第5話 幻想のダンジョン①
スキルの性能テストも終わり、村に戻ってきた。
特に何もないようで良かった。
そう思いながら、俺はじっさんの家へと足を運ぶ。
「只今戻りました〜」
村に戻ったら、最初にじっさんに挨拶をする。
「おや、ようやく帰ってきたか。一体どこにいってたんだい。」
「え……?海岸ですけど……」
「そうか、それならいいが……3日間も何をしてたんだ?」
は、3日……?どういうことだ?
じっさんは嘘をつくような人じゃないから、本当なんだろうが……俺は3日も海岸にいたのか?
もしや、【幻想世界】で創った空間内では、現実との時の流れが違うとかそう言う話か……
本当にそうなら、使うのは控えておこう。それに、結局わけわからん精霊と出会っただけだからな。スキルの詳細も知らない。
「えっと……3日間ちょっと色々としてて……」
「そうか……それで、横にいる人は誰なんだい?」
「この人は……僕の知り合いです。名前は……」
しまった、コイツの名前を知らない。
空間内から出ることを優先してたせいで忘れていた。どう答えれば……
「私はフレイア。フレイア・エルスター・ミリオンよ。」
胸に手を当てながら、礼儀正しく挨拶をするキョンシー精霊。
自分から名乗ってくれて助かった。
フレイア・エルスター・ミリオンか。俺もそう言う感じの名前にすればいいのか?少し考えておくとしよう。
「フレイア君か。宜しく。」
「宜しくお願いします。」
そう言うと、フレイアはじっさんの家から離れ、俺に向かって手招きしてきた。
俺はじっさんに、少し待っててとでも言ってフレイアのところへ行った。
⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎
「で、要件は何?」
「あのお爺さんの前と私の前じゃ別人かってほどに違うわね……まぁ今はいいわ。私は一体何をしてどこにいればいいの?」
「なんだ、そんなことか。フレイアは、政治拠点に居ればいいさ。人一人住めるくらいの大きさはある。そこで何かしてればいいさ。俺はフレイアが何をできるか知らないから、適当に政治の手伝いでもしてくれればいいさ。」
フレイアの疑問に対し、俺は適当に答えた。
別にフレイアが何をできるのか知らないし、一旦は政治拠点にいてもらうことにする。
そこで政治の手伝いでもしてもらおうかなっていう算段だ。
「待って、政治拠点?君、この村で何をしようとしてるの?」
「何をしようかって?そりゃあ……世界全体を支配しようとしてるに決まってる。」
なに変なことを聞いてきているんだ。当然世界全体を支配する以外にないだろう。何を言っているんだこの精霊は。
「決まってるわけないでしょ!!世界全体を支配したいの!?今はそのために国作ってるとかそう言う話?」
「まぁ、そうだね。」
「そんな出鱈目な……本当にやろうとしてるなら、私も手伝うけど……一応私精霊だから。」
ほう、コイツやっぱ精霊だったのか。
にしても手伝ってくれるのか。なら、思いっきり扱き使ってやろうじゃないの。
「ねぇ君、少しニヤけてない?変なこと考えてないよね。」
「そんなわけないだろう。決して俺がフレイアを扱き使ってやろうなんて考えはしてないさ。」
「君ねぇ……はぁ……いいや。それで、君の名前はなんて言うんだい?」
フレイアは諦め呆れて、俺の名前を聞いてきた。
俺に名前はないさ。そう答えたかったところだが……今速攻で名前を考えるのもありだと思った。
フレイアの名前で、なんとなく法則性はわかった。
三語で構成されていて、全部がカタカナ。苗字名前やらは何も知らないけど、ある程度は偽装できるだろう。
肝心な名前だが……
「……俺の名前は、ギルフォード・セイン・ルミナス。ルミナスとでも呼んでくれ。どうせ偽名だからな。」
「ふーん……ルミナス、ね。偽名なのはまぁ転生者ってことだし仕方ない。それじゃ、これからよろしくね。ルミナス君。」
そうしてフレイアが正式に俺の仲間になったのだった。
⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎
さてと、今日は何をしようかね。
学校は現在進行形で作っていることだし、他に必要なのは病院くらいか?ただ、設備を整えるとすると相当な資金が必要だから今はできない。もっと発展した後の話だな。
