無事帰還!……したら神殿も大変なことになっていた件
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本っっっ当―――に、ありがとうございます!!!
バアーーーーーーーーーンッッッ
勢いよく扉が開かれた。
「リリー!!!御子様ー!!レオニダスー!無事だったかい!?」
神官長は、幾何学模様を足元に浮かべた。
瞬間――、
神官長と俺達の間に稲妻のような光が走ったと思った時には、神官長がもう俺達の目の前に着いていた。
雷と空間移動の応用か何かだろうか?
アインシュタイン・ローゼン橋を局所的に生成・維持する応用??
しかし、それだと空間(時空の裂け目)トンネルに入る時、自分の体もプラズマ化しないと潮汐力で肉体が破壊される。ただ光速で移動しただけだったとしても、質量が重い人間の体では無理だ。
魔法なら、どいう原理でカバーしているのだろうか?それとも神官長も神の血を継いでいて、人間の人体構造とは違うのだろうか?興味深い。
何にせよ、普通に出来る芸当ではないのだろう。その証拠に他の神官たちは普通に走って来ている。
伝説のナンパ師が‟神官長”に就いているのも納得だ。
「父……神官長!ただいま戻りました」
「……心配をかけたようで、申し訳ない」
「戻りました」
「いいんだよ!無事に戻って来てさえくれれば!!!おかえりみんな~~~!!!」
全員で神官長のハグを避ける。
そして、神官長に続いて、他の神官達も殺到して来た。
「聖女様!ご無事ですか!?」
「御子様ー!!ご無事ですかー!?」
「レオニダス様!お帰りなさいませ!!!」
「聖女様~、お怪我などはしていませんか~?」
「御子様!戻られて良かったです!!」
「レオニダス様!何かお手伝いすることなどありますか!?」
「御子様――」
……この勢いは止まるのか?もみくちゃになるのは回避したい。
そんなことを思っていたら、レオが一歩前に出た。
――――――!!
「「「 ―――!! 」」」
レオが威圧を飛ばし、神官達の動きがピタリと止まる。
「皆さま、お静かに。御子様がビックリしてしまいます。……というか、向止めに近寄るな」
「「「 !! …………は、はい! 」」」
レオの威圧にビックリしたものの、『でも無事でよかった』と、
地面に膝をついて泣き出す者。
神に感謝の祈りを捧げる者。
その場にへたり込む者。
など、様々な形で俺達の帰還を喜んでくれていた。
……思っていた以上に心配されていたらしい。
しかし、気になった部分がある。
「神官長」
俺は周囲を見回した。
「何だい御子様?」
「何かあったのか?」
妙だった。
神官達の目の下には隈。廊下には大量の書類。
なんだか神殿全体が妙に疲弊して見える。
すると神官長が遠い目をした。
「いろいろあったんだよ……」
「?」
「君達が居なくなった後ね」
神官長は肩に手を置いた。
「媚薬の影響が抜けきれず、夜な夜な石像を求めて監視牢の脱走を試みる女性とか」
「…………」
「傷が治ったのに、家に帰そうとすると、すぐ生き倒れて戻ってくる女性とか」
「…………」
「失恋の痛みを筋トレで誤魔化そうと筋肉を鍛え直し始め……たかと思えば、乙女のメンタルケアしに戻って来たり」
「…………」
「合唱の特訓に付き合わされたり」
「…………」
「会心作が浮かんだという度に、ポエムを聞かされ続けたり」
「…………」
「しかも、どこからどう伝わったのか、それらを真似てパンを投げ始める者」
「…………」
「行き倒れる者」
「…………」
「夜な夜な御子様への愛を詩にして神殿へ提出する者」
「…………」
「それを勝手に合唱する者」
「…………」
「止めろと言っても止まらない者」
「…………」
「毎日居た」
「…………」
「何かしら居た」
「…………」
「地獄だった」
「…………」
その時。
「御子様を求める民衆の署名と報告書です」
神官の一人が台車を押して来た。
積み上がる書類。
積み上がる書類。
さらに積み上がる書類。
「全部?」
「全部です」
「いつから?」
「三日ほどです」
「三日で?」
「三日で」
怖い。
「その他にも、御子様被害報告書、リリア被害報告書、レオニダス被害&苦情報告書」
………レオ。何したんだお前……。
「その他にも、迷宮関連の調査報告書とか―――」
!
