迷惑な求愛行為に、ついに蓮が覚醒した件
今後の勉強のために、ご意見や感想を頂けると大変助かります!
ぬおおおおおおおおおおおお!!!
「?」
なんか遠くから雄叫びの様なものが聞こえる。・・・またも嫌な予感。多すぎないか?次から次へと、ペース早すぎだろう。まだ泉から出たばかりで、神殿にすら着いていないのに。
ドドドドドドドドドドドド
「・・・一応、念のため聞くが、これは地震か?」
「いえ、御子様。これは『筋肉バカの地響き』。暑苦しい筋肉の塊が時速100キロで御子様に向かって来ております」
「・・・そうか」
筋肉バカの暑苦しい筋肉の塊が、俺に向かって来ているのか、、、。
「せいやあああああああ!」
バキバキバキバキバキ
「…………」
土煙を巻き上げながら、生け垣を突き破っての暑苦しいご登場。
筋肉バカの暑苦しい筋肉の塊によって、生垣の木々が消し飛んだ。
あのレオが警戒するだけあって、纏っている神の血のプレッシャー(オーラ)は本物だ。全身から立ち上る凄まじい熱気と、神格の血がもたらす重圧が、周囲の空気をビリビリと振動させていた。
―――が、しかし、この世界の人達はもっと植物を大切にした方が良いと思う。
「見つけたぞ御子!俺はガルヴァンドラだ!俺と勝負しろ!」
「……ご指名を受けてしまった」
「! 脳みそが行方不明の肉塊の分際で御子様をご指名とは!!御子様は私の永久指名権で既に永久的に手一杯です!」
永久指名権は永久放棄することにする。
「俺は勝負するまで指名し続けるぞ!」
……確かにこの手のタイプはしつこそうだ。
「……ふぅ。……何の勝負だ?言っておくが、勝負は1度切りだ」
「いいだろう!勝負は、俺のこの『大胸筋のピクピク』に合わせて、お前が『ときめきのリズム』を刻めるかどうかだ!」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「脳みそが行方不明ですから」
「(……この方、中身は乙メンなのかしら……)」
……要は自慢の筋肉に俺がときめくかってことか?ときめくわけない。
「俺が勝ったら御子は俺のもの!御子が勝ったら俺は御子のものだ!」
「俺にデメリットしかないんだが……どっちに転んでもお前が憑いてくるとか罰ゲ――」
「まずは、パンプアップ120%ーーー!」
相手が勝手に盛り上がってしまった。いろんな意味で。
「「「 ………… 」」」
――― しーーーん ―――
全員しかと『大胸筋のピクピク』を見せつけられている。
一体何の時間なんだろうかこれは。
「どうだ御子!!」
いや、どうだと言われても。特に思うことも、感じるものも何も無いが。
一応……観察する。
意識を集中させ、視線を男の肉塊へと滑らせる。解剖学的構造を元に、骨格をベースとして、骨のどこからどこへ筋肉が付いているか、部位を動かした際、収縮時にはどのように膨らむか。筋肉の連動や溝、メリハリなどを細部まで分析していく。
「…ご自慢の大胸筋は左右で2㎝違う。前鋸筋や外腹斜筋の付き方にもムラがある。四頭筋のカットも甘い。右の広背筋には、あせもがある。筋肉が未完成品なうえ不衛生。これは筋肉自慢にとって恥でしかない」
「な……んだと!?俺の黄金マッスルが……恥でしかない……だと!?」
「筋肉を語る前に人体の仕組みと構造、栄養学、諸々の知識を身に着けるんだな。……あ、脳みそが行方不明なんだったか」
「はい、失踪しております」
「……見つかるといいな、脳みそ」
レオと締めくくり、これで終いになるかと思いきや。筋肉ダルマが再び闘志を燃やし出した。
「ぐっ、まだだ!俺のこの大胸筋の鼓動を聞けー!このリズムに合わせて御子の鼓動が『恋のスキップ』を刻んだら俺の勝利だあー!」
そんなの刻むわけない。
「『愛の大胸筋マッスルドラミング』ーーー!!」
筋肉ダルマがポージングと共に衝撃波を打ち放つ。
「うおおおおおおおおおおお!」
ドコドコドコドコドコドコ
筋肉ダルマが筋肉ゴリラとなり、自分の分厚い胸板を激しく打ち鳴らすたび、重低音が大気を揺らし、ドラミングの振動と衝撃波も相まって、石畳には蜘蛛の巣状の亀裂が走り、美しく咲き誇っていた花々の花弁が、悲鳴を上げるように飛び散っていく。美しい庭園が甚大な被害を受け、崩壊していく。
