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アリアちゃんと、キングスライム討伐の報酬


 ~キングスライム討伐の宴が終わった後~


「そ……そういえば、お金なかった!」


 ガクッ……。


 やってしまった!

 わたしはギルド内酒場の会計場で、地面に膝と手をつきながら後悔していた。


 町に入るとき入市税を払えなかったこと、冒険者登録のときにお金を持っていなくてローゼが代わりに払ってくれたことをすっかり忘れて、めっちゃ料理とお酒を注文してしまった……。


 ど……どうすればいいの?


 わたしは救いの手を……お金を求めるようにローゼを見た。


「ぼ、僕の分はなんとか払えるんですけど……アリアさんの分まではちょっと……」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


 わたしは冒険者なのにぃぃぃぃ!

 無銭飲食なんてカッコ悪すぎるぅぅぅぅ!

 「わたしは冒険者なのよ? 釣りはいらないわ!」って言いたいのにぃぃぃぃ!


 会計担当のお姉さんは、「えぇぇぇ……わたしはどうすればいいのぉ……?」と言いたげな、困惑した表情をしている。


 会計の順番を待っている他の冒険者たちも、「払ってあげたいけど……俺もあんまり持ってない……」と気まずそうな顔で視線を外していた。

 中には自分の財布の中を確認し、驚愕の表情を浮かべている冒険者もいる。


 騒がしい宴のあとの余韻は……いささか重すぎた。


 わたしの泣き声だけが響く陰鬱なギルド……その陰鬱を拭い去るように、受付嬢の明るい声がこだました。


「ローゼさんとアリアさ~~~ん! キングスライム討伐の報酬が出ていますよ~~~」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――報酬!?」


 次の瞬間にはもう、自然と体が動いていた。

 わたしは全速力で受付嬢の元まで駆け付け、手を握った。


「報酬ってなに!? お金もらえるの!?」


「はぅっ! あ、アリアさん近いです! それにわたしの手を握って……そんなことされたらわたし……アッ!」


 なぜか受付嬢は顔を火照らせ身悶えしているが、今はそんなことにかまっていられない。

 何よりもまず……お金!


「わたし、お金ないのについつい料理とお酒の注文しちゃったのぉぉぉぉ! お願いお金ちょうだいぃぃぃぃ!」


 わたしは受付嬢に抱きついて懇願した。


「あ、アリアさんの体温がっ! もうダメ、わたしイッちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅ!」












「コホンッ……では、初めての報酬受け取りになるので簡単に説明させてもらいますっ!」


 カウンターの前にあるイスに座って、報酬について説明してもらうことになった。

 となりにはローゼもいる。


「その前にちょっと聞きたいのだけれど、どこかでわたしと会ったことあるかしら? なんかどこかで会った気がするのだけど……」


「今日の昼間にアリアさんの冒険者登録を担当させてもらったカタリナですっ!? ヒドイですよぉ!」


 忘れられていたと知った受付嬢のカタリナは涙目でツッコむ。


 ご、ごめんなさい!

 あのときは冒険者になれるってウキウキだったからそこまで気にしていなかったの!


 ……そ、そんな泣かなくてもいいのに。


「ひっぐ……ひっぐで、では説明させてもらいますね……」


「……お願いします」








「では、こちらの紙を見てくださいっ」


 カタリナ嬢がカウンターの下から1枚の紙を出し、わたしたちの前に置いた。

 なにか色々書いてある。


「わたし説明するのヘタクソなので、この紙を読んで理解してくださいっ!」


「えぇ……」



=====================================


 ☆これであなたも冒険者!~報酬ゲット編~


 冒険者の収入源と言ってもいい『報酬』。

 今回はそんな冒険者のいやらしい所を説明するよ!

 それじゃあ、レッツゴ~~~~~!


 1、クエスト達成報酬


 クエストを達成すると必ずもらえる基本報酬です。

 報酬の金額は、依頼者が全額支払います。

 難易度や、クエストの種類によって依頼者に最低ラインの金額を提示し、それ以上の金額を払ってもらうので冒険者の報酬が極端に減ることはありません!

 良かったですね!


 以下に大体の報酬を載せておくね♪


 依頼討伐クエスト……3~100000G

 依頼採集クエスト……50S~10000G

 ギルドクエスト……1000~1000000G

 緊急クエスト……10000~ ? G


 (100S→1Gです。 食事1回で約20Sかかる感じですね)


 2、アイテム報酬


 クエストでゲットしたアイテムをギルドで買い取らさせてもらいます!

 アイテムの品質や鮮度、傷がついているかなど色々な基準で鑑定し金額を決めさせてもらいます。

 依頼採集クエストで余分に手に入れたアイテムも買い取らさせてもらうので、できるだけいっぱいゲットすることをお勧めします!

 レッツ、搾取!


 説明は以上になります。

 それでは皆さん、ステキな冒険者ライフを満喫してください♪


=====================================



「……異様にテンション高いですね」


 ローゼがツッコむ。


「……そうね」


 報酬の説明がこんなにキャピキャピしてて良いのだろうか?

