激戦 << フェアリー 19 >>
「誰か助けて!」
私は遂に悲鳴を上げてしまった。
前後から挟撃されることが、これほど被害が大きいなんて知らなかった。
小都市ポプラの北側に布陣する、シャルルと私の部隊は兵力6000名を預かる、今回の攻城戦の主力部隊だった。
その部隊が、壊滅しようとしている。
前方からは山賊ギルドの攻撃を受け、後方からは新世界ギルドのグロームの攻撃を受けている。
私はマイネとシャルルの部隊に姿隠しの魔法をかけたけど、シャルルの部隊だけにしておけば良かったかもしれない。
空軍の全てが居なくなり、そして都市内で被害が出ていたから、さすがに姿隠しの魔法がバレたのだと思う。
もしマイネの麒麟の姿が上空にあれば、まだ発覚はしなかったかも知れない。
そして、新世界ギルドには、姿現しの魔法を習得している人がいた。
シャルルのグリフォンに、迷わず攻撃しているから。
シャルルの話だと、敵の攻撃力がここまで高いとは思わなかったと言ってる。
グリフォンへの攻撃が普通に通るので、優位性はもはやグリフォンと人間の体力差しかない。
それで敵地で少数で戦うのは危険すぎるから、都市内からは撤退することになった。
私はその上で、北側と西側に布陣している部隊の全てに姿隠しの魔法をかけた。
これは新世界ギルドの部隊には効果はもはやない。
でも北から防衛支援に来ている山賊ギルドには効果があるはずだった。
姿隠しの効果はゼロではなかったはず。
でも、私たちの部隊の場所の座標を新世界ギルドが教えていたのだと思う。
彼らは的確に私たちの部隊へ攻撃を行った。
そして彼らの野生の特性が、私の姿隠しの魔法に対する対処スキルになっていたということを、後になって知った。
その時はただ、私の姿隠しの魔法が全く効果がないように感じた。
私の悲鳴を聞いたシャルルは、「撤退しよう」と私に言ってくれた。
でも順序としては、西側のマイネの部隊や、南側のボレオの部隊から撤退させないといけない。
私たちのいる北側は最大戦力だから、まだ持ちこたえられるけど、西側や南側はそうではない。
シャルルが早い段階で撤退を決めたことは、正解だった。
私たちの被害を最小限に抑えた。
前線から撤退の判断を決めて、セルバート王がそれを受け入れたのも、これも偶然だった。
セルバート王の部隊の混乱が、全く収まらなかったのよ。
ヘリオスに側面を突かれても、兵力差はあったから、しばらくしたら混乱は収まって、ヘリオスの部隊を踏み潰すものだと思っていた。
でもいつまでも混乱が収まらない。
確率的な偶然で混乱が続いたのだという人もいるけれども、ヘリオスにはもしかしたら特殊なスキルがあるのかもしれない。
セルバート王は部隊がどうにも操作できない状態になったので、私たちの退却も渋ることなく容認してくれた。
結局、その混乱は、ライゼンの部隊が身代わりスキルを使用して、ようやく沈静化した。
王はすぐに退却を始め、ヘリオスも引き際を間違わずに撤退した。
もう一箇所、セルバート王の前方に布陣していたシンシアの管轄部隊は、ビッグレイク軍と激戦になっていた。
彼女が落とし穴を利用して、マールの突撃部隊を食い止めた後が凄かった。
後続の部隊が落とし穴を南北に迂回して、シンシアの管轄部隊を挟撃した。
ここに、ヘリオスの部隊を撤退させたライゼンの管轄部隊が前進して、南側からシンシアの部隊を攻撃していたドノフとロボシンクの部隊と戦闘になった。
ライゼンの部隊はドノフとロボシンクの部隊に対して優勢だったけど、これをマイノスが遠隔魔法で支援しだして、戦況は互角になった。
一方、落とし穴にハマったマールの部隊は、両翼のミナコとローラの部隊に救出された。
北側に迂回してシンシアの部隊を攻撃していたベスレアとスターネイムの部隊には、マール救出後のミナコとローラが加勢した。
シンシアの管轄部隊は、ドノフとロボシンクからの攻撃はライゼンが引き受けたのでなくなったものの、ベスレア、スターネイム、ミナコ、ローラの4部隊からの攻撃で劣勢だった。
私たちは北側で退却をしていたので、グループチャットでシャルルに「シンシアを支援した方が良いか?」と聞いたら、セルバート王が「まだマイノスの部隊が後方で戦力温存している。今回は撤退しよう」と言った。
シャルルも、「その判断は正しいと思う」と言うので、私もその指示に従った。
セルバート王から、連合軍チャットとギルドチャットに、小都市ポプラ戦線からの撤退が告げられた。
誰も私を責めなかったけれども、その敗戦の原因の一端は、私にあった。




