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VR&RW Online  作者: 田島 康裕
31/60

第31話 好敵手

 宮殿に、雨のように照射された、無数の矢を見据え、アルテミスは目を閉じ、銀の矢を番えた。


 月の光の力を蓄え、矢に込め、解き放った。


 「シェル・ド・ルナ」


 光の矢は、シオンが放った、矢を弾くように、円形上の巨大な膜となり、全ての矢が、その光の膜に当たると、力なく、消滅していった。


 「!」


 その防御スキルを見て、シオンは驚くが、すぐに、次の一手を打つ。


 如何な、防御力であろうと、シオンが持つ、攻撃力に特化したスキルなら、突破出来ると確信し、瞬時に切り替え、矢を放った。


 「弓術奥義・咬牙(こうが)!」


 放たれた矢を覆うように、獅子のエフェクトが、膜を食い破り、アルテミス目掛け、襲い掛かった。


 「……」


 矢は、アルテミスのいる場所を、僅かに逸れ、城壁の石垣を、大きく削った。


 「ちっ、外したか」

 「タオをチャージしますね」

 「ああ、頼むぜ、カナン!」


 一発で仕留めることが出来る奥義は、タオの消費量が大きく、次の発動までのチャージに時間が掛かる。


 シオンは、残り少ないカナンのタオと、自身のタオを使い、覚悟を決めると、最後の一手に全てを賭けた。


 城の最深部で、静観していたヘルメスが、


 「大丈夫かい?」


 と言って、アルテミスを気遣う。


 「ええ、私の防御スキルを破るとは」

 「シェル・ド・ルナの防御判定が残っていなかったら、危なかったね」


 本来のシオンの腕なら、確実にアルテミスに、会心の一撃を与えていたが、僅かに残ったスキル判定が、アルテミスを、その猛威から助ける結果となった。


 「素晴らしい腕前ですね」

 「僕が出来ることはあるかい?」


 ディーヴァの支援があれば、ここまで窮地に陥ることの無かった。


 だがアルテミスは、敢えて、その環境に身を置くことを、彼女は、自ら選択していた。


 「そうですね、どうしましょう?」


 少し困った顔で、思案しているが、ヘルメスは、呆れることもなく、顔を綻ばせて、


 「お呼びでない、かな?」

 「ふふ」


 ヘルメスは、斎場に座り込むと、大きな伸びをして、大の字になり、大あくびをする。


 「僕だけ、仕事がないのも、みんなに悪い気がするけど、まっ、いっか」

 「相手のディーヴァの、監視スキルを封じる大仕事を、完遂するだけでも、お釣りが来ますよ」

 「上手くいくとは、思わなかったけどね」


 天井を見ながら、満足そうに寝返りを打つと、そうそうと、ヘルメスが、アルテミスに語り掛ける。


 「なぐ、じゃなかった、クラウドさん。僕達の正体、気付いちゃたみたいだよ」

 「でしょうね」

 「あれ、驚かないの?」


 アルテミスは、一連の、久遠達の戦闘を見届け、ノルンが、とても楽しそうな表情を浮かべて、戦っているのを感じ取ると、不思議な共感力で、全てを感じ取っていた。


 「ノルンさんも、大人げないですけど」

 「それは、君にも言えると思うよ」


 ヘルメスが楽しそうに笑うと、釣られるように、アルテミスも笑い出した。


 「ふふ、これだけの好敵手、手を抜く必要がありますか?」

 「と言っても、僕達のスペックは……」

 「ヘルメス」


 アルテミスは、静かに制すると、


 「分かってる。でも、単純に楽しみだよ。これからの戦闘がね」

 「ええ、よく見ていて下さい」


 二人は微笑む。


 アルテミスは、シオンがいるフィールドに、視線を向けると、戦闘態勢に入った。


 炎龍は、久遠の頭上で、相手を威嚇すると、久遠に、


 「我がマスターよ、久方振りだな」


 神聖位クラスの召喚獣には、意志があり、宿主の意志と関係なく、自己の判断で、行動を行うことが出来た。


 「そうだね、ウェルシュ」


 久遠が、炎龍の名前を呼ぶと、首を垂らした炎龍を撫でる。


 「それ程の相手か?」

 「うん、桁違いだよ」


 炎龍が、グルルっと喉を鳴らし、相手の二人、特に、ノルンの表情を窺う。


 「……」


 何かを感じたのか、炎龍は、無言になると、


 「我が力、存分に行使するがよい」

 「ああ、頼りにしてるよ」


 久遠と炎龍は、シオンと対峙すると、久遠は構えを取り、相手の動きに、精神を集中させた。

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