いざ、異世界へ・その1
「いいなぁ、私もこんな冒険がしてみたい……」
そう呟いた少女の、わたしの名前はアリア。
エルフ族の母から授かった長い耳と、大きな青い瞳
そして、魔王である父から授かった艶やかな黒髪が特徴的な
まだまだ幼い、小さな女の子(5才)です。
そんなわたしは今、魔王城の書庫の床に寝そべって
足をパタパタしながら
ある一冊の本を読んでいます。
その本の名前は『冒険の書』。
かつて、父である魔王が人間たちから奪った本です。
その本には、ある冒険者パーティーの胸躍る冒険話が描かれていました。
最弱パーティーが、努力と友情、そして奇抜な発想で幾多の苦難を乗り越えながら成長し、ついには魔王を倒す、そんなお話。
父親が過保護なせいで魔王城の外に出れない、まだ幼いわたしにとって
その本に書かれた冒険話はとても魅力的だった。
……最後に魔王を倒すところも、外出を許してくれない自分の父を撃破してくれているようで、なんだか好感を持てました。
10歳になって、屈強な家臣(最低でも20人)を連れての外出が許されるようになってもわたしの冒険者に対する羨望の念は消えることはなかった。
護衛が守ってくれているから危険な状態に陥ることもないし、町に住んでいる魔族たちどころか、野蛮で有名な魔獣たちでさえ、魔王の娘であるわたしに媚びへつらう。
……外の世界も魔王城の中とたいして変わらない。
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ちなみに、わたしはあまり外出しないの。
理由は主に2つ……。
1つ目は、おトイレ中に無防備な私を護衛しようと、家臣たちが便所を囲んで警護をすること……。
ハァ、とんだ羞恥プレーだわ……。
「お嬢様は今、無防備でいらっしゃる! 全力でこのトイレを死守しろ!」
「「「了解!」」」
「……お願いだからやめてよ」
2つ目は、護衛部隊の隊長がコワイこと……。
言うこと聞かないと、お尻ペンペンしてくるの。
お尻が1週間ずっと赤く腫れるの……。
「お嬢様、もう定刻を過ぎています。 魔王城に帰ります」
「イヤだ、イヤだ! あんなところに戻りたくない!」
「あんまりダダをこねるとお尻ペンペンしますぞ」
「イヤだ! もうお尻ペンペンはイヤだ! 帰る! わたし魔王城に帰る!」
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14歳になったわたしを祝う成人パーティーが行われた次の日……
そう、わたしにとって運命の日とも呼べるその日に、
魔王(父上)はわたしと、兄であるルインとマルスの3人を謁見の間に呼んだ。
1000を優に超える文官や貴族が、謁見の間で声一つ出さずに整列している。
皆の視線は魔王に集中していた。
父上の容姿は、黒い角が二本生えていること以外、人間とたいして変わらず、むしろ家臣や貴族たちの方が禍々しい姿をしている。
しかし、身から放たれるオーラや瞳に宿る冷たい輝きは、十分に魔物たちを統べる王としての器を物語っている。
―――――わたしは、ああいう邪悪そうな魔王と戦いたい……。
レッドカーペットの上で、膝をつきこうべを垂れるわたしと兄2人。
金、銀、宝石、そして数多の人骨で装飾された、悪趣味な椅子に座っている父上。
緊張が張り詰めるなか、父上が最初に口を開いた。
「……昨日、アリアが14歳になったことでお前たち3人とも、晴れて成人したことになった。 そこで、私はお前たち三人の中から私の後継者、つまり二代目魔王を選出することにした」
ザワザワッ―――
父上の言葉にざわつく文官や貴族。
父上が、初めて後継者問題について口にしたのだ。
それも、父上の前で膝をついている3人の中から後継者を選ぶと。
貴族たちは、3人のうち誰の後ろ盾になろうかヒソヒソ話し合い、文官たちは、3人の中で誰が最も次期魔王に適任であるか言い合っている。
―――――魔王になんてなりたくない!
場が騒然とするなか、長男であるルインが父上に質問をした。
「父上、どのようにして後継者を選抜するのですか?」
ルインの質問に対する父上の返答を聞き漏らさぬよう、再び場が静まり返る。
「まぁ、そう焦るな。 ……お前たち三人が成人したら後継者を選ぶ、そう決めてから、私はずっと考えてきた。 魔族を統べる魔王に必要なものは何であるのか、どうやってお前たちの素質を見極めればよいのか。そして私は答えを見つけた」
ゴクリと唾を飲む音が、ところどころで鳴り響いている。
歴史が動く、この場にいる者はみな、そう確信した。
父上は手を前にかざし、誰も聞いたことのない魔法を唱えた。
「この世の理を超越する扉よ、我が絶大なる魔力の下に開け! 次元扉<ディメンショナル・ドア>!」
父上が魔法を詠唱し終わった直後、謁見の間が光に包まれた。
影も残らないほどの眩しい光。
その光は急速に縮んで、私たち三人の前で扉の形に変化し、パッと消えた。
……光が消えた後には、木で作られたなんの変哲もない扉が残った。
「お前たち三人には、これからこの世界とは違う世界……異世界に行って貰う。 そこで一番最初にその世界を征服できた者に、二代目魔王の座を渡そう!」