「…………心配の他に、だいぶ苦労を掛けてしまったようだ。みんな、申し訳なかった。そして、ありがとう」
謝罪と感謝の意を伝えるべく、深く、頭を下げる。
―――ザワッ!!
「御子様!!御子様が頭を下げるなど!!」
「そうですよ!御子様は神よりの使者!敬語も不要、頭も下げるべきでは―――」
「御子様が頭を下げたなら、我々は土下座しなくては―――」
「いや、不要な土下座はしなくていい。俺は、挨拶と謝罪と感謝は、人としての基本であって、身分は関係ないと思ってる。上に立つ立場なら尚更、礼節と尊敬の念を持たれる生き方を心掛けなければ、簡単に人は離れる」
「「「 !! 」」」
―――ザワッ!!
「み、御子様ーーー!!!なんとご高尚な……御子様尊いーーー!!!」
「「「 御子様尊いーーー!!! 」」」
!?
俺の心がザワっとした。デジャブ!?何かの宗教団体かここは。……ああ、宗教団体(愛の神殿)だった。いや、おかしいだろ!話を変えよう!
「迷宮関連の調査報告書などあげていたが、必要なら、俺からも提出するが?……実際現場を実体験して来たからな」
迷宮での事を思い出して少しげんなりした気分になったが、
「是非!是非とも!!」
「詳細を!事細やかに!!」
「御子様の武勇伝をお聞かせください!!」
!?
神官長をはじめ、他の神官達全員が凄い勢いで食いついた。
何から話すか、どうするか考えようとしたところで、
「神官長ウェ~イ!御子様ちぃ~っす☆聖女様、レオ様、お帰り~っす☆」
「……サトゥール、レオニダスの視線だけで殺されそうだぞお前。愛称呼びの許可貰ってないだろ」
「あ、そうだった!バレないように居ないところだけでレオ様呼びしてたんだった!てへぺろ☆」
「また門前まで飛ばされるぞ」
チャラそうな神官と、真面目そうな神官が入って来た。
「お前はこんな時まで軽いな……」
はあ…、っと呆れながらため息をつく神官長。
「……ああ、事後処理頼んだ時に居た」
あの時のチャラそうな神官。
「!覚えててくれたんすか!?俺そんなに印象に残りますか!?あ、俺サトゥールって言います!」
「……ああ」
……ひときわ目立ってチャラいからな。ミュロのノリが普通に見える。
「あ、そうだ、神官長」
リリーとミュロに目配せをして、紹介の流れを作る。
二人も理解したのか、俺の所に来た。
「神官長、この子は、父親が冒険者だったようで、愛の迷宮まで探しに来てしまったところ、私たちと行き会い、保護しました。その後、冒険者である父親から貰ったアイテムを貸してくれて、私たちを助けてくれました。もう身寄りが居ないとのことなので、私の専属従者として、預かろうと思います。許可いただけますか?」
……俺と神官長が話してる時や、神官達が"御子様”騒ぎしている時に、二人で打ち合わせしていたのかもしれないな。ミュロは、新しく人生をやり直したいようだったから、このまま見た目通りの年齢から再スタートする判断をしたんだろう。
現人神の説明とかしたら、なんか大事になりそうだしな。
「……ああ、許可しよう。……後で詳しい経緯を教えておくれ」
「……はい」
「はい」
……う~ん、流石神官長。何かに気付いて、何かを感じ取っているような、そんな感じだ。やはり"神官長”は伊達じゃない。……元伝説のナンパ師だけど。あ、ナンパしていろいろな人間を見て来た経験があるからか。……"伝説のナンパ師”も伊達じゃない。
「とりあえず、飯食いながらにしましょう~!用意できたんで☆」
「はい、それを知らせに来ました。……申し遅れました、私はシィーウェルです。無事の生還、おめでとうございます」
「そうだな、そうしよう!皆の者!今日は宴だーーー!!」
わあああああああああ
こうして御子様ご一行慰労会と言う名の、慰労会なのに逆に疲れてしまう宴会と、
―――新たなフラグ
が、始まるのであった。
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