宴もたけなわ
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何度も読み返してくださっている皆様、本っっっ当―――に嬉しいです!!!!!
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ドシン、ドシン、と床を爆破するような重量。
皮膚が完全に岩石と黒鉄に変貌した【ゴーレム・花嫁】の一団。純白のドレス(石造り)を翻して迫る巨牛は、もはや生物ではなく移動する要塞だった。
だが、どれほど強固な岩石であっても、重力と、構造上の『重心』からは逃れられない。
関節が曲がらないなら、支点を変えればいい。硬度で勝てないなら、作用点を狂わせればいい。
そして、重ければ重いほど、倒した時のエネルギーは破壊的になる。
物理とは、そういうものだ。
俺がやることは変わらない。
…ただ、物理法則というものを、俺の都合の良いようにほんの少しだけ変えたり狂わせたり、『書き換える(ハッキング)』だけだ。
蓮は、迫りくる石の角を見据えながら、静かに、そして美しく、その一歩を踏み出した。
―――〔身体強化〕。
今まで蓮が行っていた氣の錬成と循環に、ドーピングでさらに強化したような感覚。蓮の周りの外氣を瞬時に取り込み、内氣も同時に膨れ上がり、外氣と内氣が循環し、爆発的な氣の跳ね上がりを見せる。筋繊維や細胞の隅々までエネルギーが行き渡り、過剰分は蓮の周りにオーラとなって溢れだしている。
「……終わった後の反動も凄そうだが、背に腹は代えられない」
ドシンドシンドシン
「『頑固な花嫁』相手だからな…」
ガチガチと歯を鳴らす石の顎。足を踏み出すたびに床が陥没する。
数頭どころではない。数十頭の「動く岩石の山」が、感情のない眼光を蓮に向けて一斉に突進してきた。
『アナタト私ハ、岩ノヨウニ固イ絆デ結バレテイルノヨオオオン♡』
「 音声機能付き?……ハイテクだが、愛も体も重すぎる…」
感覚を研ぎ澄ませ、五感にも氣を巡らす。対象のエネルギーの流れ、偏り、力の軌道、力量、接合部、耐久性、左右の対比、バランス、弱点など観察し、あらゆる情報を収集し計算する。
力で崩せないなら「重心と摩擦力(慣性)」で転がせばいい。
―――先頭のゴーレム花嫁が、丸太のような腕を振り下ろす。
蓮はその腕が触れる直前、ゴーレムの「手首のフリル袖」を少しだけ、ゴーレムの「進むベクトル」方向にほんの数センチだけ、前に引っ張って加速させた。
「空気投げ・応用」
――痛覚のない人形は、自分の腕が「誘導されている」ことにすら気付かない。
上半身だけが足の回転より前に出てしまうため、自分の体重が重すぎるせいで、上半身の重みに足が追いつかなくなり、頭から地面に大激突する。
ズガァァァン!!
重量級のゴーレムは時速数十キロで走っているため、わずか1度方向がズレるだけで、ゴーレムは自らの慣性を制御できなくなり、自爆する形になる。ゴーレムの弱点のうちの一つだ。
しかし、走る速さも、腕を振り下ろす速さも、普通の人間では対応できない。
蓮がレオから身体強化アイテムを渡されたことは不幸中の幸いであった。
蓮は更に、氣を足に集中させ、ゴーレムたちの巨体による空間の狭さと、牛ゴーレムの視野の狭さを利用し、ゴーレムたちの死角――その巨体ゆえに死角となる「脇の下」や「膝の裏」へ、滑り込むように移動を繰り返す。
合気道の極意「捌き(さばき)」。
ゴーレムが蓮を捕らえようと腕を振るたび、蓮はその腕の動きをほんの数センチだけ「外側」へ誘導し、隣のゴーレムの顔面に叩き込ませた。
ゴバァァン!!
鉄と岩が砕け散る凄まじい破壊音が響く。
痛みを知らないゴーレムたちは、敵(蓮)を見失うたび、目の前で動く「隣の仲間」を標的と誤認し、互いに全力の鉄拳を叩き込み合う。
一度狂った歯車は止まらない。蓮が彼らの「死角」をピンボールのように跳ね回るだけで、ゴーレム・ミノタウロスたちは凄まじい質量兵器と化し、互いを粉々に粉砕し合っていく。
ガシャァン! バキキキィッ!
