行き倒れ女を回避したら、ホラーになった件「中庭に湧く行き倒れ女の怪」
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何度も読み返してくださっている皆様、本っっっ当ーーーに、ありがとうございます!!!
今後の勉強のために、ご意見や感想を頂けると大変助かります!
何事も無かったように神殿に向かって庭を歩いていると、一人の女性が道端に倒れていた。・・・・・嫌な予感しかしない。
―――― 行き倒れ女 ―――――
来た!御子様だわ!御子様のハートを射止めれば、私もシンデレラ……!
悲劇のヒロインは愛される……!しかもヒロインはこの私!!
私を見て御子様が恋に落ちないはずないわ!!私は誰からも愛される特別な人間なんだから!これで御子様も私の虜ね♡
―――――――――――――――――
「あ…」
気付いたリリーが心配して駆け寄ろうとするのに待ったをかけた。
「御子様?」
「大丈夫、あれは重病人ではなく、……ただ寝ている人だ」
「ただ寝ている人…ですか」
「御子様、あの女の呼吸と意識(氣)は安定しております。おそらく狸寝入りかと」
やはり予感は的中か。というよりこの距離でよくそんなこと分かるな。
「リリー、迂回できるか?」
「では、こちらのロードンのエリアへ行きましょう。棘にお気を付けください」
ロードンエリアは、バラ園みたいになっていた。
「御子様、迷子にならないように私が御子様のお手を――」
「断る」
「ああ~体の奥から最高に震えます~!」
「………(スルー)」
「………」
リリーが何言ってんだコイツみたいな顔をしているのが面白い。
「!」
レオとのやり取りを何も無かったように、神殿に向って庭を歩いていると、一人の女性が道端に倒れていた。……デジャブかな。
「あ、また女性が倒れてる…」
見たところ先程と同じ女性だ。…ココは時空か空間の歪みでもあるのか。
…この短時間に別の道へ先回りして倒れる、その情熱を、もっと別の何かに向ければ良いと思うのだが。
「リリー、迂回できるか?」
「では、こちらの小道へ行きましょう。棘にお気を付けください」
「御子様、迷子にならないように私が御子様のお手を――」
「断る」
「ああ~体の奥から最高に震えます~!」
「………(スルー)」
「………(何言ってんだコイツみたいな顔)」
………デジャブかな。どうやら変態にも時空か空間の歪みがあるらしい。
「花の良い香りがするな」
「私からですか!?」
「そんなわけないでしょう、犬畜生が厚かましい!」
この聖女様すごいな。でもこの裏表が無い感じが安心できる。あ、これもある意味デジャブかな(笑)。
そんなことを思いながら歩いていると、一人の女性が道端に倒れていた。
「………もうこれはちょっとしたホラーだろ。この庭は事故物件か何かなのか?」
「除霊しますか?(物理)」
「塩も撒いといてくれ」
「承知いたしました。二度と湧いて出て来られぬよう丁重かつ厳重に埋めてまいります」
「レオが犯罪者にならない程度にな」
「御子様!!私のことを思っ——」
「違う」
「はあ~~~体の芯から震えます~~~!」
レオが満足そうな顔をした後、スッと無表情になり、足早に、行き倒れ風の女性の元に向かう。
「(ヒッ………!?)」
勢いよく起き上がって逃げ出す、行き倒れを装っていた女性。
「御子様との時間をゼプト秒たりとも無駄にしたくないので、大人しく大地と一体化してください」
「ひいい!」
早い!韋駄天のごとく走り出した、(元)行き倒れ演出女性。
ヒュッ! ガッ
しかし、レオの投擲武器が足元の地面に刺さり、女性はその武器につまずく。
この速さとスキルの精度……やっぱり常人じゃない。
「あっ!………きゃああ!」
(元)行き倒れ演出女性は、白いロードンの茂みに倒れ込み、棘に絡まりまくって悲鳴を上げた。
「……うぅぅ……」
涙と血を滲ませ、唸りながら、こちらを上目遣いで見ている。
本人的には同情を誘っているのかもしれないが……これは……。
現役ホラー演出女性にジョブチェンジだ。
血で染まった白いロードンの花々に、所々血痕が付いた石畳。
……名ホラーシーン。
「……タス…ケテ……」
……ホラー迫真の名演技。
それはもう完全にヒロインの怪我とかじゃなくて、ホラー映画の序盤で退場する役のそれだ。
「御子様に救済を求めるとは厚かましい!!」
殺人現場のような場所で、厚かましい変態が血まみれで助けを求めているレディに厚かましいと糾弾している。
流石に可哀想かと思い、女性を観察する。
「…………」
俺の観察眼と、これまでの俺に言い寄って来た人達を撃退し続けてきた経験則に基づくタイプ別データを照らし合わせ、この人間の本質を弾き出す。
◎人間鑑定眼◎
【対象:夢見るシンデレラ(仮)】
【属性:あざとい、自己特別視】
【狙い:悲劇のヒロインからのシンデレラストーリー狙い】
【弱点:無視、および容赦ない正論】
「…………」
「……御子様、いかがなさいましょう?」
リリーも、女性が心配になったのだろう。血を滲ませ、棘の茎に絡まって身動き取れない状態だろうからな。
……まあ、周りの茎を全て切り落とせば手っ取り早く助けられるが、
この手のタイプは、俺に助けられることそのものを目的にしているからな。
ここで助ければ勘違いが強化される。
