アリアちゃんとウサギちゃん(食料)
~異世界に来て2日目の昼~
「お腹すいたわ……」
へこんだお腹をさする。
グゥゥゥゥ……
そういえば、この世界に来てまだ一度もご飯を食べていない。
魔王の血を引くわたしは、10日間ぐらいなら何も食べなくても生きていられる。
それでも、昨日からずっと歩き続けているし、この世界の魔王とも戦った。
そろそろ何か食べたい。
「町に着いたら、ギルドの前に食堂ね」
~1時間後~
町が見えてこない。
永遠に一本道が続いている。
あんなに美しいと感じていた、道の両側に広がる草むらも、見飽きてしまった。
それでもわたしは、歩き続ける。
ご飯と冒険者ギルドを求めて。
「ん?」
目の端で、何かが動いた。
目を凝らしてよく見てみる。
100メートルぐらい離れた草むらに、白いモコモコしたモンスターが3匹いた。
「ビッグラビットに似ているわね」
ビッグラビットは、アリアが元いた世界に生息する、長い耳と丸いしっぽを持った2メートル前後の茶色い草食系魔獣である。
「けど、白いし、ちっちゃいわね。 60センチくらいかしら?」
まぁ、でもこの世界に来て初めてのモンスターね、ワクワクするわ
……それに、なんだかカワイイ
ゆっくりと白いモフモフに近づいた。
モンスターはすでに、わたしの方を見ている。
とっくにわたしに気づいているけれど、いっこうに逃げる気配がない。
モンスターとの距離が、50メートルを切った。
ピョンピョンピョンッ―――――
「えっ、なんか近づいてくる!」
不意に、白いフワフワしたモンスターはこっちに向かってきた。
ピョンピョン飛び跳ねながら近づいてくる。
草むらの上を跳ねながら向かってくるその愛くるしい姿に、わたしは悶絶した。
か、カワイイッ!
モフらせて!
ペットにしたい!
でも、冒険者がペットを飼うのはおかしいわよね。
……いや、ちょっと待って
「そういえば、『冒険の書』に書いてあったわ!」
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~『冒険の書・下』、古の竜<エンシェント・ドラゴン>との契約より~
「我を仲間にしたいだと? 笑わせるな」
大空を羽ばたく、誇り高き竜の王は、いきなり現れて自分を仲間にすると宣言した冒険者パーティーに、侮蔑の視線を向けた。
人間のような下等生物が、我と対等な関係を結べるなどと思いあがるな、と言いたいのだろう。
「魔王を倒すには、お前の力が必要なんだ!」
魔王城に張られた結界を破るには、古の魔術が必要だ。
1000年ほど前には、人間の中にも使えるものがいたらしいが、今の人間界に、古の魔術は伝承されていない。
唯一、古の魔術を知っているのは、魔王と、目の前の竜だけである。
俺たちは、絶対に古の竜を仲間にしないといけない。
「お前たち人間が、魔王に滅ぼされようと知ったことではない。 弱者が滅びゆくのは、世界の理。 我を仲間にしたいなら、それだけの力を、生きるにたる価値を示せ!」
古の竜はそう言うと、空気を揺るがすほどの咆哮をあげ、灼熱の炎を吹いた。
「氷晶の城壁<クリスタル・ウォール>!」
ネイがとっさに氷の壁を召喚し、竜の炎を防いだ。
(略)
「フハハハハハハハハハハハハハッ!」
竜は声高らかに笑った。
「我が人間如きに深手を負わされるとは! たしかに、お前たち一人ひとりの力は取るに足りない。 しかし、その力が合わされば我を倒せるほどの刃となる。 これが、人間の力か。 いいだろう、仲間になってやる!」
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そうだ! このモンスターを仲間にしよう!
わたしは、思った。
『冒険の書』にでてくる、古の竜<エンシェント・ドラゴン>。
主人公たちとの激戦の末、仲間になって共に魔王を倒すモンスター。
その役を、この白いモフモフしたモンスターにやって貰おう。
竜を仲間にするのも悪くないけど、わたしは女の子だから、出来ればかわいいモンスターを仲間にしたい。
「こっちにおいで~♡」
しゃがんで、こちらに敵意がないことを示そうとする。
ピョンピョンピョンピョンッ―――――
モフモフ3匹は、アリアの目の前で止まった。
目と目が合わさる。
わたしは、そっと右手を伸ばした。
触りたい!
そのモフモフ!
右手が、あともう少しでモフモフに触れる。
モンスターはピクリともしない。
あと、もう少し!
その時――――
ガブッ!!
「グルルルルッ!」
「えっ?」
噛まれた。
白いモフモフに噛まれた。
噛まれるまで、口を閉じていたから分からなかったが、このモンスター、意外と鋭い牙を持っている。
そして、肉食獣のような唸り声。
――――そう、肉食獣です。
なんだろう……この気持ち。
『いままで一緒に戦ってきた仲間が、実は真のラスボスだった』みたいな、そんな気持ち。
目の前の光景が信じられない。
「……ねぇ、このモンスターのステータスを教えてちょうだい」
『了解ッス』
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名前:牙兎<ファング・ラビット>
ランク:C
レベル:19
職業:小型肉食獣
攻力:(ランク補正)83 × (レベル補正)2.4 = 199
体力:(ランク補正)40 × (レベル補正)2.8 = 112
物耐:(ランク補正)38 × (レベル補正)2.1 = 80
敏速:(ランク補正)120 × (レベル補正)3.5 = 420
魔力:(ランク補正)3 × (レベル補正)0.1 = 0
魔耐:(ランク補正)24 × (レベル補正)0.8 = 19
[装備]
なし
[固有スキル]
<敵探知>、<気配遮断>
[獲得スキル]
なし
[ドロップアイテム]
<生肉>、<粗悪な白毛皮>、<牙兎の牙>、<獣骨・小>、<魔核石・極小>
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せっかく、仲間にしてあげようと思ったのに。
クソザコ肉食獣だったなんて。
もういい……こいつには昼飯になって貰おう。
「火球<ファイヤー・ボール>」
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火球<ファイヤー・ボール>:
火属性の下級魔法。
説明は不要。
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ボンッ! ビチャッ―――
噛まれていた手に魔力を集中させ、火球を放った。
魔方陣は、手から少し離れたところに現れるので、火球はモンスターの体内で破裂した。
はじける肉塊。
地面が血と肉で赤く染まる。
「グルッ!?」
残りの2匹が、目の前の惨劇に驚き一歩後ろに下がる。
ようやく、力の差を思い知ったのだろう。
「……これじゃ、食べられないわね」
ジロッ―――
まだ食べられる2匹を睨んだ。
弱者が滅びゆくのは、世界の理……か。
世知辛いわね。
「雷撃<ライトニング>」
~食事タイム~
「……まぁ、そりゃ味ないわよね」
火で焼いただけの肉。
魔王城じゃ、こんな質素な料理たべたことない。
物足りない。
――――けど
「なんか冒険者って感じするわ!」
『良かったっスね』
「そうね、まぁ仲間のモンスターはまた考えればいいわ」
お腹いっぱいになって急に眠たくなった。
もう暗くなってきたし、明日また町を目指そう。
「もう寝るわ、おやすみ~」




