出会い
ある酒場でのこと。
彼女は護衛をしてくれる同行者を求めていた。
話を聞けば、それは伝説の空中都市へと共に旅立って欲しいという依頼。
だが誰もがそのことばを馬鹿にし、真剣に聞こうとはしなかった。
誰もが伝説と信じているものだったからだ。そして、あるはずの無いものだと思っていたからだ。
そんな在るか無いかもわからないもののために、わざわざ手間を割く奇特な人間はそうそうはいない。
だが、その声に応えたものがいた。
見たところ、それなりに腕は立つだろうか。
彼を見た酒場の人間は、驚き半分で見ていた。
彼はこのあたりでは、それなりに名の知れた人物だった。
そんな彼が何故、こんなわけのわからない依頼を受けようと思うのか。
そのことを不思議に思うものたちもいたが、真剣に彼女の話を聞く彼の姿を笑いながら見るものがほとんどだった。
彼もあんな伝説を信じているのか、と。
その日のうちに、彼らは旅立った。
そんな彼らを酒場にいた同業者達は、笑いながら見送った。
あるはずも無いものを、探す彼らを笑いながら。
少女は戸惑っていた。
なぜこれほどの腕前を持つ人が、自分の護衛を引き受けてくれたのか。
皆が彼女の言葉を頭から馬鹿にしていたのに、彼だけは彼女の言葉を信じてくれていた。というより、その言葉を待っていたようにも見えた。
そんな彼女の戸惑いを感じたのか、彼は苦笑しながらつぶやくようにこう言った。
再び会いたい人がいるから、と。
遠くを見つめる彼の瞳には、その追い求めている彼女の姿が映っているのだろうか。
長い旅を続けながら、彼は少しずつ語ってくれた。
それは、彼女にも関係する話。
それは彼の、昔の苦い思い出。




