第46話 戦況分析、一瞬の隙をつけ!
ロイは刀を上段から下段へ、一切の逡巡なく振り下ろした。
「斬鉄剣!」
アイギスは腕を構えて防ごうとするが、その強靱な肉体を物ともしない、凄まじい威力で腕を切断すると、アイギスの肉体を真っ二つに切り裂いた。
「グ、ガァア!」
アイギスの目から狂戦士の色が消えると、正気に戻ったアイギスが、
「ありがとう……ございます、クラウド殿」
そう言うと、アイギスのアバターが消滅していった。
「……終わったのか?」
その場で座り込むと、ロイの健闘を讃えるように三日月宗近が、
(うむ。お主の力、確かに見せて貰ったぞ。これから長い付き合いになると思うが、まぁ、頼む)
三日月宗近は役目を終えると、その刀身は消えていった。
ロイは戦いを終え、その場で倒れ込む。そして、
「もう指一本動かねぇ」
スキル発動中は、自身の体力に流れ込む治癒効果によって問題なかったが、スキルの効果が切れた瞬間、今までのダメージが一気に吹き出した。
全身に疲労感が回り、身体を動かすことが不可能なほど疲弊していた。
「あとは任せたぜ、大将!」
ロイは久遠に全てを委ねると、その場で落ちるように意識を失うと、深い眠りにつく。
その頃、龍人化を果たしたノルンは、久遠と対峙して、背中に生えた大きな翼を羽ばたかせると、
「これで条件は同じ、ですよね?」
飛行能力を手に入れたノルンは、得意げに久遠を見て微笑む。
「くっ」
久遠はその表情を見ると、自分が持ち合わせていた能力と同様、更には、それ以上の未知のスキルを目の当たりにして、己を奮い立たせるように士気を高めた。
剣を構えて、ノルンの出方を窺うように距離を取ると、詠唱を唱えて、牽制の魔法攻撃を放った。
ランダムに放たれた炎の弾は、縦横無尽に駆け巡り、ノルン目掛けて襲い掛かる。
「ふふ」
驚いたことに、ノルンは、その場で回避することなく、久遠の攻撃を無防備に受け止めていた。
炎弾が直撃すると、ノルンの周囲は、凄まじい熱気に包まれていく。
「そんな、避けもしないなんて!」
攻撃が直撃したことよりも、ノルンの不可解な行動に、久遠は、言い知れない恐怖心に襲われていた。
その直感が現実となる光景が、目の前で起こった。
全弾が直撃したはずの、ノルンの身体には傷一つなく、その身体から発せられる圧倒的なオーラは、見る者に畏怖の念を感じさせるほど、堂々と、威厳に満ち溢れていた。
「魔法攻撃を無効化するほどの防御力、理論値通りですね」
空中で浮遊していたノルンは、身体を触りながら、確認すると、
「では、攻撃力も確かめなくては、ね」
ノルンは右拳に力を入れ、何気なく、地上にいる久遠に中段突きを放った。
途端、凄まじい風圧が久遠を襲った。
「!」
仰け反るように、後方に飛ばされる久遠を見て、ノルンは、
「申し分ありませんね」
満足げに拳を見て、久遠に、
「大丈夫ですか、久遠さん?」
吹き飛ばされ、久遠は大岩にその身を強かに打ち付けると、
「ぐっ、ふっ……」
身体を襲う激痛以上に、ノルンが放つ、以前よりも強大な圧力に、身の毛がよだつ思いだった。
「どうしたのです?戦いはこれからですよ、久遠さん」
ノルンは久遠が立ち上がるのを、静かに待っていた。
しかし、その目は、高揚とした感情に支配され、恍惚の表情を浮かべている。
自身に流れ込む、大量のタオの副作用によって、ノルンのフィジカルに、媚薬のような効果が付与されていたからだ。
赤く火照った身体を擦るように、ノルンは、早く、次の攻撃を放ちたくて堪らない様子だった。
「はぁはぁ」
久遠は項垂れる身体を起こすと、先程の衝撃で、頭の霧が晴れたのか、冷静にノルンを観察することが出来た。
ハイになっている状態であるなら、初手のような冷静沈着な、隙の無い戦闘とは異なる、やや本能に近いスタイルに徹するであろうと分析。
ここは、己が理性的に事に当たり、僅かな隙にも全神経を集中させ、反撃の一手を繰り出す他ないと、覚悟を決めると、深呼吸して剣を再び構えた。
ノルンは上空から急降下して拳を久遠目掛けて放つ。




