天界の炬燵で、日本の神々による因果応報鑑賞会③
――『第三試験、〔愛のティー・タイム♡〕二人ノ愛ノ、ヒト時ヲ、オ過ゴシクダサイ♡』
「おお、これか。どれどれ、あいつはナプキンをスタンバっている様だが……(笑)」
――『ブフオオオォォォーーー!!!』
鼻から暴風のような鼻息がテーブルを襲い、
爆風排出口直下の「彼女」のカップ内のお茶は、花火の様に打ちあがり、
水滴となって空中に散った。
――『!』
ビシャァッ バシャッ
エイローシスの顔面に直撃する。
「顔面直撃~~~ww ナイスな絵ズラ、いただきました~!(笑)」
「……蓮は予め、テーブル周りを観察し、キャンドルやナプキンの僅かな変化を見逃さず、前兆とタイミングを掴んでいたのです。ただ、見様見真似でナプキンをスタンバっていた貴方とは、訳が違うのですよ、エイローシス」
「……神代の子は“観察して、理解して、最適解を選ぶ”。 エイローシスとは……真逆だな」
――『! 熱っつ!汚っ!ナプキン!水差し!』
しかし、手を伸ばした先は自分のカップで――
ガシャンッ
――『熱っつ!!』
思わず手を払ってしまた。――ら、
カップが巨躯のギミックの顔面に飛んでいき、
ゴッ
顔面に直撃した。
――『……あっ』
『……ブフォォォォォーーー!!!』
ガシャンッ ガシャ ガシャ ガシャンッ
激怒した巨躯のギミックが、テーブルを持ち上げ、
バゴーーーンッ
――『ぎゃあああぁぁぁ』
机ごとエイローシスを叩き飛ばした。
ドゴーンッ
頭を打ちつけられ、壁に叩きつけられたエイローシス。
「ははははははは」
「おいおい、もっと他にやりようがあったろうよ、なんだこの不甲斐なさは」
「……良い絵ズラ(記録)にはなった」
――『……うぅ……こんなの……無理ゲー……』
「はんっ、ウチの子はその無理ゲーを、お前のせいでやらされて、見事全問満点クリアを叩き出したっつーの!」
――『防ゲタ、ハズ、デス♡』
「追い打ち良いね!w」
『……クソゲー……ガクッ』
エイローシスの視界は、またも暗転した。
「その自分で蒔いたクソを、存分に味わうといい」
―――『海ルートニ、入リマス♡』
ザザーーーン……――――
――『愛ノ追イカケッコ〔浜辺で彼女を捕まえて♡〕開始シマス♡』
ズダダダダダダダダ
――『……………』
ついに巨躯のギミックは見えなくなってしまった。
――『……え?……何かしなくちゃいけなかった?……確かに御子も走って追いかけて行ったけど……あ、もしかして、何か意図的に走ってた……とか……?』
「はは、……ああ、勿論、意図的に走ってたぜ」
「……相手の地面(沈み込みの有無)、波打ち際までの距離や寄せる波の間隔を観察し、更に、砂地の摩擦係数と、あの巨躯の質量による沈み込みの距離などを計算していた」
「そのうえで、追いかける振りして、誘導してたんだよね~」
「「「 流石、(うちの子) (ウチの子)
(神代の子) (蓮) 」」」
――『愛ノ追イカケッコ〔浜辺で彼女を捕まえて♡〕、失敗 デス♡ 』
巨躯のギミックが、物凄い勢いで戻って来て、『なんで追い駆けて来なかったのよおー!』と言うような感じで、エイローシスの顔面に、愛の拳を叩き込み、腹パンで海の家のビーチパラソルまで殴り飛ばした。
ガシャーン
「あはは、そりゃ「彼女」も怒るよね~!あはは」
「……まるでコントだな」
「神様辞めて、エンターテイナーになった方が向いてるんじゃねーか?(笑)」
そんな話をしていると、今度は雄牛のギミックに絡まれるエイローシス。
――『〔乙女を護って♡〕イベント、開始、デス♡』
すると、エイローシスは、キリっとした顔し、またも蓮の真似をする。
――『……ギミックにしては関節部分が柔らかいな。良くできてる。接合部分とかどういう造りになっているのか見てみたい。解体して見てみるか?』
「……おい、それは、ウチの子の物真似か?」
「非常に不愉快じゃなあ~……」
「……いい加減、神代の子にはなれないと学べばいいのに」
――『……サシの入り方が雑そうだな(キリっとした顔マネ込み)』
『なんだとテメー!失礼なこと言いやがって!!テメーなんて額に矢なんか生やして、ご機嫌な頭してんじゃねーか!』
「ぶはっ(笑)」
「ははは!違いねえ!(笑) 実際頭の中身もご機嫌な頭だからな!ははは!」
暴力反対~~~!!と、一目散に逃げ出すエイローシス。
「おいおい、乙女置いて一目散に逃げやがったぞ」
「……どこまでヘタレなんじゃ……」
――『〔乙女を護って♡〕イベント、失敗デス♡』
怒り狂った巨躯の「彼女」が、『彼女を置いて逃げやがってーーー!!!』とばかりに、近くにあったスイカを、エイローシスに向って、物凄い勢いで投げつける。
ゴシャッ
――『ぎゃっ』
脳天直撃を受けて転ぶエイローシス。
「そりゃそうなるよね~ww」
「彼女を置いて逃げる彼氏なんて、最低ですからね」
「……まあ、エイローシスも、偽物のギミックじゃなくて、本物だったら流石に助けようと頑張るだろうが……「彼女」が偽物でも、もう少し気概を見せても良かろうに……」
