アリアちゃん、魔王を倒していく
草原の一本道を歩いていると、向こうから男が歩いてきた。
身長は180cmくらい、
耳が隠れる程度に伸びた白髪に、鋭い隻眼。
片目には大きな傷がある。
金色の鎖がついた黒いコートを着ていて、異様な雰囲気を醸し出している。
腰には、邪悪そうな黒剣を下げている。
目が合った。
私は、目をそらしたが男は視線を外さない。
なんなのコイツ。
いくら私がカワイイからってじろじろ見すぎでしょ。
それになに? その隻眼は?
なんか冒険者っぽくて羨ましいのだけれど。
―――男とすれ違う。
「お前、けっこう強いだろ」
そういうと、男はすばやく剣を抜き、アリアの首を狙って横に切りつけた。
神速の抜刀。
「おそろしく速い手刀、俺でなきゃ見逃しちゃうね」の人でも、見逃してしまうほどの斬撃。
―――まぁ
いきなりで少し驚いたが、私は魔王の娘。
攻撃をする瞬間の殺気を感じ取り、即座に回避ことができる。
とっさに体勢を低くし、剣を避ける。
そのまま腹パンしてやっても良かったが、とりあえず後ろに跳んで距離をとった。
これが、いわゆる荒くれ冒険者の小競り合いというやつなのかしら?
なんか違う気がするけど、まぁいいわ。
殺気と殺気がぶつかり合う。
「いきなり切りつけてくるなんて頭おかしいんじゃないの? あなた」
「フム……今のを避けるとは。 お前は何者だ?」
「フム……私が先に質問したんだけど」
(こいつ、人の話を聞かない系ね)
男は、剣先を向けて威嚇してくる。
はぁ、実力差も分からないなんてコイツは、『冒険の書』で言うところの序盤に出てくる噛ませ犬ね。
でも、登場が早いわ。
まだ私、冒険者になっていないのに。
空気を読めない奴はお仕置きよ。
私は、男を睨みつけた。
「私の名前はアリア! 冒険者になって、いずれ魔王を打ち滅ぼすもの!」
とりあえず、雰囲気を出すため盛大に名乗った。
実は、ちょっとうれしかったりする。
き、決まったわね……!
「フハハハハハ、ちょっと強いからって図に乗るなよメスガキ。 お前に俺は―――」
「食らいなさい! 不滅の地獄炎<エターナル・ヘルフレイム>!」
手を前に突き出し、魔法を唱える。
紫色の光に包まれる手のひら。
その光は、瞬時に前方に拡散し巨大な魔方陣を形成した。
ボォォォッ!
「えっ? ギャァァァァァァァァァァァァァ!」
とつじょ、男が蒼い炎に包まれた。
魔方陣からなにか出てくると思っていた男は、避ける準備をしていたがそんなの関係ない。
まさに、不可避の一撃。
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不滅の地獄炎<エターナル・ヘルフレイム>:
魔王級魔法。 (初級<中級<上級<最上級<魔王級と神級)
地獄に堕ちるまで、決して消えることのない蒼炎で敵を包む。
アリアとアリアの父、兄2人しか使用することのできない魔法。
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「とりあえず、冒険者っぽいセリフも言えたしあなたはもう用済みよ。 私に対する愚行を地獄で悔いるといいわ」
「おのれぇぇぇぇぇ! 最上級魔法:伝説の大渦巻<メールストローム>!」
男は、剣を空高く掲げて魔法を唱えた。
魔方陣が空に現れ、そこから巨大な水の渦が召喚された。
渦は、アリアと男を巻き込み、激しく荒れ狂う。
最上級魔法なだけあって、広範囲かつ、もの凄い水圧だ。
なるほど。
水で火を消そうって算段ね。
ついでに私に対しての攻撃にもなる。
噛ませ犬にしてはなかなかやるじゃない。
褒めてあげるわ。
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伝説の大渦巻<メールストローム>:
最上級魔法。
広範囲に水の渦を召喚し、水圧で敵を押しつぶす。
範囲を縮めれば、それだけ圧力が増す。
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「なにっ!? 炎が消えないだとっ! 何故だァァァァァァァァ!」
「ッッボボボボボボボボッ!ボゥホゥ!ブオオオオバオウッバ!」
→「その炎は決して消えないわ! 観念しな――― ちょっ! この水じゃま!」
「ならば、せめて道ずれに――――!」
バァ――――――――――――ンッ!
私は、うっとおしそうに水を片手で薙ぎ払った。
薙ぎ払った風圧で、周りを取り囲んでいた水……だけでなく渦自体がかき消される。
一瞬にして、男の魔法は消え去り、空には大きな虹ができた。
「……へ?」
「プッ……逝きなさい」
男のマヌケな表情に、思わず笑ってしまった。
いけない、いけない。
噛ませ犬なりに頑張ったんだから笑うのはかわいそうだわ。
――――でも、そろそろ終わりよ。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
魔方陣に注ぐ魔力をさらに多くする。
蒼炎はさらに強くなった。
男は、地面を転がって炎を消そうとするが、当然消えない。
『あの……アリア様』
突然、頭の中にスキル<観察王>の声が響いた。
「今いいとこだから、ちょっと黙ってて」
『いや……でも』
「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 絶対に許さんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
男は息絶えた。
後には黒焦げの死体が残る。
どうやら、無事に地獄へ堕ちたようだ。
『あっ……』
「ふぅ、なかなかしぶとかったわね。 で、なに?」
『えっと……その大変言いにくいんスけど』
「早く言いなさいよ。 町に行って冒険者にならなくちゃならないんだから」
『いや……その』
「そして行く行くは魔王をうち滅ぼし……ウフフフッ」
『……こいつ、魔王っス』
「フフフフッ……え?」




