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欠落万能屋は記憶を探求する  作者: 多津身 光
第三章:波乱な依頼
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99. 帰宅中の予想外

 あの後すぐに往診の医者が邸宅に訪れ、フレイスの容態を診ては驚きの表情を浮かべていた。

 今まで何度も生死を彷徨っていたのが嘘であるかのように、健康体そのものとなっていたのだ。


 それでも暫くは安静に過ごすようにと言われ、フレイスは少し不満気な表情を浮かべた。

 早く外に出たいと上目遣いでお願いする姿にクロテッド社長は揺らいでいたが、何とか持ち堪えて安静を優先させる。



 シルク達はクロテッド社長達から沢山お礼の言葉を貰い、最後にフレイスも満面の笑みを浮かべながらお礼をした。



「本当にありがとうございました、また一緒にお茶を飲みましょうね。約束ですわよ!」



 無邪気な笑顔に釣られるように皆も笑顔を零し、シルク達は自家用車に乗って邸宅を後にした。



 使用されたパナシアンベリーから取り出された種も保護対象となる為、シルク達はアパートに戻る前に再び魔法薬学会本部へと向かった。

 これにはグレイも再び不満気な表情を浮かべていたが、規則には逆らえない為我慢していた。



「種の中の構造も見てみたかったんだよなぁ…あぁー、分解してみたい」


「あんな小さな種を分解したいって言うのは先生くらいですよ」


「流石グレイ博士です…!」


「変に見習わないでもいいからな…そんなに分解したいなら魔法薬学会に許可を貰え。駄目だと言われる可能性の方が高いだろうがな」


「うーん、今日は流石にもういいや。何だかどっと疲れが出てきたよ」



 グレイは大きく欠伸をしながらぐっと伸びをする。

 グレイと同様に徹夜状態のランジェも、グレイの欠伸を見ると釣られて口を開きそうになるのをぐっと我慢した。

 自家用車に揺られているのもあり、油断すればそのまま眠ってしまいそうだ。



「アパートに着くまでまだ時間がありますし、先生は軽く仮眠をとってもいいんじゃないでしょうか。ランジェさんは途中で降りますけど、どうします?」


「私は大丈夫です。帰ってからも調べ物がありますし…」


「ランジェも帰ったら流石に寝ろ」



 カネルが呆れながらランジェに指摘する。

 そんな周りの様子をシルクは端の席で静かに眺めているが、どこかぼんやりとした様子だ。



「シルクも流石に疲れてるだろ、この前みたいに仮眠をとっても……」



 その時だった。


 自家用車がブレーキを踏んで停止する。

 急ではなく緩やかに速さを遅めてからの停止であった為、ほとんどの者は軽く身体が揺れる程度で済む。


 しかし、シルクだけががくんと斜め前に傾いた。

 そのまま倒れそうになるのをシャロンが支えるが、シルクは力無く動こうとしない。



「おいシルク!」


「え、シルク!?どうしたんだい!」



 仮眠をとろうとしていたグレイも流石に驚き、支えられているシルクの状態を確かめようと近付く。


 シルクは眠っているように目を閉じ、静かに呼吸している。



「急に倒れるなんて、やっぱり無理をしていたんじゃ」


「流石にちゃんと休ませるべきだったな…」



 横になったシルクにレザンは心配そうな表情を浮かべる。

 カネルもまさか倒れるとは思っておらず、注意不足だったと自責の念を抱いた。


 グレイは溜息をつき、静かに寝息を立てているシルクを見つめながら頭を軽く搔く。



「これがシルクの言っていた気絶ってやつか…」


「……グレイ、やっぱり何か知っているよな?」


「あ…」



 グレイははっとして手で口を塞ぐ。

 ミュスカとシャロンもしまったという表情をしてから、グレイにジト目を向けるも複雑そうに互いの顔を見合わせる。



「シルクさんの為を思って黙っているんだろうが、流石にこの状況については何か知っているなら話してほしいな」



 カネルからの真剣な視線に耐えきれなくなり、グレイは肩を落とす。

 心の中でシルクに謝罪し、観念したような表情を浮かべた。



「事情はアパートに戻ってからでも良いかい?今ここで話してすぐ終わるような内容じゃないんだよ」




 そのまま自家用車は動き出した。


 途中でランジェを降ろす予定であったが、シルクの事態を放っておけずそのままアパートに向かう事になる。

 グレイ達は迷ったが、カネルの後輩であるのと責任感が強い事から、他言無用という条件で了承した。



 アパート前に到着し、グレイは浮遊魔法も使いながらシルクを抱えて中へ入っていく。

 それに続いてミュスカとシャロンも急いで入っていき、カネル達は運転していた執事に礼を言ってから遅れてアパートに入っていった。



 シルクを部屋まで運び終え、グレイ達は一旦部屋を後にする。

 扉が閉まり、ミュスカとシャロンは足を動かすもグレイは立ち止まったままだ。


 二人はどうしたのかと疑問に思いながら振り返る。

 グレイは真顔のまま二人の方を向き、ぽつりと呟いた。




「…シルクって細いと思ってたけど、意外とついてるところはついてるんだね」



 その直後、グレイは二人からグーパンと蹴りを入れられた。

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