104. 追加報告
「…そういえば、今頃シルク君達はお茶会に参加しているんだろうねぇ」
裏魔法協会の事務所にて、ティピックは思い出したかのようにそう呟いた。
依頼書の整理をしていたウィンがぴくりと反応し、手の動きを止める。
「シルク様がお茶会にですか?」
「あぁ、実は私のところにも招待状が来ていたんだが、生憎今日も仕事が山積みだから…おっと、これ以上は何も言わないでおこうかな?」
室内の温度が下がったのを感知し、ティピックは分かりやすく視線を逸らす。
ウィンは冷たい視線を向けながら身体を震わせている。
「なんて事を…!そのお茶会に参加していれば、シルク様の麗しい御姿をこの目で拝見できたかもしれませんのに!社長、仕事など放っておいて参加すれば良かったではないですか。そして何故私に招待状の事を黙っていたのですか!」
「あっははは、ごめんごめん。仕事がたんまりと残っているんだから仕方が無いだろう。いやぁ、つい思い出して呟いてしまったけど、そんなにお茶会に参加したかったのかい?」
「いいえ。私はシルク様と過ごせられれば十分ですので、正直お茶会自体は二の次でございます。しかしそのお茶会に参加しているシルク様の優雅な振る舞いを見られると思うと…胸が高まりますね」
両手を組んでうっとりとした表情を浮かべるウィンに対し、ティピックは苦笑いしながら頬杖をつく。
実際シルクは上品に振舞う素振りがある為、ウィンが言う事に反論は無い。
そこで、扉の方からノックの音が響き渡る。
その瞬間ウィンは表情を切り替え、背筋を伸ばして扉の方へと向かう。
扉が開かれ、ウィンの案内と共にやって来たのは深くフードを被った一人の人物。
ティピックは営業スマイルを浮かべると同時に、瞳には真剣さを宿らせていた。
「久しぶりだね。何か収穫はあったかい?」
「…これを」
フードの人物は手元に分厚い封筒を取り出し、ふわりと浮かせてはティピックの手元へと滑り込ませる。
ティピックは封筒を開けて中身を確認すると、軽く頷いてから作業机に静かに置いた。
「今回も収穫が得られたみたいで安心したよ」
「…正直、難航しているがな」
「そうか…じゃあ次の収穫はまた期間が空きそうだねぇ」
「…また、連絡する」
フードの人物はそのまま振り返り、真っ直ぐ扉へと向かっては静かに事務所を後にした。
ティピックは封筒を再び手に持って中身をすべて取り出し、一枚一枚頁を捲っていく。
途中の頁で手が止まり、目を細めて顎に手を添えた。
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―――異世界生物についての報告。
発見された異世界生物のうち、火吹き鳥(異種)を実験対象として調査機関に提出。
通常の火吹き鳥との比較実験を行い、以下のデータがとられた。
・形状:通常と変わらず。
・食形態:通常と変わらず。
・羽の構造:通常と変わらず。
・爪の構造:通常と変わらず。
・魔力量:通常の推定十倍の数値。最大値であるかは不明。
・治癒能力:追加調査が必要。
治癒能力については以下のデータがとられている。
・羽や爪の採取後、採取したはずの部分が再生したかのように元通りになっていた。
※採取された一部はそのまま形状を保ち、保管済み。
再生時間については他の異世界生物の比較実験も行い、統計をとる必要があると判断。
異世界生物が発見された地域の分布、年代は現在調査中。
幅広い分布となっており、発見時期に規則性が見られず、今後も新たに異世界生物が発見される可能性も考えられる。
実験対象を増やし、実験項目の追加を検討して調査を進めていくものとする。
報告者:魔物専属部隊隊長 ゲーシェ・エスリー
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