アリアちゃんと魔の迷宮(裏路地)
門の向こうは、屋台が左右に立ち並ぶ市場だった。
屋台の台の上には、果物や野菜、肉などの食料や服や装飾品といった商品がズラリと並んでいる。
元いた世界にはない、初めて見るモノがいっぱいあった。
さすがは、異世界!
冒険に関係ないところでも、わたしを楽しませてくれるわ!
とりあえず、きれいなペンダントを売っているお姉さんに話しかけてみた。
「このペンダントはなんなのかしら?」
「このペンダントは特殊な鉱石で作られていて、持ち主の魔力を高めてくれるの~。 魔法使いの女性たちの中で流行っているのよ~」
営業スマイルの上手なお姉さんは親切に答えてくれた。
「ふぅん、魔法を使えるわたしにはピッタリなペンダントね」
「お嬢ちゃん、魔法使いなの? じゃあ、1つ買って――――」
「あっ! あっちにも面白そうなのが~~~~」
「え、ちょ!? 買っていってよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
営業スマイルが歪み、悲痛な叫びが木霊す。
異世界はとっても楽しいわ~~~~~。
ウフフフフフ~~~~~。
アハハハハハ~~~~~。
わたしは、存分に市場を楽しんだ――――そして―――――
迷った。
あらかた市場を探索し終わったあと、新たな市場を探し求めて裏路地に迷い込んだのが失敗だった。
薄暗い腐臭ただよう裏路地で、わたしは猛烈に後悔していた。
なぜあの時、本当の目的を忘れて、「この薄暗い道の向こうにはきっと夢のような市場が待っているわ!」なんて言って魔の迷宮に入り込んでしまったのかしら……。
だ、誰かにギルドへの道を聞かないと……。
でも、誰もいない……うぅ。
さらに―――
それに加えて……尿意が……
「うぅ……なんでこんな時にオシッコしたくなるのよぉぉ」
くっ……、アレを使わないといけないの?
いちおう、魔王に渡さず持っておいた『簡易トイレ(女性用)』。
誰もいない裏路地とはいえ、町の中で……。
「イヤだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ん? 人がいる!」
道の向こうの隅っこで、同年代くらいの少年がたむろっていた。
何をしているのかは分からないが、少年1人を4人の少年が取り囲んでいる。
良かったァァァァァ!
少年たちがいた、5人も!
なんか1人だけ地面に這いつくばってるけど、まぁいいわ!
これで、ギルド(&トイレ)に行くことができる!
「ねぇ、そこの少年たち! ちょっとギルドへの道を教えてくれない?」
少年たちはこちらに振り返り、その中で一番偉そうなやつが答えた。
「なんだお前、ここはガキが来るような場所じゃねぇんだよ! すっこんで―――バブミッ!」
バチ―――――――ンッ!
少年は吹っ飛んだ。
おっと、ついついムカついてビンタを食らわしてしまったわ。
いくらオシッコがヤバいからってすぐカッとなるのはいけないわね。
ぶっ飛ばされた少年は、壁にぶつかり気絶していた。
あれじゃギルドの場所を聞けないわね。
まぁ、まだ4人いるから大丈夫!
「て、テメー何しやがんだ! 死にさらせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――ウッホイ!」
ドスッ――――
少年(二人目)にきれいな腹パンが決まる。
あ……またやってしまった。
しょ、しょうがなかったのよ!
だっていきなり殴りかかってくるんだもの!
まぁ、まだ3人いるわ。
大丈夫よ!
「よ、よくも仲間たちを! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ―――テイッップ!」
少年(三人目)に鋭いチョップが炸裂する。
「チクショォぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ―――ハヒュンッ!」
少年(四人目)のキンタ〇が鈍い音を出す。
5人いたはずの少年は、一瞬にして1人になってしまった。
最後に残っていたのは、地面に這いつくばっていた少年だ。
少年は、ポカンとしている。
とりあえず、立ち向かってくるそぶりはない。
「……ねぇ、冒険者ギルドってどういけばいいのかしら?」
「……え? あっ、この道をまっすぐ行けば大通りに出ます。 その大通りを右に曲がれば着きますよ……」
「ありがとう……よく見たらあなた怪我しているじゃない。 道を教えてくれたお礼に直してあげるわ」
少年の肌には、ところどころ掠り傷があり、左目は赤く腫れあがっていた。
わたしは、回復魔法<ヒール>を使い少年の怪我を治した。
たぶん、そこで寝ている少年4人に殴られたり蹴られたりしたのだろう。
「これで大丈夫よ。 わたし急いでいるから(オシッコ)、もう行くね」
わたしはギルドのトイレを目指して歩き出した。
待っててね! トイレ!
「ま、待ってください!」
少年に呼び止められた。
な、なによ!
わたしは急いでるの! ヤバいの!
「なにかしら? くだらない話ならまた今度にしてちょうだい」
「その、助けてくれてありがとうございます!」
「気にしなくていいわ、道を教えてくれたお礼よ。 それじゃ、私は――――」
「も、もしかして冒険者になるんですか?」
いや、もうホントにやばいから
もう行かせてよ
「そうよ、それじ―――」
「そ、それだったら僕とパーティーを組んでくれませんか!?」




