第30話 神聖位クラス
コスチュームが、銀色の装身具に変化すると、久遠の目が金色になる。
右手に剣を構え、ノルンが動くよりも速く、炎を帯びた剣撃を浴びせた。
さらに、複数の炎の弾丸が、放射線状に、無作為に相手目掛け、襲い掛かった。
「!」
前方からの、鋭い一撃と、ランダムに放たれた、攻撃の波状攻撃を、躱す余裕のないノルンは、防御力を、極限まで高めて、攻撃を受け止めた。
爆発音が響くと、後方に吹き飛ばされた、ノルンの表情は、それでも余裕があった。
「まだです」
久遠が間髪入れず、次の攻撃のモーションを取る。
呪文を唱え、高度な演算処理を終えると、久遠の背中から、炎龍が召喚された。
「……召喚獣ですか」
ノルンがフゥっと息を吸って、楽しそうに剣を仕舞うと、新しい剣を、ストレージから取り出し、対峙する。
一方、その状況を、目視していたシオンは、その、雄々しい召喚獣を見て、勝利を確信していた。
ただ、如何に強大な力を持ってしても、それだけで、勝てるほど甘くないことを、痛いほど知っていたシオンは、自分の役割に集中した。
相手のシューターが、次に、どのような攻撃を仕掛けるか、分からない状況では、少しの油断が命取りになる。
インカムで、カナンに連絡を取る。
「カナン、聞こえる?」
「はい」
「今の状況を、掻い摘んで教えるぜ」
「お願いします」
一連の動きを、カナンに伝えると、カナンは、驚いた声でシオンに、
「久遠君、マジックナイトを使用したんですか!」
「ああ、久し振りに見るけど、ありゃ、チート級のスキルだよ、ホント」
目の前で、雄叫びを上げる、炎龍を見ながら、シオンは身震いした。
「だけどよ、相手の剣使い、久遠の攻撃を耐えやがった」
「そんな!」
「久遠も容赦ねぇぜ、炎龍を召喚しやがった!」
「炎龍をですか!」
召喚魔法は、スキルに使用される、タオの消費量が著しく、特に四大属性、火、水、風、土属性の中でも、攻撃力に特化した、炎属性は、四属性でも、タオの消費は、最も燃費が悪い。
更に龍は、召喚獣の中でも、最も位の高い、神聖位クラスであり、その消費コストは、桁違いだった。
「ノルンっていったか、相手の剣使い、アレを出しても、笑っていやがる……只者じゃねぇよ」
「……」
「他の連中の、出方も気になるから、カナンは回復と、援助系の詠唱を定期的に頼む。アタイは、シューターを叩くぜ!」
「気を付けてくださいね、シオン」
通信を切ると、シオンは、アルテミスがいる方向を見据え、大勝負に出た。
隠れていたポイントから、身を乗り出して、見晴らしのいい丘の上に立つと、再び鏑矢を番え、上空に放つ。
甲高い音が、辺りに響き渡った。自らの位置を知らせるような、行動の意図を、アルテミスが感じ取ると、
「面白い方ですね」
クスッと笑うと、アルテミスも、矢を番え、鏑矢と、同じ効果のある矢を空に放った。
矢は、頭上で閃光弾のように、明るく光ると、
「へっ!」
シオンが、鼻を鳴らして笑うと、相手の出方に、感心した様子で、
「いい根性してるな、叩き甲斐があるってもんだよ!」
スキルを発動すると、相手の位置を確認した。
「カナン、補助を頼む!」
「任せて下さい」
カナンは、単一の個人に付与される、ステータスアップの詠唱を施した。
効果は、すぐにシオンのステータスに反映されると、フィジカルの運動性能が、飛躍的に向上する。
シューターらしからぬ、俊敏な動きで、構造物を駆け回ると、相手の照準にヒットされないように、警戒しながら矢を構え、
「さぁて、ぶっ放すぜ!」
通常は、一本しか打てない矢を、三本番えて、高速で放つ。
全て当たることを狙わず、数と、速さに特化した射法で、アルテミスを、攪乱しようとする作戦に出た。
持っている、攻撃用の矢は、凄い勢いで無くなるが、
「カナン!」
「ええ!」
カナンは、矢の残数を、詠唱によって、無尽蔵に充填すると、シオンのバックアップに回る。
カナンのタオも、著しく消費されるが、そんなこと、お構いなしで、攻撃の手を緩めることなく、怒濤の勢いで、矢を放ち続けた。




