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異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~  作者: こじまき


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93 サチの選択

「友達をつくるって言って人間になったエレシュは、友達をつくるまで人生を繰り返すことになったんだ。自分で自分に呪いをかけた感じ、って言えばいいかな」


だからエレシュさんは、何度も何度も別人として生まれ変わった。


いつも強い闇の力とともに。


何度生まれ変わっても、その力の大きさゆえに捨てられ、恐れられ、排除され、囚われ、孤独に死んでいく妹。


「助けたかった。だけど僕とエレシュは人間に”意思”を与えてしまったから、人間の心を変えて無理やりエレシュと友達になってもらうことはできない」


創造神さんが人間になって助けに行くこともできない。だってもし失敗したら、エレシュさんを助けられる人がいなくなるから。


「だから僕の代わりにエレシュを助けてくれる存在が必要だったんだ」

「それで、異世界から人を呼んできたんですか?」

「そう。エレシュが生まれ変わるたびにね」


創造神さんと話せて、創造神さんの力を付与できて、エレシュさんをループから救ってくれるはずの異世界人。


「いろいろ試してみた。僕の目的を伝えたり伝えなかったり、希望を叶えてあげたり無視したり。男性、女性、魔法使い、貴族、貧乏人、金持ち、子ども、老人。あえてエレシュから遠いところに転生させたり、善人だけじゃなくて悪人も転生させたり。だけどことごとく失敗した」

「そうだったんだ…」

「諦めかけたときに、サチさんが来てくれた。誰よりも子ども思いで、ド田舎の山小屋に転生させても受け入れちゃうような君が」

「褒めてる?」

「褒めてるよ。だって君のおかげでエレシュは…クリスタは愛されて友達もできた。あの子は望んでいた幸せを手に入れて、ようやくループを終えられる」


そういうことだったのか。


「説明終わり!利用してごめんね。今まで本当にありがとう」


なに、別れの挨拶みたいな…


「ま、待って!」


私は今も異世界人だから、創造神さんと話ができる。でもこの世界の人間になってしまったら…


「もう私には創造神さんの姿が見えなくなって、話もできなくなるの?」

「そうなるね。大丈夫、チートは残してあげるから」

「そういう問題じゃないって!ねえ、創造神さんは寂しくないの?」


クリスタちゃんが人生を終えても、エレシュさんはもう天界には帰ってこない。彼は天界で一人ぼっち。私にも彼が見えなくなったら、話し相手すらいなくなる。


「僕のことを心配してくれるの?」

「当然でしょ。だって今、寂しそうな顔してるじゃん」


彼は自分の顔をそっと触って、無理やり「あは」と笑顔を浮かべた。


「僕のために、欲しかった子どもを諦めるつもり?」

「…自分の幸せが誰かの寂しさの上に成り立ってるって知ってて、本当に喜べるか自信がないよ」

「それはお人よしが過ぎるって」


そう言われればそうなのかもしれない。私は自己犠牲に酔ってるのかも。だけどまだいない子どもと、今目の前にいる創造神さんを比べたら、確実に天秤は傾いてる。


創造神さんはふっとドアを見た。


「マリウスが来るから、僕はひとまず退散するよ。彼に相談するもしないも自由だけど、ちゃんと気持ちが固まったら教えて」


創造神さんが消えると同時に、「サティさん、入ります」と声がした。いいタイミングなのか悪いタイミングなのか、本当にマリウスさんだ。


私がちょちょっと髪を整えてる間に、彼は飛んできて私を抱きしめた。


「目が覚めたんですね、良かった…!顔色も良さそうだ。医者を呼びます」

「待ってください、その前にお話が」


マリウスさんの目が、心配そうに瞬いた。


「懐妊…」

「違います」


そこは食い気味に否定させていただく。


「私たち、キスしかしてないじゃないですか。でも実は、そのことに関連してお話があって」


でも、何からどうやって切り出そう。


結婚間近の婚約者から「実は私、異世界人なんです。なので子どもはできません」って言われて、彼はどう反応するだろう。


怖い。


マリウスさんに「子どもを産めない女なんて用なし」なんて目で見られたら、きっと一生立ち直れない。


だったら創造神さんの気持ちに甘えて、この世界の人間になればいい?


でも自分の幸せのために、創造神さんを一人にするなんて。


私はぎゅっと両の手を握った。


「あの、突然なんですが、マリウスさんは自分の子どもが欲しいですか?」


彼は不意を突かれてきょとんとする。


「それはまあ…ええ」


そりゃそうか。そうだよな。跡継ぎ必須な名門貴族の当主だもん。


「サティさんは、違うのですか?」

「そういうわけじゃないんですけど…」

「テオくんなら、実子が生まれても立場が悪くならないよう配慮するつもりです」


マリウスさんならきっとそうしてくれるだろう。でも気になるのはそれだけじゃない。


「何からお話ししていいのやらで、長くなるんですけど…」


マリウスさんが、硬く握られた私の手に、そっと手を乗せてくれる。


「いくらでも聞きます」

「その…」


私は息を吸って、吐く。


「最初にお伝えすると、私の名前はサティじゃなくてサチなんです。木村サチって言います」


私は自分が異世界から創造神さんに呼ばれて来たこと、それはエレシュさんの生まれ変わりであるクリスタちゃんのためだったこと、そして今のままでは妊娠できないことを告げた。


「創造神さんに頼めば、この世界の人間になれて子どもも産めるそうです。でもそうすると…」

「神を孤独にしてしまう、と?」

「そうなんです。どうしてもそれがひっかかって」


「今まで本当にありがとう」って私に手を向けたとき、泣きそうな顔をしてた創造神さん。何だか子どもみたいだった。


「だから私は、異世界人のままでいたいと思うんです。あの子を一人にはできないから」


私はマリウスさんの手の下から、そっと自分の手を抜いた。


「貴族にとって血筋を残すことがすごく大切だっていうのは理解してます。だからその…私との婚約は、破談にしていただいて構いません」

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