第28話 対峙する眼差し
シオンは、シューターのポジショニングの距離より、かなり前に陣取ると、矢を番え、引き分けの構えを取る。
何時でも援護射撃と、索敵が出来る状態で、神経を研ぎ澄ます。
「あと三十秒で、相手と交戦するよ。気を付けて、二人とも!」
「はい、任せて下さい」
「頼りにしてるぜ、シオン!」
二人は、前方を見据えると、ノルンと、アイギスの姿を捉えた。
一気に距離を縮め、対峙すると、ノルンが二人を見据え、冷酷な微笑みを向けた。
「本当に来るとは、正気ですか?」
「……」
アイギスは、ノルンの言葉を、無言で聞きながら、盾を構える。
「生憎、売られた喧嘩は、買う主義なんだよ、俺らはな」
ロイが挑発に乗らず、何時もの調子で、からかうように返事をした。
「流石に、挑発には乗りませんね」
ノルンは多くを語らず、剣を構えた。
久遠は、剣を握る手を、小刻みに震えさせていた。
それは、ノルンの構えに、一切の無駄がなく、自然で、それでいて、一瞬の隙あらば、その一閃を、容赦なく久遠の喉元に、突き刺さんとする、剣気が見て取れたからだ。
小声で、ロイが、
「俺が守ってやる。安心して攻撃しな、久遠!」
と言うと、ロイの額から、一筋の汗が頬を伝っていく。
相手のノルンが纏う、オーラもそうだが、横にいる、仏頂面のアイギスの、隙のない、間合いの取り方を見て、盾を構えるロイの緊張感は、嫌でも上がって行く。
ピンと、張り詰めた空気が、四人の周囲を包み込んでいった。
同時刻、後方で、攻撃の機会を窺っていたシオンは、城壁にいる、アルテミスの姿を視認すると、
「お返しは、倍返しだよ!」
瞳の色が、赤色に変化すると、シオンの千里眼が発動した。
今まで以上に、鮮明に、相手の風貌を捉えると、破邪矢を、相手の喉元に当てる。
「!」
シオンが、相手の表情を見て驚く。
アルテミスは、シオンが見ている動線と、同じ座標軸に標準を合わせて、小さく微笑み、矢を構える。
「あくまでも、相手はアタイってか、上等だぜ、その勝負のってやるよ!」
「さぁ、見せて下さい。貴女の力を」
アルテミスは、シオンの額に、狙いを定めると、光の矢を放つ。
同時に、シオンもアルテミス目掛けて、破邪矢を放った。
二つの矢は、一直線に、相手目掛けて襲い掛かるが、その矢尻が、久遠達の頭上で衝突すると、空間を揺るがすほどの、凄まじい衝撃波を生じさせた。
それが、合図かのように、地上にいた久遠達も、攻撃を仕掛ける。
最初の一撃を放ったのは、ノルンの剣撃だった。
「……ダブル・アクセル」
高速移動をして、ロイを躱し、久遠に三段突きを放った。
「久遠!」
ロイが、すぐに、カバーに入ろうとするが、アイギスのタックルで態勢を崩した。
「覚悟されよ」
腰に携えた、小剣を構えると、リフレクターとは思えない、素速い攻撃で、ロイを圧倒する。
「舐めるなよ!」
ロイも小剣を構え、盾を使って、前進して薙ぎ払うように、攻撃すると同時に、小剣を、相手の胸元目掛けて突き上げる。
盾に気を反らし、僅かな隙が出来た、アイギスだったが、バク転をして、躱すと同時に、回転の勢いを利用して、サマーソルトキックを放った。
「ちっ」
攻撃を回避すると同時に、反撃する、アイギスの戦闘スタイルにロイは、
「あんた。リアルで、何か、格闘技でもやってたのかい?」
と、息を上げながら、自分の間合いを作っていく。
「……」
「だんまりかよ、ったく」
ハァハァと、息を整えながら、ロイは、思考を回転させる。
リフレクターは、ソーディアンの攻防を、アシストするのが、本来の役割だった。
ノルン達のパターン破りは、今に、始まったことではないが、四人のクランが、互いの役割を果たすことで、始めて、本領を発揮する、ライセンスマッチに於いて、ノルン達のクランは、それ単体で、クラン、一チームに匹敵する力量を持っていることに、ロイは、ある仮説を立てていた。
(こいつら、もしかして……)
思考を中断するように、アイギスが、口を開く、
「今は、試合に集中を、クラウド殿。……これは、あくまで『選定』、負けて得る経験もありますぞ」
構えを取る、アイギスを見据え、納得したロイだったが、
「……なるほどな。へっ、そう簡単に、白旗を上げるかよ!」
と言って、啖呵を切ると、アイギスを左手で、手招きして挑発する。




