アリアちゃんの願い
「エェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
これがわたしたちの連係プレー&路地裏で辱められたせめてもの仕返し(自分のせい)!
行ってきなさい!
わたしの投げたローゼは正確にキングスライムの魔核石に向かって飛んで行った。
さすがはわたし! コントロールも抜群ね!
え? 思いっきり魔核石にぶつかったらローゼが木っ端みじんになっちゃうって?
大丈夫!
心配しなくていいわ!
ローゼに渡した剣にはエンチャントがかかっていて、魔核石に剣が触れた瞬間に魔核石の方が木っ端みじんになるから!
だから、ローゼは魔核石に剣を突き立てるだけでい―――――
あれ? ローゼ、頭から突っ込んでいってない?
だ、ダメじゃない!
そんな頭から突っ込んだら木っ端みじんに……
――――――ふと、頭の中によぎる光景。
冒険者の称号を剥奪され、牢屋に閉じ込められるわたし。
牢屋の壁をぶっ壊し逃亡するも、指名手配され追われる身となる。
もう、冒険者に戻ることはできない。
わたしは、誰もいない辺境の地で寂しいスローライフを送る。
罪状は『オシッコしているところを見られた腹いせに、被害者をキングスライムめがけてぶん投げ木っ端みじんにした罪』
ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
悪かった!
わたしが悪かったからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
お願いだから死なないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
もうダメだ。
そう思った次の瞬間、ローゼは剣を前に突き出した。
バァ―――――――――――ンッ!
すさまじい爆発音。
ローゼは間一髪のところでキングスライムを討伐したのだ。
エンチャントのかかった剣に触れた直後、魔核石は木っ端みじんになり塵と化す。
衝撃でキングスライムの半透膜も破裂し、紫色の体液と飲み込まれていた冒険者が吹き飛んだ。。
「あ痛った~~~」
「あ痛って~~~」
吹き飛んだ冒険者たちは地面に落ちて、うめき声をあげた。
冒険者たちは全員、無事だったようだ。
魔核石を間一髪のところで破壊したローゼは減速し、緩やかな弧を描きながら地面に落下しようとしていた。
わたしは全力でローゼの元まで走り、胸で受け止めた。
ボフッ―――――
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアリアさん!?」
「なんでもっと早く剣を使おうとしなかったのよぉぉぉぉぉぉ! 心配したじゃない!」
「えへへ、恐怖で体がすくんじゃって」
ローゼは恥ずかしそうにうつむいた。
そして一息間をおいて、わたしを見つめる。
「……ありがとうございます、アリアさん」
「え?」
「アリアさんが僕をキングスライムめがけて投げたのは、僕の覚悟を試すためだったんですよね」
え? なに?
ただ路地裏での仕返しも兼ねて冒険者っぽいことをしたかっただけなのだけれど……
なんか勝手にいい感じに勘違いしてくれてる!?
「僕、アリアさんと一緒に冒険したいです!」
「そ……そうね!」
わたしは、とりあえず話を合わせておいた。
都合よく勘違いしてくれているならそれに越したことはない。
まぁ、でも……ごめんなさい。
「キングスライムを倒したのはアンタたちか?」
「冒険者になったばかりなのにスゲーじゃねえか!」
「か、かわいいブヒ~~~!」
いつの間にかスライムに飲み込まれていた冒険者たちが、わたしとローゼを囲んでいた。
みんなが祝福の声をかけてくれる。
なんか……冒険者っぽい!
「よし! ギルドに帰ってもういちど宴よ~~~~~!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
こうしてプリストルの町を襲った危機は去り、冒険者ギルドでは賑やかな宴が始まるのだった。




