王宮と冒険者ギルドが、蓮をご所望な件
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「……王宮の遣いと、冒険者ギルドの伝書鳩ですが……」
神官長が低く呟くと、食堂の空気がスッと引き締まった。
先ほどまでバナナの皮で華麗にひっくり返っていたナルシッソスすら、わずかに表情を改めている。……まあ、すぐに立ち上がってポーズを決め直したが。
「ミュロ君の予想通り、迷宮踏破について事情聴取や、《《その他諸々》》の話し合いをしたいそうだ……。王宮のほうはおそらく、王様直々のお褒めと褒賞、面倒な叙任式あたりがあるだろうね~……下手したら王女たちとの婚約話とかも……」
「…………」
ああ……これは嫌な予感が的中する未来しかないな……。
「……ハア、めんどくさい……絶対に行きたくない」
俺が素直に顔を覆うと、隣でミュロが「よしよし」と俺の頭をなでてくれる。
神代神社の参拝客のお子さん、ちびっ子たちを思い出し、少し癒やされていると――
「待ちたまえ!!」
先程まで盛大に椅子ごとひっくり返っていた自称ライバル神官が、待ったのポーズをとる。
「本来ならば愛の御子は私だった!つまり招待されるべきは私!!(美ㇱッ☆)」
「じゃあ頼む」
「「「 即答!? 」」」
「任せたまえ!!」
「「「 即答!! 」」」
「身の程を知れと……と言いたいところだが、御子様に厄介ごとが降りかかるリスクは排除するに限る。身代わり御供にでもしましょう。初めて役に立ったな」
……レオ、言い方をもう少しオブラートに包みなさい。
「御子様、いいんですか?大丈夫ですか?」
リリーが心配そうに尋ねて来る。
「いいんだ。叙任式ともなれば、礼儀作法や貴族との対話もあるかもしれない。その後、軽いパーティーでもなんて言われたら尚更だ。下手したら歌や踊りをしなくてはいけない空気になるかもしれない」
「確かに考えられますね」
「てか、絶対そうなるっすね!」
「まあ、そうだろうね~。さすが御子様、リスクマネジメント完璧w」
シィーウェルとサトゥールとミュロも同意した。
「みんな大好き?ナルシッソス?なら、堂々と(我を通し続けながら)王侯貴族達とも対話するだろうし、(勝手に)歌って踊って、披露するだろうし、まさにナルシッソス向けじゃないか?」
「「「 それは違います 」」」
「それは無い」
「ないない(笑)」
「おしいところで斜め上に暴走し始めちゃうキャラそうだからねw」
今度はみんなの同意を得られなかった……。
しかし、神官長が、やれやれといった顔で「……王宮への使者には、神殿を代表してナルシッソスを派遣する旨の返書を出しておこう」と、処理を決定してくれた。
ありがとう神官長。やはり肝心な時は頼りになるな。
そして、もう一つ、「冒険者ギルド」。
「冒険者ギルドの方は―――」
「断る」
「まだ何も言ってない」
「断る」
「まだ読みあげてもいない」
「嫌な予感がする」
「うん、まあ、正解。英雄扱いに近い待遇を受けるかもしれない。」
―――「冒険者ギルド」からは、迷宮の、実質的な世界初の完全踏破を成し遂げ、諸々の問題を解決・解明をしてくれた功績により、ギルドマスター直々のご指名で、
事情聴取と面談を行った後、俺の人格に問題が無ければ、特例中の特例として、特別枠でのギルドカード発行を打診する、とのことだった。
「「「「 ……だろうね(当然ですね) 」」」」
俺以外の全員が、満場一致で頷いた。
いやいやいや。特別枠とか、目立ちすぎるにもほどがある。そんなの絶対に面倒事に巻き込まれる未来しか見えない。俺の目的は、この世界で「期間内目立たず、のんびり、平穏にやり過ごし、現代に帰還する」なのだ。
「……断る。俺はあくまで目立たずひっそりと過ごしたいんだ」
「目立たずひっそりとは?w」
「…………」
「御子様の容姿とハイスペックな能力じゃ目立たない方がおかひぃ……w」
ミュロの頬を軽く摘まんで伸ばす。―――
このやり取りを……レオががなんか凄いがん見してくる。
何か言いたそうな、でも俺がしていることに恐れ多くも口出せないし、見た目がショタっ子のミュロ相手に大人げないことも言えない、でも自分も構ってほしい、など、複雑な表情を浮かべている。
「……ギルドには……『初級者らしく、最低ランクのカードで登録すると伝える」
俺が真剣なまなざしでそう告げると、食堂にいたメンバーは一瞬ポカンとし、そして――
「……ハッ、さすが御子様。S級という栄誉に溺れず、あえて泥臭く下積みから這い上がろうというストイックな美学……!しかし、それではあまりにも―――」
「そうです!御子様、せめてもう少しランクを―――」
「流石に最低ランクF級は無いと思います。せいぜい説得できてもB級あたりだと思いますが……交渉次第ではC級に―――」
レオとリリーとシィーウェルが、ランクについて検討し始め、
「Cから始めた新米冒険者が、いざ依頼をこなしたら周囲が全員ひっくり返る展開(笑)」
「低ランクと見下してた連中をざまあさせる展開ww」
サトゥールとミュロが、今後の展開を予想し始めた。
ナルシッソスは、「では王宮を僕のステージにしてくるよ!(美ㇱッ☆)」と、捨て台詞を吐いて、勢いよく荷造り準備をしに行ったので、既にこの場には居ない。
「……まあ、本人がそれがいいと言うなら、ギルドマスターには私から『本人の強い希望により、まずは最低ランク相当の査定での登録とする』と伝えておこう。……どうせ、最初の依頼で周囲がざわつくことになると思うが……」
神官長がやれやれと言うような、しかし今後の展開を楽しむような表情で、2匹の遣いに返答を返していた。
こうして、王宮の面倒事はナルシッソスに丸投げされ、ギルドのほうは蓮の「ささやかな"お願い”」によって、D級でのスタートにねじ曲げられることになったのだった。
――なお、この後、D級冒険者として登録された蓮が、やはり予想の斜め上に展開していくことや、盛大にやらかす未来が訪れることを、この時の彼はまだ知らない。
……そして新たな出会いとフラグ、予期せぬ再会、も、待っていた―――。
―――だが、その前に。
この後、神殿で、もう一騒動起きるのであった。
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