今は……そうだな。俺が望む支配は武力では無いとはいえ……いずれは武力での対抗が必要になる時があるだろうな。その時のために、少し武器を作っておくのもありかもしれない。
ちょっと、じっさんに相談してみるか。
「ふむ、武器を作りたい……と。しかし、生憎この村には鍛治師がいなくてな……」
そうなのか。まぁ、鍛冶屋的なものを見たことなかったから、元から期待はなかった。
で、武器を作れないとなると……やることはアレだな。
「じゃ、スキルの詳細とかがわかる人とかいる?」
そう、スキルの確認である。
未だ全く何も知らないため、確認できる人がいるなら確認してもらいたいのだが……
「スキルの詳細か?それなら、鑑定士がいるから、その人に頼めば良い。俺から話はつけておくから、少しだけ待っててくれ。」
賭けに勝った。別に何も賭けてないけど。
これでスキルの詳細がわかる。それが良さげなスキルならよし、命の危険があるなら使うのを控える。それだけだ。
詳細を知れるなら、その分対策とか利用方法とかが見つかる。最高だね。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
よし、ここか。じっさんが言ってた鑑定士の人の家。
外装は別に他の家と変わりない。
なんかどこぞの占い師みたいに謎に怖いヤツじゃなくてよかった。
とりあえず、家のドアをノックしてから入る。
「君がスキルを鑑定してほしい人かい?」
「はい、お願いしたいです。」
「どれどれ、そこに座るが良いさ。」
白の装束に身を包まれた優しそうな男に案内されて、俺は部屋にある椅子に座った。
そして、その男は俺の向かい側に座ってから、俺に対して質問してきた。
「最初に、君に質問したいことがある。君のステータス画面に書いてあるスキルは何級って書いてあるんだい?」
何級か?あぁ、英傑級スキルって書いてあったやつか。
これは、多分そのまま伝えればいいんだよな。
「えっと、英傑級スキルって書いてありました。」
そう言った瞬間、向かいの男が少し驚いたような表情をした。しかし、それもほんの一瞬だった。男はすぐに平常心を取り戻し、二つ目の質問をした。
「英傑級スキルか。凄いじゃないか。それで、そのスキルの名前はわかるかい?」
「名前は確か……【幻想世界】っていうのと、【強欲】っていうのです。」
これまた言った瞬間少しだけ相手が驚きの表情をした。その後に、『質問はこれで終わりだ。』といって、俺のスキルの鑑定をしてくれた。
そして、スキルの鑑定結果はこのようなものだった。
英傑級スキル【幻想世界】
幻想世界に自由に潜り込めて、武器とか装備とかアイテムとかを戦ってゲットできるダンジョン。
基本、存在する武具は強く、レベルアップによるステータスの伸び率も高い。
英傑級スキル【強欲】
願えば、相手の扱っている物を強制的に取得する。
相手の放った魔法は、自身の魔力として取得する。
と言うものだった。
正直、自分でも驚いた。
あまりにも【幻想世界】が強すぎる。
ダンジョンで自由に武具を収集できるとのこと。しかも、武具は強くてレベルアップによるステータスの伸びも良いとのこと。かなり素晴らしいスキルであった。最終的に武力での戦闘となった場合は、ここで集めた武具を使用して戦うのが良いだろう。
ちなみに【強欲】はよくわからない。
簡単に言うと、ただの窃盗スキルである。正直今は要らない。なんともいえない性能をしていやがる。
とにかく、性能がわかったためこれから暇な時は【幻想世界】にて武具収集をしたりで自分を強化したり、その武具を商人に売ったりして金を稼ごう。こりゃいいもんが手に入った。
せっかくだ、今日は特にやることがないからまた【幻想世界】に潜っていこう。時間の感覚が現実と違うっぽいから、先にじっさんにそのことを伝えておかないと。
そう決めたら、即行動だ。
俺は鑑定士の男に感謝をしてから、じっさんの家に行った。
そこで、じっさんに数日間またいなくなるということだけ伝えて、フレイアのところへ向かう。
フレイアのところに行ったら、強制的に海岸へ連行。
こうして俺は、予定通りに進み海岸へと行ったのだった。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
これで準備は整った。
フレイアにはすでにスキルの詳細は伝えてある。
