膝に矢を受けた伝説のナンパ師(神官長)登場
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パチパチパチパチ
「お見事」
拍手をしながら奥の扉から出て来た身分の高そうな壮年の男性。
壮年の男性と言っても、見た目は俗に言う、ロマンスグレーの髪に、整いすぎた甘いマスク、渋い大人の色気を隠しきれない、まさに絵に描いたようなダンディなイケオジだ。
恰好や雰囲気からして神官長あたりだろうか。しかし、足を悪くしているのか、少し引きずったように歩いてくる。
「失礼しました。私はこの愛の神殿の神官長・アードニスです。あの集団だけでなく、レオニダスまで静かにさせることが出来るとは。流石御子様。」
「何でこんなことになるまで放っておいたんだ?あの集団もこの変態も」
「あの集団の者達については、愛を理由にされてしまっては、愛の神に仕えている神官長としては強く言えず……ご迷惑をおかけして申し訳なかった」
なるほど。
「しかし、彼らも御子様のお陰で、良い方向に変わる事が出来るだろう。感謝申し上げる。《《御子様に対する》》レオニダスの変態性は手遅れだと思うが」
手遅れだったか……。
「……ふむふむ……ほうほう……ただの美青年ではないね。御子様の瞳に宿る『愛の拒絶』……。この世界へのスパイスか」
「! 愛の神から何か聞いているのか?」
「いや、ただの私の経験則だ。伊達に歳はくっていないからね」
「……………」
……なんだろう。顔とセリフは恰好良いんだが……何かクセのある隠し要素が絶対あるはず。これは俺のただの経験則だが。
「大丈夫、拒絶から始まる愛もある。かつて私も、多くの女性に拒絶された過去がある」
へえ、モテそうだけどな。興味は無いけど。
「なにせ、死神の女性にまで拒絶されてしまったからな」
ん?………死の淵を彷徨うようなことがあって、生還してきたとか、そういう例え話だろうか?
そう思っていたら、リリーが冷ややかな目で冷ややかに告げる。
「それは、お迎えに来た死神(女性)を、しつこくナンパしまくったからでしょう」
お迎えに来た死神をナンパ……。
「はっはっはっ、そのことがきっかけで、まあ、いろいろあって、冥府からも拒否されて、私は死ねない体になった」
究極すぎだろう(違った意味で)。ナンパが原因で不死の体になったとか、この人が最初で最後の異例だろう。
「そもそも死の淵を彷徨ったのも、天空島のニンフ(妖精や精霊)達に会ってみたいとナンパしに行って、天空から落とされたからでしょう!」
……違和感の正体これか。聖人君子の反面〝チャラい″んだ。
「仕方ないんだ、愛の神殿に仕える私には〝愛の使命″があるのだから」
「仕方ないのはあんただ」
この神殿には、よそ様に迷惑かける人物しか居ないのか?
