第24話 試合開始前
モニター越しからも分かる、余裕の態度に、ロイが、
「随分と余裕だな、ノルンさんよ」
食って掛かるロイを、久遠は、手で制すると、ノルンが、ロイに向かって、
「ふふっ、勇ましいですね『双璧の守護者』、ロイ・クラウドさん」
「な!」
ロイは、自分の下の名前を呼ばれ、驚きを隠せなかった。
仲間内にしか教えてない、ファミリーネームを言い当てられ、警戒心が、嫌でも上がった。
さらに、自身の、二つ名も知っていること、ノルンが、自分達のことを、異常なまでに調べ上げていることに、違和感を感じずにはいられなかった。
「あんた、何者だよ?久遠のことと言い、俺の名前といい、いくら何でも、知りすぎじゃねえかよ、ああ!」
明らかに、不快感を露わにしている、ロイの表情を見ても、ノルンは、我関せずといった様子で、ロイの態度を静観していた。そして、
「この戦いを制すれば、全て、お話し致しますよ。勝てれば……ですけどね」
そう言うと、回線が切られた。
「あの野郎、ふざけやがって、クソッタレが!」
熱くなったロイが、怒りを隠せない様子で苛立っていた。
今まで、そんなロイを見ることのなかった、シオンとカナンが、珍しく、オドオドと立ち竦んでいた。
その様子を見て、久遠は、
「ロイさん、えい!」
と言って、唐突に、ロイのお尻に、勢いよく浣腸する。
「ふぉおお!」
思わず、素っ頓狂な声を上げて、悶絶するロイが、情けなく、その場で、悶え狂っていた。
何時もの久遠なら、決してしない行動に、シオンとカナンは、唖然としていたが、ロイの、涙目で、情けない姿を見ると、それまでの、不穏な空気を搔き消すように、吹き出した。
「カナン、聞いた?さっきのロイの声」
「何処から、出るんでしょうね?ふふっ」
涙を出し、爆笑している、二人にロイが、
「お、お前ら、笑いすぎだっての。く、久遠、加減ってもんがあんだろ。攻撃力マックスでやったな、今の!風穴が開くかと思ったじゃねぇかよ、オイ!」
「す、すみません。その……力加減を間違えました」
そう言いながらも、『もう勘弁して』と、リアクションをとるロイを見て、自分でしたことに、笑いを堪えるのに必死だった。
「ハァハァ……もういい、吹っ切れたぜ、大将」
お尻を擦りながら、久遠を見上げて、
「どっちみち、ノルンに勝てば、マジックのタネが分かるんだからな。ぜってぇ、勝ってやんよ!」
「そうだよ、ロイ。何時ものアンタに戻ったじゃん」
「ええ、それでこそ、ロイさんです」
シオンとカナンが、ロイを助け起こすと、〆の言葉にロイが、
「危うく、新しい扉を開くところだったぜ」
と言うと、すぐさま、女性陣が反応し、パッと、ロイを持っていた手を離して、
「セクシャル・ハラスメント!」
「いやらしいです」
そう言うと、二人が同時に、ロイの姿にモザイク処理をする。
「おいおい、何も見えねぇよ。変なことすんなよ、おーい」
姿と一緒に、音声も変わり、報道特集でインタビューに答える、詐欺師のような声になった、ロイを見て、
「知るかっての、反省しろ、反省」
「そうですよ」
一連のやり取りを、不思議そうに見ていた、久遠は、
「何で、二人とも、顔を赤らめているんですか?」
と、真顔で言った。
そのリアクションに、二人は、説明する勇気がなく、
「えっと、なんだ。そうスキンシップだよ。うん、そうだよね、カナン」
「え、ええ、勿論です」
二人は、慌てた様子で取り繕う。
「でも、モザイクは、ちょっと可哀想ですよ、お二人とも」
そう言うと、ロイのアバターに掛かった、モザイク処理を解除した。
「ふぅ、助かったぜ、久遠」
ロイは、一呼吸すると、女性陣を見て、笑いながら、
「いい試合をしようぜ、お二人さん」
シオンは、力強く拳を突き上げて、
「了解、任せて!」
カナンも、両手を胸の前に組んで、
「はい、戦神の加護が、あらんことを」
最後に、ロイが久遠を見ると、それに答えるように、
「悔いの無い戦いを!」
「ヨッシャ、じゃあ、行こうか!」
ロイが気合いを入れると、全員は、円陣を組んで、互いに檄を飛ばした。
それと同時に、試合開始のジングルが鳴ると、四人の姿は、ロビーから、試合会場に転送される。
▼ライセンスマッチ フィールド ヴァルハラ平原