迷惑どころの話ではない。これはもはや、一人で引き起こしている災害、いやテロだ。
耳を塞ぎながらリリーを背に隠す。そんな俺をレオが庇っている。レオは大丈夫なんだろうか。
この迷惑行為を止めさせるには打って出るしかないか。封印された体で何を何処まで出来るか、自分を探りながらになるので、厳しい戦いになるかもしれない。
「どうだ御子ー!」
どうだと言われても。
「迷惑でしかない(ウンザリ顔)」
「なっ・・・!」
「周りを見ろ。お前がしていることはただの〔公共物破壊〕と〔テロ行為〕だ」
「て、てろ・・・!?俺はただ、御子への情熱を・・・」
「(……傷ついた乙女の顔……)」
すっかり満身創痍となって放心してしまった筋肉ダルマ。メンタル豆腐か。
「…………」
……ところで、この変態従者、俺を庇った時の状態をずっとキープしたまんまなんだが。
「……レオ」
「……はああ~~~極上の幸せ~~~」
俺をガッチリホールドしたままスリスリしている。
……そして普通に匂いを嗅いでいる。やめろ。
「なっ!御子様から離れなさい!この犬畜生!!」
リリーが俺の腕を掴んで引き離そうとしたが、ひょいっと俺を持ち上げたまま体を反転させてリリーの腕を躱す。そしてリリーに見せびらかすようにスリスリしている。
「くうぅぅぅ……!!」
悔しそうに睨むリリーにドヤ顔を見せるレオ。
「・・・・・・」
俺も、身を挺して庇ってくれてたレオに、あまり強くも言えない。。。褒美を与えているということで、あと1分くらいは大人しくしていてやることにする。1分経ったら足払いだ。
ドガアアアアアアン
「!?」
足払いするより先に、筋肉ゴリラが地面に足を踏み込んだ。
「……イチャイチャ……するなーーーーーー!!!」
「!」
ドドドドドドド
筋肉ゴリラが、可愛さ余って憎さ百倍といった感じで向かって来た。
心外だ。イチャイチャなどしていない。
「ぬおおお! 御子よ、その従者とイチャつく暇があるなら、俺の愛をその身で受け止めろぉぉ!」
イチャイチャなどしていないし、筋肉ゴリラの愛も要らない。
「…チッ…御子様との至福のイチャイチャ時間を……」
「!」
今舌打ちした……。しかも殺意の籠った目を筋肉ゴリラに向けている。殺してしまいそうな勢いだ。そして大事な事なのでもう一度言う。イチャイチャなどしていない!
レオが俺を解放し、筋肉ゴリラに向って歩き出そうとしたところに、俺が待ったをかける。
「御子様?」
「俺が行く」
庇われっぱなしのままなのも男として情けないし、やる時はやる姿勢も見せないと御子としての示しも付かないからな。ご指名も受けたことだし。
心配そうに見つめているレオを通り過ぎ、前に出て脳筋ゴリラを迎え撃つ。
「(御子様の精錬された氣を見るに、確かな実力者だが、、、相手は神と人間の間に生まれた神の血を引く子孫の末裔……。果たして御子様はご無事でいられるだろうか……。いざとなったら私が…!)」
――しかし、レオの心配とは反対に、蓮の氣はどんどん研ぎ澄まされていく。
「! これは……」
蓮の氣が、周りの空気を一瞬で変えた。
「(……なっ、氣が消えた!? いや、違う!これは御子様の……!)」
レオが目を見開く。
――周囲の空気が、筋肉ゴリラの放つ暴風によって波打つ中、蓮の周囲だけは、まるで深海のように奇妙な静寂に包まれていた。
封印された肉体。削ぎ落とされた氣やオーラ。
だが、幼少期から己の肉体と技の理合を極限まで研ぎ澄ませてきた男にとって、そんなハンデは「言い訳」にもならない。――
迫りくる筋肉ゴリラの巨体を前に、蓮はスッと息を吐き、静かに構えた。
「……お前の求愛(迷惑行為)に、返事をしよう(物理)」
読んでいただき、ありがとうございます!この狂った世界で懸命に頑張る主人公(蓮)を、是非応援してあげてください(笑)。主人公(蓮)の今後の行方が気になる方は是非ブックマークを!(笑) 今後の蓮の武術スキルも少しずつ出てくるので、楽しみにしていてください。次回は聖女様と、変態従者のこれまでの関係性にもご注目ください。