 イヤらしいって……まぁ収入の話はたしかにイヤらしいけど。

 それに、クエスト達成報酬は依頼者が全額支払うとかそういう情報いらないのよ……受け取りづらくなるじゃない。


「今回のキングスライム討伐は緊急クエストとして処理させていただきましたっ。 報酬は11000Gになります!」


「「11000G!!」」 「……ってどれくらい?」


 とりあえず雰囲気を読んで驚いておいたけど、正直、どのくらい凄い金額なのか分からない。

 そういえば、わたしがさっき食べた料理の会計が70Sだから……えっと。


 S(セント)って何よ!?

 G(ゴールド)って何よ!?


「そうですねっ。 駆け出し冒険者の方の平均月収が250Gくらいですので2人で割っても約2年分の収入になりますよっ!」


 いや、聞きたかったことと若干ちが―――2年分って稼ぎすぎでしょ!


「それに、キングスライムの半透膜と体液をギルドのほうで買い取らさせていただきましたので、アイテム報酬で1000G出させていただきますっ! 魔核石がきれいに残っていたらもっと高かったんですけど」


 なんか、わたしの求めていた冒険とちがう……。


 序盤は貧しいながらも日々の冒険を楽しみながら精一杯生きたかったのに。

 馬小屋生活なんかもしてみたかった。

 ぜんぜんお金にならない雑魚モンスターを倒すだけで仲間と一緒に喜んだりして。


 小さな事にも喜びを感じられる……それが駆け出し冒険者の醍醐味なのに。


「……アリアさん、うれしくなさそうですね」


 ローゼが心配そうにわたしを見つめる。


 あれ? 

 そういえば、カタリナ嬢は言っていた。

 『ローゼさんとアリアさ~~~ん! キングスライム討伐の報酬が出ていますよ~~~』


 もしかしたら……


「ねぇ……キングスライム討伐の報酬は、参加した冒険者全員に渡されるの?」


「いや、アリアさんとローゼさんだけに報酬が渡されます。 討伐したのは2人ですからっ」


 やっぱりそうだったわ。

 キングスライム討伐の報酬は、わたしたちしか貰えない。


 それならこの大金を、参加した冒険者全員に分散すれば受け取る金額をかなり少なくすることができる!

 め、名案すぎるわッ!


「じゃあ、その大金はみんなで山分けにしてもらえるかしら?」


「「……えぇッ!?」」


 フフフッ……2人とも驚いているわね。


「だって、みんなが足止めしてくれたり、消化されててくれたおかげで討伐することができたのよ? 報酬を受け取る権利は参加した冒険者みんなにあるわっ!」


「消化される必要性はイマイチよく分かりませんが……アリアさんがそういうのなら。 ローゼさんはどうしますか?」


「ぼ、僕ですか!? ん~~~……正直、こんな大金貰ってもどうすればいいのか分からないので、自分もアリアさんの考えに賛成します!」


 よく言ったわローゼ!

 それでこそわたしのパーティーメンバーよっ!


「分かりました……では、精算をしたのちまたお呼びしますっ」










 ~30分後~


「みなさ~~~~ん、カウンターに集合して下さ~~~~い!」


 カタリナ嬢が冒険者のみんなに集合をかけた。

 どうやら、報酬の精算が終わったようだ。


「おい、お前らァァ! 我らの女神様がお呼びだぞぉぉぉぉぉぉ!」


「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」


「か、かわいいブヒ~~~~!」


 冒険者たちは雄叫びをあげながら、カタリナ嬢の周りに集まる。

 わたしとローゼも、カタリナ嬢のもとへと行く。


「コホンッ……実はですね、アリアさんとローゼさんがキングスライム討伐の報酬をみんなで山分けしようと提案がありまして、これから報酬の分配を行おうと思いますっ!」


「おい、お前らァァ! 我らのアリアちゃんが報酬を俺たちにまで分けてくれるぞぉぉぉぉぉぉ!」


「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」


「か、かわいいブヒ~~~~!」


 冒険者たちはとてもうれしそうだった。

 なんかちょっと恥ずかしい……。


「では、まずアリアさんから報酬の受け渡しをしますねっ!」


「は、初めての報酬ってなんだか緊張するわね」


「ではアリアさん、手をお出しくださいっ!」


 わたしは、両手を前に出した。


 ワクワクッ……ワクワクッ!


―――――カタリナ嬢は、わたしの両手に金色のコイン1枚を置いた。


「報酬の1Gになりますっ!」


 ……ん? ちょっと待って。


「あの……これだけ……?」


「はいっ! 討伐に参加した冒険者だけでなくギルドの係員、アイテム回収業者など討伐に関わったみんなで山分けした結果、報酬は1Gとなりましたっ!」


「「……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」 (わたしとローゼ)


――――結局、食事代の70Sを払ったわたしの持ち金は、30Sだけになりました。


 (100S→1G)









「……ねぇ、30Sじゃ馬小屋も借りることができないみたいなのだけれど、わたしはどこで一夜を越せばいいの?」


「……僕の借り部屋に来ますか?」


「……お願いします」


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