――数分後。
広間に残されたのは、自滅してただの「ガレキの山」と化した元・花嫁たちの残骸だけだった。
蓮は石粉をパンパンと払い、深くため息をつく。
「……ふぅ。やっぱり、何事にも『柔軟性』は必要だな」
…そして、今度は蓮に、これまでの負荷が現れる。わずかに足に震えがきていた。
「そろそろ肉弾戦では限界か」
しかし、この無慈悲な迷宮は、絶望的なまでに追い打ちをかけてくる。
ドシン、ドシン、と床を爆破するような重量が再び迫ってくる。
「……無限に湧いて出るのか?消耗戦は絶望的だな……」
しかしそうすると、この迷宮にもエネルギーの供給減があるハズ。そこを断てば勝機は見えるか?
問題は敵の追撃を躱しながら発見し、破壊しなければならない。あるいは本体の撃破。3人の体力にも限界がある。
「……どうするか…」
いつもなら、どんなに絶望的な状況でも万策尽きるまで挑戦し、ダメならダメで自分の人生はそれまでだった、万作尽きるまでやったんだから後悔も無い、という考えなのだが、今は二人が居る。何としてでも生きて帰さなくては。
「御子様!今、回復を…!」
――『フォス・ティス・セラペフティキス・セリニス(癒しの月光)』―――
「御子様のお体は常に万全の状態にします!」
――『イアトリキ・アナロシ・トゥ・ペアナ(医神の医術的治癒)』―――
「待った!!頼む、俺はまだ大丈夫だ!力を温存しておいてくれ!」
「御子様…。でも…!」
「御子様!私ならまだ大丈夫です!」
「分かった分かった。……ふぅ。ならまず、次の牛のおかわりをどうするか、この迷宮のエネルギー補給減の対策をどうするか、一緒に考えてくれ」
「分かりました。服従者達が本体の所に向っているので、追ってみます。もしかしたら、本体の近くに供給源があるかもしれませんので」
「……まずはおかわり対策ですね」
ドシン、ドシン、ドシン、ドシン、
「来たな……しかし、これは……」
本当に絶望的な数だ。密集による圧死でもさせるつもりだろうか。
「…………」
「…………」
レオとリリーが目を合わせる。
リリーが再び空間に幾何学模様を浮かべ、白銀の弓と白銀の矢を顕現させる。
レオが黄金の弓と黄金の矢を持ち直す。
「ヘマしないでくださいよ。こんな時まで役立たずに――
「ならない!弓の腕は私の方が上!」
「聖女様の腕前ではなく、アルテミア様の『百発百中』の恩恵で――」
わーわー
……まさか、こんな時まで通常運転とは……恐れ入る。
しかし、二人で何かするようだな。こんな時でも、二人が何をするのか少し楽しみにしてしまう自分も大概だが……、絶望に打ちひしがれるよりは何千倍もいいだろう。
「御子様!「待て」を解除していただいてもいいですか!?」
……恐れ入る。
「……よし」
そして、二人が弓を引き絞る。
黄金の光と白銀の光がそれぞれの弓からあふれ出し。弦を通って矢を通り、矢が光の矢へと変わる。
――神聖な気配!
「二人ともまた神系譜のスキルを使う気か?体の負担が――」
「この矢は特別性なので、大丈夫です!1度使ってしまうと、長い期間使えなくなってしまうのが難点ですが」
「この矢は大切な人を護るための矢なので、負荷への免除が成されているのです。まさに〝とっておき″です」
「本体まで取っておきたかったのですが、出し惜しみして御子様に何かあっては元も子もないので」
そして、二人が矢を離す。
――『 『シイキ・ティモリアトン・ズィズィモン・セオン(双生神の神罰の雨)』 』発動!!―――
それは、救いの祈りではなく、裁きの合図だった――。
読んでいただき、ありがとうございます!この理不尽な迷宮に、ストレスをかけられまくる主人公(蓮)を、是非応援してあげてください(笑)。この「愛の迷宮編」が一区切りしたら、皆さまがもっと読みやすく、面白くなるように、全話少しずつ改稿予定です。なので、少しお休み期間が出来るかもです。主人公(蓮)の今後の行方が気になる方は是非ブックマークをお願いいたします!(笑)