――『……うう~……もお嫌だ……てか、御子はどうやってクリアしたの……?…………君は……本当に、凄いね……』
画面が暗転する。
「ようやくか!ようやく、分かったのか」
「遅すぎましたが、気づけただけマシですね」
「じゃが、まだまだじゃ。うちの子にしてきた仕打ちに対する因果は、こんなものでは済まされんぞ」
「まったくだ。せいぜい気張れ気張れ」
――『【湯けむりマナー試験】ヲ開始シマス♡ 温泉デノ適切ナ距離ヲ保ッテクダサイ♡』
そしてまたも、蓮の真似をして飛び石を渡ろうとしたが、足を滑らせ、鋭利な巨石に頭を大激突。
あっけなく視界が暗転した――。
「まさかの瞬殺~~~!?www」
「ははは!運動神経ゼロか!」
「……じゃから、もうちっと気概というものを……」
「ムリムリムリ(笑) これがアイツの限界なんだって(笑)」
「……さっきから、一度も見せ場がありませんね」
「甘やかされて育った坊ちゃんなんだろうな」
――『確定ステージ到達♡ 最終実践試験【旅館・一夜の添い寝マナー試験】ヲ開始シマス♡』
いよいよ、あの六畳一間の和室。もちろん、部屋の中央には、二組の布団が敷かれていた。
――『!! ……最悪。ついに迷宮の本命まで来てしまった……。でも、御子は確か、屏風を立てようとして怒られて、そのあと布団を斜めにずらして最大距離を空けてたよね(学習)』
エイローシスは必死に布団をズリズリと引っ張り、斜めに配置換えをする。
「…………クックックッ」
「…………(にやにやにや)」
「…………(呆れ)」
「……………(無)」
恐怖のあまり敷布団にミノムシのように包まってガタガタ震えているエイローシスの元へ、案の定、巨躯の寝返り大追撃が始まった。
ゴッッ!!
――『ゔぶっ…!!』
暗闇の向こうから、時速40kmの破壊力を孕んだ巨大な拳や脚がエイローシスを襲う。
――『!?な"っ…なん、で――』
何とか這いつくばりながら距離をとるが、ズドンッ、ガスンッと、じりじりと部屋の隅に追い詰められる。
「ははは、そりゃあ、ただ布団をズラしただけじゃあ~な~、そうなるわな~(笑)」
「………蓮は、、巨躯の「彼女」の手足や頭、胴体などの長さを観察して、拒絶判定されないギリギリの位置を計算していましたからね」
「更に、目線と寝返りの方向が交差しない角度へずらしてたよね」
――『くっ……一か八か……! 御子は確か、壁を蹴り上げて天井の梁の上に忍者のように飛び乗ってた!! 僕だって、これくらい──』
「……おっ、やるか? 蓮のあの天井の梁はりへの大ジャンプを真似る気か?」
エイローシスは必死に敷布団から這い出し、壁を蹴って天井の梁を掴もうとジャンプした。
スカッ。
――『 あ、』
運動神経ゼロのインドア派の足先は、壁を蹴れず、そのまま重力に従って床へとマヌケに落下する。
ドサッ!!
その落下地点は、ちょうど時速40キロの速度でゴロゴロと回転していた、2.5メートルの巨躯の「彼女」の軌道だった……。
ドゴオオオンッ ガッ
トラックに跳ね飛ばされたような衝撃の後、空中を舞い、空中でコマのように鋭く体が半回転しながら、壁に叩きつけられたエイローシス。
――『ぐはっ!!』
「はははははは!まあ、ウチの子のように、距離や角度は計算できなくとも、せめて一般男子並みのジャンプくらい………ははははははは!」
「………前から思っていたが、運動神経無さ過ぎでは?」
「………天界で菓子を齧りながら〔クソゲー(恋愛ゲーム)〕ばかりしていたようなオタク神が、付け焼き刃のノリで、日々精進している神代の子の真似など、できるはずありません(冷笑)」
「……うん、己を磨き続けている蓮を見習うべき」
「爪の垢でも煎じて飲ませ…………いや、それも勿体ないのお~」
――『接触ヲ確認♡乙女ト、夜ノ一線ヲ超マシタ貴方ニハ、責任ヲ取ッテ、イタダキマス♡♡♡』
「!?……責…ウッ……任……?」
御子の時とは違う展開――。
「!! ほお?」
「なるほど、蓮は接触しませんでしたが、エイローシスは接触しましたからね。展開が変わりましたか」
「ええ~!どうなるんだろ~!?責任てどんな責任!?(笑) 超気になる~~~!!!」
「……夜の一線を越えた責任っつったら、一つしかねーんじゃねーか?(笑)」
「………まさかの!?(笑)」
――『ソノ前ニ、今夜ハ、ジックリ、二人デ存分ニ、素敵ナ一夜ヲ、オ過ゴシクダサイ♡♡♡』
「ぶはっw」
2.5メートルの巨躯の「彼女」は、立ち上がり、エイローシスをロックオンする。
――『ヒッ……!!』
両腕を広げ、ズシンッ、ズシンッ、と近づいて来る。そして――。
――『!!! 来ないでぇ~!! 誰も得をしない一線だから~!押し潰されるだけ──』
「逝っっっけ~~~!!!(笑)』
――ボディ・プレス!!!
ドシーーーーンッッッ!!!
――『愛ノ受講者、身モ心モ「彼女」ト、一ツニナリマシタ♡明日ハ、結婚式デス(death)♡♡♡』
「「「 !!! 」」」
エイローシスの『……クソゲーオブザイヤー……』とうい遺言は、神々の爆笑の渦へ、かき消されていったのであった。