「…大丈夫、見た目ほど傷は深くなさそうだ。切り口は痛いだろうけど、しっかり四肢も動かせているし、まだ余裕がありそうだから放っておいても大丈夫だ」
「そうなんですね……しかし…」
健全で善良な心を持った女性なら俺も助けるが…
「この手のタイプは【自惚れ】と【勘違い】が強いから、ここで助けたりしたら『自分は特別なんだ』と思い違いを悪化させてしまう。致命傷でもない限りは助けない方がお互いの為だ」
「……わかりました}
それに……。
「……たぶんだが、瞳の奥に理知的な部分もあるように見える。才女の片鱗だな。【自惚れ】が【慢心】に繋がっているうちは宝の持ち腐れだけどな。相手をハメる打算(シンデレラ狙い)ではなく、自分自身の人生を良い方向に変えるために、その力をってほしいものだな」
「そうなんですね!(……きっと御子様は、どんなお相手でも、きちんと‟本質”を見て、接しているのですね……!)」
そんな話をしていたら、レオが、血を滲ませ傷だらけになっている現役ホラー演出女性に向って、塩を惜しみなくふんだんに傷口に向って勢い良く撒いていた。鬼かな。
「きゃあああああ!!痛いイタイ滲みるうううーーー!!」
もう女性の表情が地獄絵図みたいになっている。
いや、確かに俺も塩を撒いておけとは言ったけど、こんな傷に塩を塗り付けるみたいな状況を想定して言ったわけではない。
「犬畜生が鬼畜生に……!」
「御子様の聖域を穢す者には、神も悪魔もありません!二度と近づく気にならないように、徹底的に除霊(物理)しておかなくては!!」
そう言いながら塩を顔にも撒き投げている。血も涙も容赦も無い。
「レオ、それくらいで――」
止めてやれと、言いかけた時、僅かに女性の目の色が変わり、口角が少し上がった【あざとさ】を見逃さなかった。やはりこの手のタイプは同情などしてはいけないな。ここでしっかり反省させた方が良い。
「もう塩撒きじゃなくて、消毒液にしてやれ。……ちょっと滲みるやつ」
「承知いたしました」
「御子様!?」
「『御子様が助けてくれる!やっぱり私は他の女性と違って御子様の気を惹ける特別な存在なんだわ!』とか思ってる顔してたから」
「!」
現役ホラー演出女性が、図星を突かれた顔をした。
「・・・どうやら御子様がおっしゃった通りのようですね。さすがです」
「……【あざとさ】は、若いうちは確かに【処世術】として武器になるだろうが、歳を取ってからは【厚かましいイタイ奴】か、【計算高い小賢しい奴】になってしまうぞ。他人を利用するのを止めて、自分を磨いて伸ばした方がよっぽど”特別”で‟魅力的”になる」
「!」
ハッとした顔をした現役ホラー演出女性。
しかし次の瞬間――
「キサマ如きが御子様の気を惹けわけあるかこの羽虫めー!」
ビシャーン!
「きゃああああ滲みるーーー!!!」
レオに消毒液(少し滲みるやつ)を浴びせられた。
バシャーン! ザパーン!
「沁みるシミルー!しかも地味にチクチク痛いぃいいーーー!!!」
レオは何処から何を取り出しているのか、デカいボトルを取り出しては蓋を開けて浴びせ、取り出しては蓋を開けて浴びせ、を繰り返している。良い子は絶対にマネをしてはいけない。容量・用法を守り、正しくお使いください。
「除霊(物理)と駆除、終了いたしました」
女性は気絶していた。
「……女性がああなってしまったのは可哀そうだが、自業自得なところもあるので仕方ない。世界は自分を中心に回っているのではないことを、きっちり学んでもらおう」
……まあ、死ぬほどじゃないし、このまま放っておいても、衛兵や神官達が通るから大丈夫だとは思うが……。
「……回復術みたいなのはあるのか?」
「はい!傷口が悪化するといけないので、処置しておきますね」
リリーが何かを唱えると、現役ホラー演出女性の体が薄っすら光った。回復魔法とかヒールみたいなやつかな?リリーは凄いな。まともで優しい性格も、能力も、聖女様らしい。これまでの女性も見習ってもらいたい。
ちょうど、壊れた東屋の瓦礫を運んでいる最中の神官達が通りかかったので、事情を説明し、後を任せた。
……それにしても、誰も彼もがここまでなりふり構わず『恋』に執着するとは……
説明がつかない異常さだ。この世界の『愛の呪縛』の根は、思っている以上に深いのかもしれない……。原因が分かれば…或いは……。
そんなことを考えていると、レオが後ろを振り返る。
「……やはり、御子様の今後の為にも、また湧いて出ないように、きっちり埋めた方が――」
「やめてあげなさい。……大丈夫、改心するだろう」
そう信じて、このまま神殿に向かおう。(塩対応で実質の塩対応)
「行くか」
何事も無かったように再び神殿に向かって庭を歩いていると、
「ぬおおおおおおおおおおおお!!!」
ドドドドドドドドドドドド
雄叫びと地鳴りが聞こえてきた。レオが眉を顰める。
どうやら声の主は、神と人間のハーフの子孫、しかも神の血を色濃く継いでいる男らしい。レオが珍しくぼやく。
「……やっかいな……」
読んでいただき、ありがとうございます!この狂った世界で懸命に頑張る主人公(蓮)を、是非応援してあげてください(笑)。主人公(蓮)の今後の行方が気になる方は是非ブックマークを!(笑) 今後の蓮の武術スキルも少しずつ出てくるので、楽しみにしていてください。




