第20話 招待状 ≓ 果たし状
「どうぞ、消化が良くなりますよ」
「ありがとう、助かるよ」
椅子に備え付けられた、サイドテーブルに置いて、少し冷ましてから飲むと、爽やかな清涼感が喉を潤した。
ゆったりとした時間が過ぎると、来訪者を告げるチャイムが鳴る。
「久遠、ロイさん達が、いらっしゃいましたよ」
「うん、わかった」
部屋着から、普段着に着替えると、玄関に出る。
扉の横にある、四角いセンサーに手を翳すと、音もなく、扉が開いた。
「よぉ、久遠、おはようさん」
ロイが、開口一番、そう言うと、久遠の頭をポンポンと撫でる。
「ロイ、子供扱いすんなっての」
「久遠君も、お年頃の男の子ですから、そういうスキンシップは控えた方が……」
ロイの後ろにいた、二人の女性が、ロイに注意する。
「いいんですよ。おはようございます、シオンさん、カナンさん」
「オッス!」
「おはようございます、久遠君」
シオンは、手を上げて元気に、カナンは、少し、はにかむように、シオンの少し後ろで、久遠に挨拶をする。
「玄関で話すのも何ですから、どうぞ」
久遠が、家の中に促すと、三人は、各々の定位置である席に着いて寛いでいた。
ルチルは、三人の趣向に合った飲み物と、茶菓子を用意して差し出すと、
「ありがとな、ルチル」
「不二家の特製シュークリーム!相変わらず分かってるね、ルー」
「美味しいです、ルチルさん」
「どういたしまして、ゆっくりして行って下さいね」
一礼すると、ルチルは、奥の方に下がっていく。
久遠は、木製の、クラッシックな書斎机の引出しから、一枚の招待状を出して、三人に見せた。
それは、ニル・ヴァーナ・アトラスのライセンスマッチに於いて、ランダムで戦う、試合とは異なり、特定のチームと、対戦する時に用いられる、大袈裟に言えば、果たし状のような代物であった。
高ランク、それも、アトラスでは、トップクラスの腕前を有する、久遠のクランに、好き好んで、挑戦を挑むクランがいることに、
「おいおい、マジかよ」
「招待状なんて、今のランクになって初めてじゃない?」
「……な、何かの間違いではないですか?」
三人は、それぞれ、驚きを隠せない様子で、互いの顔を見ると、リアクションに困っていた。
「どうしますか?」
久遠が、意見を求めるように、返答を待っていると、
「う~ん、いや、俺は賛成だな。何か、面白そうじゃんかよ」
「アタイも賛成!招待状を送るってことは、それだけ、自信があるってことだろ?腕が鳴るってもんよ」
「……皆さんがよければ、私も受けたいと思います」
「決まりですね。さっそく、対戦の申請を受諾する旨を、相手のクランの代表に送ります」
「クランのチーム名と、リーダーの名前は何てんだい?」
「それ聞きたい、メッチャ気になる!」
「わ、私も……」
三人にせがまれ、久遠は、招待状に書かれている情報を読み上げる。
そこには、英語表記で、対戦者の情報が記載されていた。
「チーム名は『ラグナロク』、代表者の名前は、『ノルン』だそうです」
「ラグナロク……『神々の黄昏』か、イカす名前じゃねぇの」
「ノルンということは、代表の方は、女性の方なんでしょうか?」
「え?何で、そんなことが分かんのよ」
「運命の三女神の一人が、ノルンという名前なんですよ」
「え、ええ」
久遠が、カナンの説明に補足すると、カナンも、久遠の言葉に、小さく首を縦に振って同意する。
「相変わらず、よく知ってんな」
ロイが感心したように久遠を見る。
久遠は、本棚から、分厚い伝記の書籍を、迷わず選ぶと、該当するページを開いて、ノルンが出ている場所を示した。
「俺は、英語はちょっとな」
英文で書かれていたため、ロイは両手を上げ、オチャラケたアクションをとる。
久遠は、本を閉じると、三人に、
「それじゃ、返事を送りますね」
「おう、頼むわ」
「シャ、ワクワクして来たぜ!」
「は、はい」
久遠は返信メールを送る。
すると、すぐに相手から返事が来た。
「は、早いですね」
「相手、やる気満々だな」




