170. 共通点
近辺にあるお店をぐるりとまわっていくが、何処も衣服や装飾品が売られているお店であり、シルクは傍観するように無表情のままである。
子猫達はシルクの手を握りながら辺りをキョロキョロと見回し、ティピックはシルク達の様子を優しく見守りながら横に並んで歩いていく。
途中で子猫達がぴたりと足を止め、それに気付いたシルクも瞬時に足を止める。
子猫達の視線の先も服屋なのだが、ショーウィンドウに飾られているマネキンが着ている衣服に注目していた。
白を基調とした、花の模様が描かれているロングワンピース。
丈の長いものだが、シルクの背丈なら着こなせるものであった。
ここで子猫達は、まだ人の姿に戻れていない時にシルクと話していたことを思い出す。
『シルクの好きなものって何?』
『私の好きなもの…そうだなぁ。植物…花が好きだよ』
『花?』
『そう。…見たことある?』
『絵本である』
『そっか。…庭に色んな花が咲いてるんだ。もっと元気になったら一緒に見てみよう。どれも綺麗で、良い香りがするものもあるんだよ』
その時のシルクは優しく微笑んでいたのを、子猫達はよく覚えている。
シルクの着ているシャツ以外で白い衣服は警戒対象として見ていたのだが、ロングワンピースに関しては違って見えていた。
「あれ、綺麗」
人差し指を向けてそうぽつりと呟くと、シルクはそちらに視線を向けて目をぱちくりとさせる。
白い衣服に対して警戒していたのに、と静かに驚いていた。
「おや…全体的に白いものだけど、気になるのかい?」
「白いけど、シルクの好きなお花だから怖くない」
子猫達はシルクに視線を送り、嬉しそうに笑みを浮かべる。
そういうことかとシルクは納得しロングワンピースを見つめる。
その後とある案を思い浮かべ、真剣な様子で口を動かした。
「…つまり、博士の白衣に花の模様を入れれば警戒せずに済む?」
「ぶふっ」
ティピックは想像したのかつい吹き出してしまい、そのまま笑いを堪えるように右手で口を覆いながら肩を震わせる。
子猫達は目をぱちくりとさせ、同時に首を傾げさせた。
「ふふ…それは良い案かもしれないね、後で提案してみよう。……隣にあるものはウィン君が喜びそうだね」
笑いを落ち着かせてから、ティピックはロングワンピースを着ているマネキンの隣に視線を向ける。
そこには赤いドレスを身にまとったマネキンが立っていた。
「真っ赤ですね…」
「シルク君が着るととても映えるだろうね。…試着してみるかい?」
シルクはもう懲り懲りだと言わんばかりに一瞬眉を顰めさせる。
尋ねてみたものの予想がついていた反応に、ティピックはついおかしくなってしまい軽く笑みを零した。
その後再び歩きだし、辺りをぐるりと見渡していると、シルクはとある場所に視線を留める。
婦人服売り場に入っている男女二人。
女性は楽しそうに衣服を選びながら店員と話しているが、男性は少し離れたところの隅で待機していた。
偶に女性は男性に話しかけて似合っているかどうかの確認をしては、男性は軽く相槌を打ちながら適当な返答をしている。
ふとシルクは、男性のつまらなさそうな表情を見ては目をぱちくりとさせる。
何やら妙な気持ちが込み上げてくるような、不思議な感覚を覚えていた。
それは不快感というものではなく、寧ろ安心するようなもの。
もしかしたら、親近感というものに近いのかもしれない。
「何か気になるものでもあるのかい?」
「…いいえ、特にこれといったものは何も」
ぼんやりとした様子のシルクにティピックが声をかけるが、シルクはいつもの無表情で淡々と返答する。
ティピックが軽く首を傾げさせたところで、シルクの手を掴んでいる子猫達が突然ぐいとシルクを誘導するように引っ張った。
「あのお店気になる!」
子猫達の視線の先にあるお店は、日用品やアクセサリー、部屋の装飾品など様々な物が綺麗に並べられている雑貨屋だった。
――
――
「つ、疲れた…」
何着もの試着を終えたグレイは、店内に設置されている椅子に腰掛けては長い脚を伸ばして姿勢を崩す。
アマレットはご機嫌な様子で店員と話をしており、シャロンとミュスカは疲れた様子のグレイに声をかけては労りの言葉を送った。
「本当お疲れ様です。…シルクさんの時もですけど、アマレットさんの勢いが凄まじかったですね」
「先生に合いそうな服を片っ端から選び出して、もはや早業だよな」
「シルクが参ったようになるわけだよ…ところで、そのシルクは何処に行ったんだい?子猫達とティピック君も見当たらないけど」
グレイは店内をぐるりと見渡しシルク達の姿を探すが、先に事情を聞いているミュスカが事情を説明する。
「シルクさん達は近くの店を見てまわっているみたいです。30分前くらいに連絡を受けているんですけど…こちらが終わったことを連絡して合流しましょうか」
「さり気なく逃げてた、だと…」
グレイは溜息をつきながら、肩をがくりと落とす動作を見せる。
その後、グレイはふと思ったことをそのまま素直に言葉にした。
「シルクとティピック君が一緒にって…大丈夫なのかな?」
シャロンとミュスカはぴしりと固まり、一瞬引き攣った表情を浮かべた。
「子猫達も一緒ですし…大丈夫だと思いますけど」
「流石に考え過ぎじゃね?」
二人はつい、以前シルクとティピックが一緒にいた様子を覗き見していた時のことを思い出してしまう。
時に何を考えているのか分からない様子を見せるティピックのことだから、子猫達がいたとしても何かしらシルクにアピールしているのではないだろうか。
そう考えては冷や汗を流してしまう。
「子猫達はずっとシルクにくっついてるもんねぇ…それすらも嫉妬する可能性はない?」
「…有り得そうって思う時点でだよな」
ティピックの独占欲の強さをそれなりに知っているグレイ達は、つい心配の気持ちを渦巻かせるのであった。