武具はないが、魔物とかはフレイアが倒してくれるっぽい。まぁ、武具を分けると言う前提条件込みだけど。
とりあえず、俺はフレイアに準備ができたか確認をとり、心の中で唱えた。
"【幻想世界】"
そう唱えると、前と同じく下から黒い影が出てきて、俺とフレイアはその影に包まれて消えた。
⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎ ⚪︎⚪︎⚪︎
目を開けると、そこに広がっていたのは、前と同じくレンガでできているダンジョンだった。
今度はちゃんと見えるから迷う心配はない。
解除方法も前と同じだろうから問題ない。
準備は完璧。戦闘は全てフレイア任せ。
ということで、俺とフレイアは奥へと進んだ。
奥へと進み、見えてきたのは重厚な金属製の扉。
恐らく、ここから奥に進むとダンジョンがあるのだろう。
そう思うと、少しワクワクしてきた。
初めて魔物を見る。当然、異世界ってだけで厨二病は興奮を抑えられないだろう。
俺はフレイアに合図し、重厚な扉をゆっくりと、大きな音を立てて開けた。
その奥に広がっていた景色は、変わらずのレンガ。
しかし、横幅が大きくなり動きやすくなっている。
そして、その部屋の真ん中に鎮座している筋骨隆々の緑色の魔物。木の棍棒を持っている。
ゲームでよく見る"魔亜人族"と言ったところだろうか。恐らくは、魔亜人族の中でも、上位に位置する個体だろう。ボス個体的な。
俺はフレイアに、アイツ殺れる?と、アイコンタクトでなんとか会話を図ろうとする。
フレイアは意図に気付いたらしく、首を縦に振って"殺れる"と言ってくれた。恐らく。
アイコンタクトで攻撃タイミングはいつでも良いと伝えておいた。伝わってればいいけど。
とその時、フレイアが急に手に火の玉を召喚した。
恐らくタイミングはいつでもいいとのことが伝わっていたのだろう。よかった。
フレイアはゆっくりと開けた扉の向こうにいる魔亜人族に近付いていった。
そして、十分に近づいた時、魔亜人族がこちら側に気付いたらしく、急に棍棒を持って立った。
そのことを確認したフレイアは手に持っている火の玉の大きさを増幅させてから魔亜人族に思い切り飛ばした。
大きな火の玉に当たった魔亜人族は、もがき苦しみながらもこちらに突っ込んできた。
フレイアに焦って平気なのか聞いたら、そのまま見てろと言われた。
指示通りそのまま見ていたら、魔亜人族が急に減速していき、徐々に動きを止めていった。
そして、完全に動きを止めた時、燃焼により体全体が燃えて魔亜人族が消滅したのだった。
フレイアは、ドヤ顔で俺のことを見る。
キョンシーに似合わない表情である。キョンシーの姿なのだから、もう少しキョンシーに合わせて欲しい。
と、そんなことを思っていたら部屋の中心部に、上から宝箱が降ってきた。
恐らくこれが武具の入っているモノだろう。
俺は興味津々で宝箱に近付いた。
「これが宝箱か……」
「約束、忘れてないよね?私にも武具分けて欲しいわ。」
「平気、忘れてないさ。」
そう言うやりとりをした後に、宝箱をゆっくりと開けた。開けた宝箱は、内部が黄色く輝いた。
輝きが落ち着いた頃、宝箱の中に見えたのは強そうな槍と盾だった。
槍の方は、なんか凄く刺々しい槍である。蒼をベースに、ところどころ先端が白く輝いている。先端は三俣になっていて、上から下から白いラインが入っている。他にも、先端より少し下の所が横に広がり尖っていたり、槍全体が尖っていたりで殺傷能力が高そうな槍である。
盾は、腕に装着してガードするタイプなのか、若干小さい盾である。しかし、槍と同じ蒼と白の色合いをしている。恐らくこの二つをセットで使えとのことだろう。
早速俺は、二つを装備した。
ステータス画面を開くと、右腕の欄には先程の槍、左腕欄に盾があった。
右側にあるステータス欄を見ると、攻撃力が+90されていて、防御力と魔法防御力が、両方+120されていた。攻撃力の方は、初期値である120と合わせて210に、防御力の方は初期値である70と合わせて190になっている。かなり面白いシステムだ。これはかなりやりがいのあるダンジョンである。こう言うのが好きなため、恐らく飽きることはないと思う。
とりあえず、次のダンジョンからはフレイアの力は借りずに、一人で相手を倒してみようと思う。恐らくはまだ序盤なので、魔物も弱いだろう。それなら、良い練習相手になるよな。




