伝説
長らく放置していたので一気に仕上げるぞ。
伝説の空中都市。
この場所にはただ一人、たどり着けるものがいる。
それはこの都市を守り続ける番人、“守り手”と呼ばれるものたち。
彼であり、彼女である守り手たち。
彼らはこの都市へと続く扉を守り続ける番人であった。そして、かれらは何年かに一度代替わりをしながら、都市へと続く扉を守り続けたのである。
はるか昔。
その都市に生きるもの全てに、永劫の繁栄が約束された時代。世界を束ねるだけの力がこの都市にはあった時代の話。
この場所はその大いに栄えた時代の、英知の宝庫であった。
だが今では滅び、忘れ去られた時代の話。そしてこの智の宝庫は、今の時代にはあってはならないもの。
だが何故に、この都市を残すのか。
それは完全に消し去ってしまうには惜しい知識の数々。
過去の忘れ去られてしまった尊き歴史の宝庫。
偉大なる記録と、忌まわしき記録。
善きも悪しきも区別無く、ただ等しく存在する偉大なる過去の遺産。
今となっては誰も住まうものがいなくとも。
それでも番人は守り続ける。
偉大なる最後の王の言葉を守り続けて。
彼が、まだ駆け出しの若い頃。
ある日、一人の少女の護衛の依頼を受けた。
詳しい話は旅立ってしばらくして聞いたのだが。彼女は、次の番人として都市を目指して旅をしていた。
彼も伝説は知っていた。本当に存在するかは彼女も知らない。だが、一度受けた依頼を覆すわけにもいかず。それ以上に彼の心を引きとめたのはその少女の瞳によぎる影。
二人はあるか無いかわからない場所を目指して旅をする。
幾多の苦難を乗り越えて、それでも確かに近づいてゆく。
だが目的の場所に近づくにつれ、彼女の影は次第に増していった。
影の名は不安。そして恐怖。
彼女はその場所へたどり着いたときの自分の運命を思い、恐怖していた。
そんな彼女を心配していた彼は、どうにかして彼女を元気付けようとした。
共に苦難の日々を過ごし、次第に彼らは心を通じ合わせていった。
この時間が永遠に続くことは無いことはわかっていても、それでも彼らは信じていた。共に歩むことができると。
都市の入り口に二人で立ったとき。
彼は誓った。
何があろうとも彼女を守る、と。
他人からすればただの誓い。だが彼にとっては命を賭しての誓い。
彼のその言葉に彼女は涙を浮かべながらも、うれしそうにそして幸せそうに笑った。
それが、最後に彼女と語り合った時間。
彼はまだ知らなかった。
その後の運命を。
悲しき別れの時を。




