アリアちゃん、町『プリストル』に到着す
ストックが無くなりましたとさ
「やった! プリストルが見えてきた!」
異世界に来て、3日目の昼。
遠くの方に、かすかに町の外壁が見える。
長かったわ。
ここまで来るのに、どれだけのザコモンスターを倒したことか。
ランクが高いほどレベルが上がるのが遅いと、スキル<観察王>が言っていたが、今ではもう13レベルだ。
9から13レベル……。
9レベルの時点で、余裕で魔王を倒せるほど強いのに……。
できれば、もうレベルなんて上がってほしくない。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか外壁の前に着いていた。
灰色のレンガを精密に積み上げた強固な壁。
モンスターや、魔王軍が攻めてきても簡単には篭絡しないわね。
まぁ、魔王に渡した魔道具があれば、一瞬で町ごと消滅しちゃうけど……。
魔王への出撃命令も、ちゃんと考えてしなくちゃね。
まぁ、それは置いといて早く冒険者ギルドに行って登録しなくちゃ。
わたしは、外壁の門を通り抜け――――
「ちょっと、お嬢ちゃん! 入市税を払わないと町には入っちゃいけないよ」
突然、門に寄りかかってあくびをしていたオッサンに話しかけられた。
なんなのコイツ?
入市税?
「入市税ってなに?」
「入市税ってのは、まぁ簡単に言うと町に入るために必要な金さ」
オッサンは、わたしを通さないように、前に回り込みながら説明をした。
「金? そんなの持ってないわよ」
「それじゃあ、ここを通すことは出来ないよ」
そ、そんな!
それじゃ、冒険者ギルドに行けないじゃない!
冒険者になれないじゃない!
ど、どうしよう?
「か、金を払わずに町に入る方法はないの? わたし、ほんとに何も持っていないのだけれど……」
「ん~~~。 ……そうだな」
急に、オッサンはわたしを舐めまわすような視線を向けてきた。
品定めするような視線。
なにやら、ニタニタ気持ち悪い笑みを浮かべている。
「ちょっと、あっちの部屋でオジサンと遊んでくれたらタダで通してあげるよ」
外壁についている簡素な木の扉(門番の休憩室)を指さし、もう片方の手でわたしの肩に触れるオッサン。
ものすごく気持ち悪いが、遊ぶだけでいいなら。
というか、なにして遊ぶんだろう?
「まぁ、遊ぶだけなら……」
「ほ、ホントかい? じゃあ――――」
「なにやってんだお前はぁ」
突然、門に寄りかかって寝ていた別のオッサンが、あきれたような声を発した。
いつの間に起きていたんだろう?
ちょっとだけひげを伸ばした黒髪オールバックの渋いオッサンだ。
「い、いやちょっと魔が差したっていうか……」
焦る目の前のオッサン。
魔が差した? どういうことだろう?
「あんまりバカなことばっかしてると領主様にチクるぞ。 おい、そこのお嬢ちゃん、行っていいぜ」
渋いオッサンは親指を町に向けた。
「お金、持ってないんだけど……」
「気にすんな、そこのバカが代わりに払う」
「そ、そりゃねぇよ。 酒場にツケだってあるのに」
「全部、お前がわりぃ」
「チッ、行きな」
「な、なんか悪いわね」
よくわかんないけど、通っていいらしい。
ありがとう、オッサンたち。
冒険者になってお金が入ったら必ず返しに来るわ!
わたしは、礼を言って後を去ろうとした。
「そういや、丸腰のくせにどうやってこの町まで来たんだ? 一番近くの町でも歩いて5日はかかるぞ モンスターだって出現するし、とても女の子1人じゃたどり着けない」
門を通り抜けたわたしに、後ろから渋いオッサンがもっともな疑問を投げかけてくる。
魔王の娘である私ならともかく、人間の女の子が1人で町の外をうろつくのは自殺行為でしょうね。
「わたしは、冒険者になるためにこの町に来たの。 モンスターだって自分1人で倒せるし、食料だって自分1人で探せるわ」
「へぇ~~、お嬢ちゃんがねぇ」
疑念の視線を向けられる。
まぁ、見た目はただの少女だから疑われるのは当たり前ね。
フッ、まぁいいわ。
魔王を倒し、この世界を救うのはこのわたし、冒険者アリアなんだから!
あ、もう倒してた……。
「この道をまっすぐ行けば、冒険者ギルドにつく。 達者でな~」
タダで町に入れてくれただけでなく、ギルドへの道も教えてくれる気のいいオッサン。
ナイスな情報ありがとう!
あなたのことは忘れないわ!
わたしは、手を振って門を後にした。