「かつて、私はこの国の愛を一心に背負い、世界を股にかけ歩いたものだ。だが、ある時、膝に矢を受けてしまってな……。」
……ダンディズム顔で、どこかの元冒険者だった衛兵のような口ぶりで片膝をさすっているが、どうせ実態は……
「女神アルテミア様の眷属の女性を三日三晩口説き続けて、怒ったアルテミア様に膝を矢で射貫かれたんでしょ」
壮絶。この迷惑なナンパ男に女神様まで(ご立腹して)御降臨だ。神罰まで下ってる。神罰が膝だけで済んで良かったな。だから歩くとき足を引きずってたのか。
「伝説のナンパ師の、最後の伝説ですね」
と、レオが淡々と言った。伝説になってる。本人も実話も。
「ああ、膝を悪くしてしまって、旅が出来なくなってしまったからね、それ以来こうしてこの神殿で毎日お勤め生活だ」
ああ、女神様も神殿で大人しくしてろって意味も込めて膝に矢を当てたのかな。
「まあしかし、そのお陰で結婚出来て、今は娘と一緒にお勤めできているからね」
リリーにウィンクする。
「え、もしかして……」
「ああ!私の可愛い可愛い愛娘だよ!!」
「!」
「……うぅ……隠しておきたかったのに~……」
隠しておきたい程アレなのか……。リリーに少し同情する。
「御子様、遠慮せず、私の事を『義父さん』と呼んでもらって構わないよ!」
「やめてください!御子様申し訳ございません!!」
リリーに少し同情する。
「とりあえず、御子様の衣食住など、生活の保障はするので安心してほしい。困りごとや相談事など、何でもいいからこの『義父』に気軽に頼ってくれ」
「元ナンパ師の神官長、ありがとう(義父スルー)」
「うむ、では、こちらにサインを」
「?」
差し出された羊皮紙には、やけに複雑で美しい装飾文字がびっしりと並んでいた。生活するうえでの何かの決まり事や、公的な誓約書でもあるのだろうか。
ビリィィィ ビリィ ビリィ ビリィィィ
レオが即座にビリビリに紙を破いた。
「どうしたんだレオ、何が書いてあったんだ?」
「この紙屑は『婚姻届け』でしたので」
「!」
ビックリしてナンパ師を見る。
「・・ナンパ師の後は、結婚詐欺師をしているのか?」
「え???結婚の挨拶に来たんじゃないの??」
「違う」
「違います!元々御子様が泉から御出でになられたら此方にご案内する予定だったじゃないですか!!」
「いや、そうだが、来るのが遅かったので、てっきりアレやコレやがあって、ソウなったのかと……」
違った意味でいろんなアレやコレやがあって大変だったんだ。そのアレやコレやにはそちらの騒音公害集団も含まれてるからな。
「御子様とアレやコレやを共にしたのは私です!」
「語弊を招く言い方するな」
「そうですよ!この者はずっと御子様にご無礼とご迷惑ばかり!」
「お飾り聖女様は何の役にも立たず、足手まといなだけでしたが」
「わ、私だってお役に立てていましたよ!ご案内もしましたし!」
「元々案内など私が居るので不要でしたが。案内以外でも私が居るので全て不要ですが。つまりお飾り聖女様はずっと不要な存在です」
「まあ!なんて不遜な犬畜生でしょう!むしろ私は犬畜生から御子様を護っているのです!」
わーわー
また始まってしまった。
「………元気だな二人とも」
ふぅ、、と息を吐いていると、俺達の様子をマジマジと観察していた伝説のナンパ師。
「ふふ……なるほどなるほど……」
………流石伝説のナンパ師。顔のスペックの高さに加え、壮年の男の色気や余裕みたいなのも相まって、顎に手を当てているポーズも様になっていてカッコいい。
「取り敢えず、神殿の案内を頼みたい」
何か余計なことを言われる前に、さっさと自分の部屋となる場所を案内してもらおう。
「やれやれ、君のその急かすような情熱、嫌いじゃないよ。では、案内しよう。こちらへ」
そう言って、奥の扉へと案内するナンパ師。
「この扉は、私(神官長)以外は、二人で手を繋いでセンサーに触れないと開かない仕様になっているんだ」
重厚な石壁に埋め込まれたその扉には、俗に言う魔力回路のようなピンクの光が脈打ち、幾何学模様のような不可思議な刻印が刻まれたピンクの石板が設置されていた。
どう見ても、恋愛イベントのような事を強制する悪趣味なシステムに違いない。
「…………また面倒ごとか」
――この蓮の直感は当たっている。
………実はこの扉、ある愛の条件をクリアしないと開かない仕組みになっている。
果たして蓮は、クリアできるのか――。
そして、オタク神へのしっぺ返しのカウントダウンも静かに始まっていた。
読んでいただき、ありがとうございます!この狂った世界で懸命に頑張る主人公(蓮)を、是非応援してあげてください(笑)。主人公(蓮)の今後の行方が気になる方は是非ブックマークを!(笑) 愛のオタク神への報復カウントダウン開始!!




