第26話 一矢の狼煙
「取り合えず、30本あれば、何とかなるか」
そう言って、矢筒に装填した。
お互いに、必要な武器をシェアしながら、序盤の武器集めは、順調に進んでいった。
「何とか、形になりましたね」
インカム越しに、久遠が安堵した口調で、前方を警戒しながら、平坦なフィールドに設置された、石造りの住居から、周囲を見渡している。
「こちらも、詠唱に必要な斎場を、見つけましたよ」
カナンは、巫女姿をアレンジした姿で、四隅に、攻撃回避の結界を張ると、防御付加の効果のある呪文を唱える。
その歌声は、普段のカナンよりも、堂々として、それでいて、澄み切った、透明感のある通る声は、聴く者に安心感を与えると同時に、戦意を鼓舞させた。
「俺の装備も大丈夫だ!何時でも、切り込めるぜ、大将!」
大盾と、腰に、小剣を携えたロイが、覇気を漲らせて、久遠に指示を仰ぐと、
「はい、まず、僕が斥候として、前線に出て、相手の出方を見ます。皆さんは、後方で敵の動きを見て、各自の判断で行動して下さい」
「俺は、すぐ後ろで攻撃が来たら、カバー出来る位置で、スタンバってるぜ!」
「はい、お願いします」
そう言うと、二人は、建物から出ると、久遠が、もの凄い勢いで走り出す。
「……セカンド・アクセル、発動」
足に、緑色の風を纏った久遠は、相手の攻撃を警戒して、ジグザグに、高速移動しながら突進していく。
「相変わらず、マックススピードでもないのに速すぎだぜ、ったく」
重量級のロイは、息を上げながら、必死に後を追っていく。
最後方の少し前では、シオンが、矢を番えて、最前線の動きを注意深く見据え、何時でも、迎撃が出来る態勢を整えていた。
試合開始、五分と経たないという早さで、最初の攻撃を仕掛けたのは、ノルンのクランだった。
シューターのアルテミスが、洋弓に矢を番え、攻撃エリア外から放った一撃は、久遠のいる場所を、優に超えると、後ろにいたシオン目掛けて、一筋の閃光となり、襲い掛かった。
「え?」
天性の視覚を持つシオンが、一瞬の光を捉えて、僅かに首を反らした。
アルテミスが放った矢は、シオンの頬を掠って、後ろにあった構造物に当たると、大爆発を起こす。
凄まじい轟音が、辺り一帯に響き渡ると、
「驚きましたね。私の矢に反応するなんて」
感心したように、アルテミスが、隣にいる、ノルンを見て微笑んだ。
「ふふ、私は、当たらないと思っていましたよ」
「どのような根拠で仰っているか、参考までに、聞かせて頂けませんか?」
首を傾げる、アルテミスにノルンが、
「彼女の二つ名『暁の千里眼』、その択一した眼を持ってすれば、如何に、貴女の攻撃でも、躱すことが出来ると、確信していました」
「緋眼の和弓使い、ですか」
納得したように、嬉しそうに笑いながら、
「次は、撃ち抜きます」
と言って、冷たい氷のような視線を、シオンのいる方向に向けた。
「頼りにしてますよ」
ノルンが、宮殿の城壁から、一気に飛び降りると、軽く伸びをして、臨戦態勢に入る。
背後には、リフレクターのアイギスが後に続く。
「ノルン殿、待たれよ」
「何ですか?アイギス」
大柄の男が、ノルンを引き止めると、
「オーバースキルを使用するとは少々、大人げないのでは?」
「そんなことはないですよ、彼らの力量を持ってすれば、この程度」
「しかし、もし、我らの意図することが……」
言い掛けたアイギスの口を、そっと、人差し指で押さえて、
「それ以上は……観戦カメラが、音声を拾う可能性がありますから」
上空に浮遊している、球体のカメラを見て、ノルンは手を振って、愛嬌タップリにウィンクする。
「も、申し訳ありません」
「今は、戦闘に集中を、ヘルメスは?」
「はい、宮殿の最深部にある斎場にて、動向を監視しております」
「転移した、最初の場所が宮殿とは、久遠さん達には、申し訳ありませんね」
舌を出して、小悪魔のような、笑みを浮かべるノルンに、
「ハンデがあり過ぎるような気がして、止まないのですが、大丈夫でしょうか?」
武骨な顔をしかめながら、アイギスは、相手を気遣う素振りを見せた。
「大丈夫です。あの方がいるクランですから」




