マール VS シンシア << マール 56 >>
遥か前方、セルバート王の部隊で、何かが起こっている。
私はとても大きな勝機があることを感じながらも、それが何かを見極めようとした。
目を凝らす。
軍旗が見える。
王立騎士団のものとは違う軍旗が見える。
新世界ギルドの軍旗です。
誰かが奇襲をかけたのです。
セルバート王の部隊で混乱が起きている!
これはチャンス!
私はマリスの部隊を目掛けて、全軍突撃の命令を下しました。
私の左右に陣取るミナコとローラの部隊も、私たちの部隊に続いて前進を始めている。
軍団は徐々に加速する。
マリスは管轄部隊が私たちの挑発に乗らないよう統率するために、縦陣で私たちの前に陣を敷いている。
これに対して、私たちは横陣3列の陣で突っ込むことになる。
敵にも横陣3列あるならば、私たちと同等以上の力を発揮するが、実際は3列あっても、大将格の陣は最前列のマリスの陣のみ。
これを破壊すれば、あとは烏合の衆です。
私たちには、マイノスさんからの強力な魔法支援があります。
マイノスさんの魔法支援は本当に強力です。
まるで巨人になったかのように、敵を粉砕できます。
私は怒声を発して、敵陣に突っ込みました。
マリスの名を叫び、それがどこにいるのか探しました。
しばらくして、敵の戦意が失われるのを感じました。
潮の満ち引きのように、敵は退却を始めたことを理解しました。
ミナコやローラの部隊は戦い始めたばかりでしたが、敵が退却を始めたので、勢いがなくなる心配がありました。
私はその先を見据えました。
シンシアの管轄部隊が見えます。
更にその先には、混乱を起こしているセルバート王の部隊が見える。
ここが勝負どころです!
シンシアの部隊を突破し、混乱を引き起こしているセルバート王の部隊に突入出来れば、私たちの勝利は間違いない。
マイノスさんに勝利をプレゼント出来る!
私は絶叫を上げ、鬼の形相で、シンシアの軍を目がけて、突撃命令を発しました。
勝利の高揚感が私の部隊全体から発せられています。
コーベンの部隊を粉砕し、マリスの部隊を潰走させた私たちは、シンシアの部隊に何を恐れる必要があるのでしょうか?
古参の軍事大臣を一刀両断し、内政官が悲鳴を上げて逃げ出したあとに、戦場では見かけたことのない、軍務経験皆無の外務大臣の部隊に何が出来るというのでしょうか?
私は狂気に満ちた喜びを感じていました。
敵に訪れる未来が、死、これ以外にはありえないことを伝える喜びです。
私は狂気に取り憑かれたように、馬に走らせました。
その時です。
大地が消えました。
たぶん、私は落とし穴にハマりました。
落下する先に、私を殺すために並べられた杭がありました。
私は幸運でした。
そこに殺意があったからです。
私の魔力を帯びた剣は、その杭の先に剣先を合わせ、私の落下速度を下げました。
それでも私の身体への衝撃は相当なものでした。
フルプレートアーマーでなかったら、私の身体は幾つもの杭で貫通していたでしょう。
私の部隊は全滅でしょう。
私は敗北を悟りました。
ミナコやローラは?
私は両翼の二人が私が駆け出したときには、まだマリスの部隊を掃討していたことを思い出しました。
「マールさん!引き上げます!手綱に捕まって!シンシアの部隊は、ミナコさんが斉射して引き付けています。側近のヒポクラテスさんとアイスキュロスさんも無事です」
ローラの声が聞こえる。
私は身体を起こし、杭の間を縫って、ローラを探した。
揺れる手綱が見える。
それか、それに捕まればいいのか。
私は手綱を身体に巻き付けながら、「お願いします」と叫んだ。
もう身体から出せる力はそれが全てのように感じた。
私は気を失ったらしい。
私は後方に運ばれたのは、意識の片隅で理解していた。
そして、私は涙を流していた。
不甲斐ない。
マイノスさんの浮気相手の14歳の美少女に助けられるなんて。
自分の情けなさに、身体が悲鳴を上げるように泣いた。




