マジックバックの中身・その1
扉の向こうは……草原の中の一本道であった。
季節は春。
太陽の光がやさしく降り注ぐ。
一本道の左右には、まだ生えてきたばかりの若葉と、小さな黄色い花、紫色の花が所狭しと咲いている。
それらが風に揺れる様は、まるで踊り子のようだ。
わたしは感動した。
異世界ってうつくしい。
元いた世界とぜんぜん違う。
ここでなら、胸躍る冒険ができる気がする!
「なんて素晴らしい世界なのかしら!」
両手を大きく広げ、異世界を全身で感じる。
あぁ、異世界の風は心地よい。
「よし、まずは貰ったバックの中身でも確認しよう。 冒険に使えそうなモノがあったらいいな、ポーションとか?」
まぁ、ポーションといってもわたしが使うんじゃなくて仲間たち用なのだけれど。
わたしは、勝手に傷が回復していくから大丈夫。
バックの中に手を入れ、何か1つ取り出してみる。
出てきたものは、粘土でできた質素な杯だった。
「……なにこれ? ん?」
杯の後ろに小さな紙が貼ってあった。
細かい字で何か書いてある。
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大天使の聖杯:
見た目はただの古びた杯なんだけど、実はこれ、天使族の四秘宝の1つで、水を汲むとその水がハイポーションになっちゃうの。
私のかわいいアリアちゃんに傷がついたら大変だ!
どんなに小さなかすり傷でも、ポーションを飲んで癒すように。
かすり傷か……。
なんだか10年前の家族旅行を思い出すなぁ。
世界征服を成し遂げたお祝いに、久しぶりに家族で観光に行ったイグアス峡谷で、はしゃいだアリアちゃんが崖から落ちちゃって。
急いで、魔王軍を総動員して探したら1000メートル下の魔獣たちの巣でぐっすり眠ってたのを部下が見つけて。
(ちなみに、アリアちゃんを見つけた優秀な部下には、褒美として魔王軍幹部の地位と神級の装備を与えておいたよ!)
傷がついてないか確認したら、膝に小さなかすり傷がついてるだけで、あんなに高いとこから落ちたのに平気な顔でぐっすり眠っているのを見て、子供の成長は早いなぁ~~と、パパ感動しちゃったよ。
そういえば、あのあと―――
(略)
アリアちゃんの世界一のパパ、魔王より
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な、長い!
あと、ちょっと恥ずかしい!
皆の前では『アリア』なのに、こういうときは『アリアちゃん』なのよね……。
あと、
たしかに、ポーションが欲しいって言ったけど、戦闘中に「わぁ~~~、攻撃をくらっちゃったぁ。 ポーション作って回復しないとぉ~~」なんてやってられない。
ワレモノ持って戦うのもなんか違うし。
不良品ね……。
「つ……次はなにかしら?」
聖杯をバックの中にしまい、他のモノを取り出してみる。
今度は、赤いボタンのついたボールが出てきた。
全部で6個。
「なにこれ? ボタン?」
黒い丸い球に、赤いボタンが1つだけ付いている。
押しちゃいけない気がするけど、なんだろう、押したい……。
「うぅ、右手が勝手にボタンへ……ん?」
指がボタンに触れる直前に、地面に小さな紙が落ちているのに気付いた。
球を地面に置いて、神を拾う。
どうやら、この球の説明書(父が執筆)らしい。
バックから球を取り出したときに、落ちてしまったのだろう。
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対魔王爆弾:
これは、世界征服の時に敵から奪った爆弾で、なんでもボタンを押して10秒たったら半径1キロ以内が吹き飛ぶらしい。
対魔王爆弾とかチョーシこいた名前つけたのに、魔王に奪われ逆に使われた時の敵の顔はなかなか見物だったぞ。
アリアちゃんにも見せたかったなぁ~~。
あ、そういえば―――
(以下略)
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「あ、あやうくボタンを押すところだったわ……」
ボタンを押す前に、落ちた紙に気づいてよかった。
………。
あれ?
この爆弾、ものすごい欠陥品じゃない?
ボタン押した10秒後に半径1キロ以内が吹き飛ぶって、ボタンを押した人も一緒に吹き飛ぶじゃない!
捨て身の一撃……恐ろしいわね。
「欠陥品ね……そっとバックの中にしまっておこう」
ボタンが沈まないよう慎重にバックの中に戻し、他のモノを取り出した。
そろそろ、冒険に使えるものが欲しい。
「これは……ボトル?」
バックから出てきたものは、円柱型で、上部に穴が開いているピンク色のボトル。
例のごとく、説明書が張り付けてある。
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簡易トイレ(女の子用):
トイレに行きたいけど、近くにない!
そんな時に使えるのがこの『簡易トイレ』!
スカートの下に設置して、使用しよう。
そういえば、アリアちゃんも7歳ごろまでオネショし―――
(以下略)
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ビリビリッ―――
負の歴史は、処分しないと……。
いや、確かに、冒険で使えるものが欲しいって言ったけれど……。
冒険のトイレ事情を心配されるのはイヤだ……。
しかもピンク色って、変なとこまで凝ってるし。
ハァァ―――
「もう、バックの中身を確認したくなくなってきたわ……」
その後も、バックの中身を確認していったが、どれも何かしら不備や欠陥があり、冒険に使えるようなものはなかった。
そして、とうとう最後の1個に。
「やっと最後の1個……長かったわね」
最後の1個。
バックから出てきたものは、金や銀、宝石で豪華に装飾された四角い手のひらサイズの箱だった。




