居用と神殿を繋ぐ回廊を抜け、白い列柱が並ぶ中庭を横切る。
途中で、神官達が、遠くから会釈していることに気付く。
最初はレオとリリーに向って会釈し、……俺に会釈する時は、レオをチラチラ見ながら、様子を確認した後に会釈しているようだった。
『御子様がお出かけだ!』
『見ろ、あの御りっぱな……いや、美しすぎるお姿を……!マントを被っていてもあの凛とした立ち居振る舞いや歩行……尊すぎる!』
『ああ……レオニダス様が怖くて近寄れない……』
……なんか遠巻きで見ている神官達が、どんどん増えてきているような……?
サトゥールが『御子様!うぇーい☆』と絡んできそうになった時は、レオが何かをサトゥールに向って投げていて、その勢いでその何かと一緒にサトゥールが吹っ飛んで行った。鬼かな。
神殿の入り口扉を出て、大理石の階段を下りていく。
関係者以外、信者であっても神殿の出入りを禁止している今では、門に進むにつれ、人の気配は減っていく。
こうして、高台にある神殿の門に辿り着いた。その近くには、幾何学模様の石畳になっている場所があった。俗に言う、転移陣みたいな物かな。
「もしかして、街まで転移できるのか?」
「そうだよ~!ひとっ飛びだよ~!」
ミュロが笑いながら聞いてくる。
「御子様、転移でひとっ飛びするのと、地道に神殿参道を歩いて行くのと、どっちがいーい?」
……そうだな。
「参道を歩いて行く方がいいかな」
この神殿は高台にあるから、街の様子を展望できるだろう。しっかり地理や位置関係、施設関連など、多くの情報を得られそうだ。
万が一の備えとして、地理や地図の把握は必須だからな。より正確なマップを頭に叩き込むのにも情報は多い方が良い。それに……
「せっかくだから、景色も楽しまないとな」
「はい!御子様のお望みは何でも叶えますので、何なりとお申し付けください!!
」
……俺が言ったら、本当に手段を択ばず何でもしそうで怖いな。言動には気を付けよう。
「御子様のお楽しみは如何なるお愉しみのナニもかも――」
「まずは何処からどういう順に街を周るのがいいんだ?」
街中ではレオの発言にも気を付けよう。
「参道に繋がってるのは、アゴラ(市場)の北側エリアだからね、最初は、芸術や文化、教育関連の施設を通ることになるよ!」
「知識のエリアとも言われております。本屋など、御子様がお好きそうですね」
「他には、文具店、画材店、手紙代行業者店なんかもあります」
「手紙代行?」
「はい、主に恋文が苦手な殿方が依頼することが多いようです」
……自分で伝えた方が良いと思うのだが。まあ、人それぞれだからな。
「あちらに見えるヘミコン山には、芸術の女神達が住んでいて、自分の芸術が女神達に認められれば加護を得られますので、芸術に携わる方達は、皆一度は山頂を目指します。加護を授かる方は極稀ですので、このテスピアの街、主に北エリア区に滞在し、日々精進しています」
「ああ、だから北側エリアは、知識エリアになったのか。芸術や文化、教育関連の施設があるのもそのためか」
芸術の女神か……。こちらの天宇受売命様とはまた違った感じなんだろうな。
ヘミコン山を眺めながら、少し自分の世界のことを思い出した。あちらは今どうなっているのだろうか……。
「 (……御子様が、吹き抜ける風に髪を靡かせながら、美しい山並みを見ている……姿を狂ったようにスケッチ&念写しているレオ様と、景色そっちのけで御子様に見とれている聖女様ww)」
……ん?ミュロの顔がなんかニヨニヨしている。笑いを堪えている時のほっぺと口元だ。
俺の視線に気づいたミュロが、ニッコリ笑って手を引く。
「さ、御子様、先を急ごう!早く早く~♫」
「この子豚め!またいけしゃあしゃあと――!」
「きゃあ~~~ww」
……ミュロが楽しそうで何よりだ。楽しい内容は分からないが、分からなくていいだろう。なんとなく……。
―――そうこうしているうちに、街の様子が見えて来た。
神殿参道から見下ろした街は美しかった。
中央広場の噴水。
遠くに見える円形劇場。
その近くに商業施設のような建物も並んでいる。
(……さらにその先にある王宮っぽい建物は見なかったことにした。)
南アゴラの市場。
西アゴラの煙。
―――これが、テスピアか。
胸の奥に、ほんの少しだけ期待と高揚が広がった。
こうして、みんなで景色を見ながら、参道を下り、ようやく俺達は、念願の街へと足を踏み入れたのだった。
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