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異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~  作者: こじまき


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89 分身の術

「サティあなた、もうすぐ結婚なのよ?そんなに忙しく過ごしてどうするの」


ベルント伯爵邸で図面に目を通しながらドレスの仮縫いをしてもらっている私の横で、ベルント伯爵夫人がため息をつく。


「善は急げなので」


アロイスさんが女性の社会進出を後押ししているおかげで、女性たちは家の外に職を得て働くようになっている。同時に「親が二人とも働いている間、子どもはどうしたらいいのか」という問題が起こっていた。エルドルフの冬みたいに。


貴族だったら親がいなくたって使用人さんがいるからどうにかなる。でも平民、しかもおじいちゃんおばあちゃんが近くにいない王都の核家族平民家庭では、どうにもならない。


「そういう人のために保育園があるって話です」


負担を少しでも減らしたい。大変なことは多いけど、苦労を分かち合って、ひとりじゃないって思ってほしい。


恵まれた環境に置いてもらってる私が言うのもなんだけど、恵まれてるからこそできることもあると思うから。


だから私はベルント・タウンハウスの一角を借りて、保育園をつくる。まずはタウンハウスで働く使用人さんたちのための事業所内保育所として。


「結婚や出産を機に離職する使用人が減るなら」と、ベルント伯爵夫妻は予算を出してくれた。スタッフとしては、ベルント・タウンハウスの中から保育園経験者のアンナちゃんをスカウトしている。


「この棚はもう少し低くして、角は削って丸く…」

「んもう!図面ばっかり見ていないで、少しはドレスも見なさいな」

「だってドレスについて私が何か言っても、結局お母様が全部あとから変えてしまうじゃないですか。あ、そろそろレオくんの授業が終わるので、戻らないと」

「忙しい花嫁だこと。マリウスは何も言わないの?」


伯爵夫人はため息をつくけど、私は「これが私たちですから」と笑う。


マリウスさんは結婚後も養育係を続けることに同意しているし、事業所内保育所を始めることについても「無理はしないように」と心配しながらも応援してくれた。幸せだし、充実してる。


「でも養育係と保育士は、どう考えても両立できないな。ダブルワークしようにも時間がかぶるから…かといってアンナちゃんだけに任せるのも…それにもう秋だから王城では運動会もやりたいしそっちの準備も…」


王城に戻る馬車の中でぶつぶつ言っていると、馬車の中に神々しい光が満ちた。向かいの座席に、出ました美少年。


「婚約おめでとう」

「ありがと。っていうかさ、創造神さんは知ってたんだよね?マリウスさんがアイゼンハルト伯爵だってこと」

「神だからね」

「何で教えてくれなかったの?」

「教えようが教えまいが、マリウスのスペックがアロイスやテオに及ばないのは明らかだったから、どっちでもいいかと思って」

「まったく…」

「婚約祝いでひとつお願い聞いてあげるから怒らないで。今困ってるんでしょ?具体的には何がしたい?」

「忙しくて自分が足りないから、分身かな?できる?」

「僕は神だよ?お安い御用」


さすが創造神さん。


かくして私は忍者系戦闘マンガよろしく分身できるようになり、王城では「事業所内保育所はアンナちゃんに任せている」、事業所内保育所の工事現場では「養育係の仕事の合間に来ている」と二枚舌を使って、正真正銘のダブルワークを始めたのだった。


ーーー


「秋のビッグイベントといえば運動会です。異論は認めません」


王城で本体の私がそう不敵に笑うと、マグダレーナ先生が「また変なことを言い出した」という顔をする。


ちなみに「マグダレーナ先生が男性だと知ってるから、女装が希望に反してるならやめてもらっていい」と伝えたけど、女装は楽しいから続けるんだって。「女性用の服のほうが、いろんなバリエーションがあってときめく」らしい。


一方のイヴォンさんは「運動会とは何でしょうか」とわくわくした顔で聞いてくれる。


「みんなで綱引きしたり大玉転がししたりするんです!ビッグイベントに向けて頑張ることで、子どもたちがぐっと成長して、泣けます」


子どもが九人もいれば、ちょっとした運動会はできると思うんだ。半日くらいなら騎士団か魔法師団から運動場も借りられるはず。


「運動量と達成感があるチーム競技で…好きな競技にいくつか出てもらうパターンなら無理強いにもなりにくいか…」


ママ友さんたちからも「サティ様がおすすめになるならぜひ」という声をもらって、運動会の練習を開始。競技は「棒引き」「綱引き」「大玉転がし」「親子でかパン競争」「障害物競走リレー」だ。


ルールを説明して、お手本を見せる。動画とかないから、全部私とイヴォンさんによる実演で。そして騎士団から借りた運動場で実際にやってみる。


「上手にできないところは話し合って考えてみよう」


そんなこと私に言われなくても、うちの子たちは自然に話し合いができている。素晴らしい。


「棒引きでは、棒を狙う順番を決めたほうがいいんじゃない?」

「では足の速いクリスタ様が、まずあのエリアを一人で狙ってください」

「その間に私とお兄様が…」


「綱引きは姿勢を低くして、息を合わせて!」

「じゃあ誰かが掛け声をするのはどう?」

「アウレリア様の声がよく通って大きいですわ」

「ぼ、僕も掛け声したい…」

「じゃあリオネルにお願いしよう」


「ユリウス、大玉を押しながらこのカーブを回るときは減速すべきです。早すぎると玉を制御できません」

「確かに」

「それからペアとなるご令嬢とペースを合わせねば。一人で突っ走ってしまうと失格です」

「わかった、ちょっとゆっくりだな」


「アドリアン、リレーで転んでも諦めないで。立ち上がって走ろう」

「抜かされたとしても、次の人が逆転してくれるかもしれませんもの」

「それにもしかしたら相手も転ぶかもしれない。勝負は最後までわからないよ」


相談。協力。理解。成長。諦めない心。


練習ですでに泣きそうなんだが。


「そういえばサティ様」とシルヴァーナ公爵夫人に声をかけられて、私はハンカチを握りしめながら振り返る。


「なんでしょう?」

「当日は母親以外も観覧してよろしいでしょうか?」

「もちろんです!家族みんなでお子さんたちを応援しましょう!」

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